原子力発電の心臓部:圧力管型炉の仕組み
電力を見直したい
『圧力管型原子炉』って、どんなものですか?
電力の研究家
原子炉の種類の一つで、冷却材を流す圧力管がたくさん並んでいる炉のことだよ。普通の原子炉と違って、減速材と冷却材を別々に選べる特徴があるんだ。
電力を見直したい
減速材と冷却材を別々に選べるって、どういうことですか?
電力の研究家
例えば、減速材に黒鉛、冷却材に水を組み合わせたりできるんだ。それぞれの材料の利点を活かせるから、設計の自由度が高くなるんだよ。
圧力管型原子炉とは。
「圧力管型原子炉」は、原子力発電に使われる炉の一種です。この炉は、熱を伝えるために水などの液体を使う「冷却材」と、原子核分裂の速度を調整する「減速材」を、それぞれ別の管に流すのが特徴です。具体的には、「カランドリア管」と呼ばれる太い管の中に、燃料を入れた「圧力管」が複数本束ねられています。冷却材は圧力管の中を流れ、減速材はカランドリア管と圧力管の間を流れます。このように、冷却材と減速材を別々に選ぶことができるため、目的に合わせて様々な組み合わせが可能です。例えば、減速材に「重水」を、冷却材に「軽水」を使う組み合わせや、減速材に「黒鉛」、冷却材に「軽水」を使う組み合わせなどがあります。圧力管型原子炉は、燃料を交換しやすい、炉の運転を続けながら燃料を交換できるといった利点があります。別名「チャンネル型原子炉」とも呼ばれます。
圧力管型原子炉とは
– 圧力管型原子炉とは圧力管型原子炉は、原子力発電所で使われる原子炉の一つの型です。この原子炉では、核燃料を収納した燃料集合体が、圧力管と呼ばれる多数の管の中に入れられています。これらの圧力管は、カランドリアタンクと呼ばれる大きな容器の中に規則正しく配置されています。カランドリアタンクの中には、中性子の速度を落とす減速材が入っており、減速材としては重水や黒鉛が使われます。圧力管型原子炉の大きな特徴は、原子炉の炉心で発生した熱を運ぶ冷却材と、中性子の速度を調整する減速材を、それぞれ別の系統として扱うことができる点にあります。これは、他の型の原子炉とは異なる、圧力管型原子炉特有の設計です。冷却材には、加圧された軽水が用いられることが一般的です。高温高圧の冷却材は、圧力管の中を流れながら燃料から熱を奪い、蒸気発生器へと送られます。蒸気発生器では、冷却材の熱を利用して水が沸騰し、蒸気が発生します。この蒸気がタービンを回し、発電機を駆動することで電力が生み出されます。圧力管型原子炉は、冷却材と減速材を別々に管理できるため、原子炉の運転を柔軟に行えるという利点があります。また、燃料交換が比較的容易であることもメリットとして挙げられます。
項目 | 内容 |
---|---|
原子炉の種類 | 圧力管型原子炉 |
燃料集合体の配置 | 多数の圧力管の中 |
圧力管の配置 | カランドリアタンク内に規則正しく配置 |
減速材 | 重水または黒鉛 |
冷却材 | 加圧された軽水 |
熱の運搬 | 冷却材が圧力管内を流れ、燃料から熱を奪う |
蒸気の発生 | 蒸気発生器で冷却材の熱を利用して水を沸騰させる |
発電 | 蒸気がタービンを回し、発電機を駆動 |
利点 | 冷却材と減速材の別々の管理による運転の柔軟性、燃料交換の容易さ |
冷却材と減速材の分離
原子力発電所では、原子炉で発生した熱を取り出して電力に変換しています。この熱を取り出すために重要な役割を果たすのが冷却材と減速材です。
従来型の原子炉、例えば沸騰水型原子炉(BWR)や加圧水型原子炉(PWR)では、水にこれらの役割を兼ねさせています。しかし、圧力管型原子炉と呼ばれるタイプの原子炉では、冷却材と減速材を別々の物質にすることが可能です。
これは、圧力管型原子炉の構造に由来します。このタイプの原子炉では、燃料棒を格納する圧力管と、その周囲を取り囲む減速材領域が明確に分かれています。そのため、冷却材には水または重水を、減速材には重水または黒鉛など、異なる物質を選択することができます。
冷却材と減速材を分離することには、原子炉の効率や安全性を向上させるという利点があります。例えば、減速材として中性子の吸収が少ない黒鉛を使用することで、ウラン燃料の利用効率を高めることができます。また、冷却材と減速材の特性をそれぞれ最適化することで、原子炉の運転温度や圧力を調整し、より安全な運転を実現することができます。
原子炉の種類 | 冷却材 | 減速材 | 備考 |
---|---|---|---|
沸騰水型原子炉 (BWR) 加圧水型原子炉 (PWR) |
水 | 水 | 従来型の原子炉では冷却材と減速材を兼ねる |
圧力管型原子炉 | 水、重水 | 重水、黒鉛 | 冷却材と減速材を分離することで原子炉の効率や安全性を向上できる |
燃料チャンネルの構造
– 燃料チャンネルの構造圧力管型原子炉の心臓部である炉心は、カランドリアタンクと呼ばれる大きなタンクの中に、多数の燃料チャンネルが縦横に整然と並べられています。それぞれの燃料チャンネルは、原子炉の心臓部と言える重要な部品であり、熱を生み出す燃料集合体、その熱を受け取る冷却材、そして高い圧力に耐える圧力管の三つの主要な要素から構成されています。燃料集合体は、ウラン燃料を詰めた燃料棒を束ねて作られており、原子核分裂によって熱を生み出す役割を担います。この熱は、燃料集合体の周囲を流れる冷却材によって効率的に吸収されます。冷却材には水が使われており、燃料集合体から熱を奪いながら圧力管の中を勢いよく流れ上がります。圧力管は、高温・高圧の冷却材に耐えるために、ジルコニウム合金などの特殊な金属で作られた丈夫な管です。その役割は、冷却材の圧力を維持し、放射性物質の外部への漏洩を防ぐことです。冷却材は、圧力管を通ってヘッダーと呼ばれる部分に集められ、その後、蒸気発生器へと送られます。蒸気発生器では、冷却材の熱が水に伝わり、蒸気を発生させます。そして、この蒸気がタービンを回し、電気を生み出すのです。
構成要素 | 説明 |
---|---|
燃料集合体 | ウラン燃料を詰めた燃料棒を束ねたもの。原子核分裂により熱を生み出す。 |
冷却材 | 燃料集合体から熱を奪い、圧力管の中を流れ上がる。水が使われる。 |
圧力管 | ジルコニウム合金製の丈夫な管。冷却材の圧力を維持し、放射性物質の漏洩を防ぐ。 |
エネルギー変換と発電
エネルギーとは、仕事をする能力のことです。私たちの身の回りには、電気、熱、光、音など、様々な形態のエネルギーが存在します。エネルギーは、ある形態から別の形態に変換することができますが、この原理を利用して電気エネルギーを作り出すのが発電です。
原子力発電も、原子力の持つエネルギーを、最終的に電気エネルギーに変換するシステムです。原子力発電の心臓部である原子炉では、ウラン燃料の核分裂反応によって莫大な熱エネルギーが発生します。この熱エネルギーは、「燃料チャンネル」と呼ばれる部分に封じ込められたウラン燃料から、「蒸気発生器」の中に循環する水へと伝達されます。
水は熱エネルギーを受け取ると沸騰し、高温高圧の蒸気に変化します。この蒸気が持つエネルギーを、今度はタービンと呼ばれる羽根車にぶつけます。すると、蒸気の勢いでタービンが勢いよく回転を始めます。タービンは発電機と連結されているため、タービンが回転すると発電機も一緒に回転し、電気エネルギーが発生するのです。
このように、原子力発電は、核分裂反応で生じた熱エネルギーを、水の状態変化、タービンの回転運動といった段階を経て、最終的に電気エネルギーに変換しています。
プロセス | エネルギー変換 | 説明 |
---|---|---|
原子炉 | 核エネルギー → 熱エネルギー | ウラン燃料の核分裂反応により、莫大な熱エネルギーが発生します。 |
蒸気発生器 | 熱エネルギー → 水蒸気の熱エネルギー | 原子炉で発生した熱エネルギーを水に伝達し、高温高圧の蒸気を発生させます。 |
タービン | 水蒸気の熱エネルギー → 運動エネルギー | 高温高圧の蒸気をタービンにぶつけることで、タービンを回転させます。 |
発電機 | 運動エネルギー → 電気エネルギー | タービンの回転運動により、発電機が回転し、電気エネルギーが発生します。 |
圧力管型原子炉の種類
原子力発電所で使われている原子炉には、圧力容器型と圧力管型の二つの形式があります。そのうち圧力管型原子炉は、冷却材である水や重水を減速材である黒鉛や重水とともに圧力管と呼ばれる管に流し、その中に燃料棒を束にした燃料集合体を挿入する構造になっています。この構造により、運転中に燃料の交換が可能なため、燃料の燃焼効率を向上させることができます。
圧力管型原子炉は、冷却材と減速材の組み合わせによっていくつかの種類に分けられます。
まず、減速材に重水、冷却材に軽水を用いる形式が重水減速軽水冷却炉(SGHWR)です。SGHWRは、ウラン資源の利用効率が高く、天然ウランを燃料として利用できるという特徴があります。カナダなどで開発が進められ、日本では福井県に原型炉のふげんがありました。
次に、減速材と冷却材の両方に重水を用いる形式が重水減速重水冷却炉(CANDU型炉)です。CANDU型炉も天然ウランを燃料として利用でき、運転中に燃料交換が可能なため、高い稼働率を維持できます。カナダで開発され、インドや韓国などで広く採用されています。
最後に、減速材に黒鉛、冷却材に軽水を用いる形式が黒鉛減速軽水冷却炉(RBMK型炉)です。RBMK型炉は旧ソ連で開発された形式で、ウクライナに位置するチェルノブイリ原子力発電所などで採用されていました。しかし、チェルノブイリ原発事故を契機に、安全性の観点から設計の見直しが行われています。
原子炉の種類 | 減速材 | 冷却材 | 特徴 | 開発国 | 採用例 |
---|---|---|---|---|---|
重水減速軽水冷却炉(SGHWR) | 重水 | 軽水 | ウラン資源の利用効率が高い、天然ウラン燃料 | カナダ | ふげん(日本、原型炉) |
重水減速重水冷却炉(CANDU型炉) | 重水 | 重水 | 天然ウラン燃料、運転中燃料交換可能、稼働率が高い | カナダ | インド、韓国など |
黒鉛減速軽水冷却炉(RBMK型炉) | 黒鉛 | 軽水 | チェルノブイリ原発事故後、安全性見直し | 旧ソ連 | チェルノブイリ原子力発電所(ウクライナ) |