電離粒子:原子力と放射線の基礎知識
- 電離粒子とは?物質は原子からできており、原子はプラスの電気を持った原子核とその周りを回るマイナスの電気を持った電子で構成されています。通常、原子は電気的に中性ですが、ある種のエネルギーを持った粒子が原子に衝突すると、電子の状態が変わることがあります。十分なエネルギーが与えられた場合、電子は原子核の束縛を振り切って原子から飛び出すことがあります。この現象を「電離」と呼びます。飛び出した電子は自由電子となり、電気を帯びた原子(イオン)を生成します。電子を失った原子はプラスの電気を帯びたイオンとなり、逆に電子を得た原子はマイナスの電気を帯びたイオンとなります。電離を引き起こす能力を持つ粒子を「電離粒子」と呼びます。電離粒子は、アルファ線、ベータ線、ガンマ線などの放射線や、宇宙線、中性子線など、様々な種類があります。これらの粒子は、物質中を進む際に原子と相互作用し、電離を引き起こす可能性があります。電離によって生成されたイオンは、化学的に活性な状態であるため、他の原子や分子と反応しやすくなります。そのため、電離粒子は、生体物質に照射されると、DNAなどの重要な分子に損傷を与え、細胞の死滅やがん化を引き起こす可能性があります。一方で、電離粒子は、医療分野における画像診断やがん治療、工業分野における非破壊検査など、様々な分野で利用されています。