もんじゅ

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日英共同研究:MOZART計画

高速増殖炉は、資源の乏しい我が国にとって、エネルギー問題解決の切り札として期待されています。その実現のためには、炉心内部で起こる核分裂反応を精密に制御し、安全性を確保することが何よりも重要です。この核分裂反応の特性を「炉心の核特性」と呼びますが、これを正確に把握することは、高速増殖炉の開発・運転において避けて通れない課題です。 MOZART計画は、日英両国が協力して実施した高速増殖炉の炉心の核特性に関する先駆的な研究計画でした。この計画では、実験とシミュレーションを組み合わせた革新的な手法を用いることで、炉心内の複雑な現象の解明に挑みました。具体的には、実験用の高速炉を用いて実際に核分裂反応を起こし、その際に得られる膨大なデータを詳細に分析しました。同時に、コンピュータを用いた高度なシミュレーションを実施することで、実験では観測が困難な現象までをも詳細に再現しようと試みました。 MOZART計画で得られた成果は、その後の高速増殖炉の設計や安全性の評価に大きく貢献しました。日英両国の研究者の協力によって生まれたこの計画は、高速増殖炉開発における国際協力の成功例としても高く評価されています。
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未来への布石:FaCTプロジェクト

エネルギー源の確保と地球温暖化への対策は、現代社会にとって避けて通れない課題です。これらの課題を解決する手段として期待を集めているのが、高速増殖炉サイクルです。高速増殖炉は、ウラン資源を効率的に利用できるだけでなく、二酸化炭素の排出を大幅に抑えられる可能性を秘めた、まさに夢の原子炉と言えるでしょう。 高速増殖炉サイクルでは、ウラン燃料をより効率的に利用することで、天然ウランからエネルギーを取り出す割合を高めることができます。現在の原子力発電所では、天然ウランのうち燃料として使用できるウラン235はわずか0.7%に過ぎません。しかし、高速増殖炉では、ウラン238を核分裂可能なプルトニウムに変換することで、天然ウランをほぼ全て燃料として利用することが可能となります。これは、限られたウラン資源を有効活用し、エネルギー自給率の向上に大きく貢献できることを意味します。 さらに、高速増殖炉は、運転時に排出する二酸化炭素の量が極めて少ないという利点も持ち合わせています。地球温暖化が深刻化する中、二酸化炭素排出量の大幅な削減は喫緊の課題です。高速増殖炉は、二酸化炭素排出量を抑えながら、エネルギー需要を満たすことのできる、環境に優しい原子力発電技術として期待されています。 高速増殖炉サイクルの実用化には、技術的な課題を克服していく必要があります。日本では、過去に高速増殖炉「もんじゅ」の開発が行われましたが、ナトリウム漏洩事故などにより、実用化には至りませんでした。しかしながら、これらの経験と教訓を活かし、新たな高速増殖炉の開発プロジェクトであるFaCTプロジェクトがスタートしています。FaCTプロジェクトは、日本の高速増殖炉サイクル実用化に向けた挑戦の象徴と言えるでしょう。
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「もんじゅ」:日本の高速増殖炉開発の道のり

「もんじゅ」は、日本のエネルギー問題解決の切り札として、「夢の原子炉」と期待を込めて呼ばれていました。従来の原子炉とは異なり、ウラン燃料をより効率的に活用できる高速増殖炉という技術を採用していました。高速増殖炉は、ウランを核分裂させてエネルギーを取り出すだけでなく、その過程で発生する中性子を吸収させてプルトニウムを生成します。生成されたプルトニウムは、再び燃料として使用することができるため、資源の有効利用に大きく貢献します。さらに、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して再利用することで、核廃棄物の量を大幅に減らすことも期待されていました。このように、「もんじゅ」はエネルギーの自給率向上と環境負荷低減の両面から、日本の未来を担う夢の技術として、大きな注目を集めていたのです。