カーボンニュートラルな発電:バイオマスとは?
電力を見直したい
先生、バイオマス発電って最近よく聞きますけど、原子力発電とは何が違うんですか?
電力の研究家
良い質問ですね!どちらもエネルギーを生み出す発電方法ですが、その仕組みが大きく違います。原子力発電は、ウランなどの原子核が分裂する時に発生するエネルギーを使うのに対し、バイオマス発電は、木や廃材などの生物資源を燃やすことでエネルギーを得ます。
電力を見直したい
なるほど。燃やすってことは、火力発電と同じようなものですか?
電力の研究家
似ていますが、バイオマス発電は、燃やしても空気中の二酸化炭素が増えないとされている点が違います。木は成長過程で二酸化炭素を吸収するので、それを燃料として使ってもプラスマイナスゼロになるという考え方ですね。これを『カーボンニュートラル』と呼びます。
バイオマスとは。
「バイオマス」という言葉は、原子力発電ではなく、再生可能なエネルギー源について説明する際に使われます。バイオマスは、地球上のいたるところにある、生き物から生まれた資源のことで、石炭や石油のような化石燃料は含みません。バイオマスは、燃やすと二酸化炭素が出ますが、その二酸化炭素は、植物が成長するときに空気中から吸収したものなので、結果的には空気中の二酸化炭素を増やすことにはなりません。これを「カーボンニュートラル」と言い、地球温暖化対策として注目されています。最近は、使われなくなった木材や木くずを燃料にする「木質バイオマス発電」が広がり始めています。
バイオマスの定義
– バイオマスの定義バイオマスとは、化石燃料を除く、生物に由来する資源の総称です。地球上に豊富に存在し、太陽エネルギーを元に光合成によって成長するため、枯渇する心配のない再生可能な資源として注目されています。バイオマスは、具体的にはどのようなものが挙げられるのでしょうか。私たちの身近なものとしては、まず樹木などの植物が挙げられます。森林から得られる木材は、古くから建築材料や燃料として利用されてきました。また、木材を加工する過程で発生する廃木材や、建設現場から排出される木材などもバイオマスに含まれます。さらに、私たちの生活から排出される家畜の糞尿や食品廃棄物などもバイオマス資源です。これらの廃棄物は適切に処理することで、エネルギー源や肥料として有効活用することができます。バイオマスは、そのまま燃焼させて熱エネルギーを得る方法以外にも、様々な形で利用されています。例えば、バイオマスをガス化してバイオ燃料を製造したり、プラスチックの代わりにバイオプラスチックの原料として利用したりするなど、その用途は多岐にわたります。このように、バイオマスは持続可能な社会を実現するための重要な鍵となる資源と言えるでしょう。
分類 | 具体例 | 詳細 |
---|---|---|
植物由来 | 樹木 | 建築材料、燃料として利用 |
植物由来 | 廃木材 | 木材を加工する過程で発生、エネルギー源として利用 |
廃棄物由来 | 家畜の糞尿、食品廃棄物 | 適切に処理することで、エネルギー源や肥料として利用 |
バイオマスと二酸化炭素
バイオマスは、木くずや家畜の排せつ物など、生物に由来する資源のことを指します。これらのバイオマスは、燃料として燃やすことでエネルギーを取り出すことができます。燃焼の過程で二酸化炭素が発生しますが、バイオマスはもともと大気中の二酸化炭素を吸収して成長した植物などから作られるため、全体で見ると大気中の二酸化炭素量を増やすことはありません。
もう少し詳しく説明すると、植物は光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収し、酸素を放出します。この光合成によって、植物の体内には炭素が固定されます。バイオマスを燃焼させると、固定されていた炭素が二酸化炭素として大気中に放出されますが、これはもともと植物が吸収した二酸化炭素であるため、プラスマイナスゼロ、つまり大気中の二酸化炭素量を増減させないというわけです。このような性質を「カーボンニュートラル」と呼びます。
一方で、石油や石炭などの化石燃料は、大昔の生物が地中に埋もれて長い年月をかけて変化したものです。これらの化石燃料を燃焼させると、大気中に新たな二酸化炭素が放出されることになり、地球温暖化の原因となります。
このように、バイオマスは化石燃料と比べて地球環境に優しいエネルギー源であると言えます。そのため、バイオマスは地球温暖化対策として有効な手段として近年注目を集めています。
項目 | バイオマス | 化石燃料 |
---|---|---|
由来 | 木くず、家畜の排せつ物など生物由来 | 大昔の生物の化石 |
燃焼時のCO2排出 | 排出されるが、植物が吸収したCO2を放出するため、大気中のCO2増加にはつながらない(カーボンニュートラル) | 大気中に新たなCO2を放出し、地球温暖化の原因となる |
地球環境への影響 | 環境に優しい | 温暖化を促進する |
バイオマス発電の種類
– バイオマス発電の種類バイオマス発電は、私たちの身近にある、動物や植物などから生まれた再生可能な有機資源であるバイオマスを利用した発電方法です。その方法は大きく分けて三つあります。一つ目は、バイオマスを直接燃やし、その熱で水を沸騰させて蒸気を発生させ、その蒸気の力でタービンを回して発電する「直接燃焼発電」です。この方法は、仕組みが比較的単純で導入しやすいという利点があります。木材などを燃料とする、昔ながらの火力発電所と仕組みは似ています。二つ目は、バイオマスを高温で酸素が少ない状態で燃焼させ、可燃性のガスを発生させて、そのガスを燃焼させてタービンを回し発電する「ガス化発電」です。ガス化して不純物を取り除くことで、よりクリーンなエネルギーとして利用できます。三つ目は、既存の石炭火力発電所などで、石炭などの化石燃料にバイオマスを混ぜて燃焼させる「混焼発電」です。新たな設備を建設する必要がなく、比較的低コストで二酸化炭素排出量を削減できます。このように、バイオマス発電には複数の種類があり、それぞれに特徴があります。どの方法が適しているかは、資源の特性や発電所の規模、地域的な条件などを考慮して判断する必要があります。
発電方法 | 説明 | メリット |
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直接燃焼発電 | バイオマスを直接燃やし、熱で水を沸騰させて蒸気を発生させ、タービンを回して発電する。 | 仕組みが単純で導入しやすい。 |
ガス化発電 | バイオマスを高温で酸素が少ない状態で燃焼させ、可燃性ガスを発生させて、ガスを燃焼させてタービンを回し発電する。 | 不純物を取り除くことで、よりクリーンなエネルギーとして利用できる。 |
混焼発電 | 既存の石炭火力発電所などで、石炭などの化石燃料にバイオマスを混ぜて燃焼させる。 | 新たな設備が不要で、低コストで二酸化炭素排出量を削減できる。 |
木質バイオマス発電の広がり
近年、環境への負荷が少なく、再生可能なエネルギー源として注目を集めているのが「木質バイオマス発電」です。これは、森林を健全に保つために定期的に行われる間伐で発生する木材や、製材工場から出る廃材、建設現場から出る木くずなどを燃料として利用する発電方法です。
木質バイオマスは、太陽光や風力と異なり、天候に左右されずに安定的に発電できる点も大きな魅力です。また、木質バイオマスは、光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収して成長するため、燃焼時に発生する二酸化炭素は、成長過程で吸収した量と相殺されて、全体としては二酸化炭素の排出量を増加させないと考えられています。つまり、地球温暖化対策にも貢献できるエネルギー源と言えるでしょう。
さらに、木質バイオマス発電は、地域の木材資源を活用することで、地域の林業や木材産業の活性化、雇用創出にも貢献できます。具体的には、間伐材の活用は森林の適切な管理につながり、健全な森林の育成、国土の保全、水源のかん養にも役立ちます。また、地元で生産された木材を燃料として利用することで、輸送に伴うエネルギー消費やコストを削減できる点もメリットです。
このように、木質バイオマス発電は、環境保全、地域経済の活性化、エネルギーの地産地消など、多くの利点を持つ発電方法として、その普及が期待されています。
項目 | 内容 |
---|---|
特徴 | 森林の間伐材や廃材などを燃料とする発電方法 |
メリット |
|
バイオマス利用の課題
生物資源を活用したエネルギー生産は、地球温暖化を抑制する有効な手段として期待されています。しかし、実用化に向けてはいくつかの課題も存在します。
まず、燃料となる生物資源を大量かつ安定的に確保する必要があります。広大な土地で農作物や木材を栽培する必要があり、食料生産や環境保全とのバランスをどのように取るかが課題となります。また、収穫した生物資源を発電所などに運搬するコストも削減していく必要があります。
さらに、生物資源を燃料として利用するためには、その質を一定に保つ必要があります。水分量や形状などが異なると、燃焼効率や発電効率が低下する可能性があります。そのため、質のばらつきを抑える技術開発や、様々な質の生物資源に対応できる発電技術の開発が求められています。
加えて、発電コストの低減も重要な課題です。生物資源の発電コストは、既存の火力発電と比較してまだ高いのが現状です。技術開発や設備の効率化によってコストを削減していく必要があります。
これらの課題解決に向けて、技術開発や政策支援が進められています。例えば、生物資源の収穫や運搬を効率化する技術開発、質の向上や安定化のための技術開発、発電効率を高める技術開発などが進められています。また、政策面では、生物資源エネルギーの導入を促進するための補助金制度や税制優遇措置などが導入されています。
課題 | 詳細 |
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生物資源の確保 | – 大量かつ安定的な確保が必要 – 食料生産や環境保全とのバランス – 運搬コストの削減 |
燃料の質の確保 | – 一定の質を保つ必要あり(水分量、形状など) – 質のばらつきを抑える技術開発 – 様々な質に対応できる発電技術の開発 |
発電コストの低減 | – 既存の火力発電と比較してコストが高い – 技術開発や設備の効率化 |