キセノン

原子力発電の基礎知識

原子炉とキセノン反応度

原子力発電所では、ウラン燃料が核分裂反応を起こすことで、私たちが日々使う電気などのエネルギーを生み出しています。ウラン燃料はこの核分裂反応の際に様々な元素に分裂しますが、その中にはキセノンと呼ばれる物質も含まれます。 キセノンは中性子を吸収しやすい性質を持っており、原子炉内に蓄積されると原子炉の運転に影響を及ぼします。 原子炉内では、ウランの核分裂によって中性子が放出され、この中性子がさらに他のウラン原子核に吸収されることで連鎖的に核分裂反応が継続します。しかし、キセノンはこの中性子を吸収してしまうため、原子炉内のキセノンの量が増加すると、核分裂反応に必要な中性子が吸収され、結果として原子炉の出力が低下します。 この現象をキセノン反応度と呼び、原子炉の運転において考慮すべき重要な要素の一つです。キセノン反応度は、原子炉の出力変化や運転時間、燃料の燃焼度合いなど様々な要因によって変化するため、原子炉の運転員はこれらの要素を考慮しながら、原子炉内のキセノン濃度を適切に制御し、安定した運転を維持する必要があります。
原子力の安全

原子炉の安定運転を阻む? キセノン振動の謎

原子力発電所では、ウランの核分裂反応を利用して莫大なエネルギーを生み出しています。この核分裂反応では、熱エネルギー以外にも様々な元素が副産物として生まれます。これらの副産物の中には、原子炉の運転に影響を与えるものも存在し、その一つがキセノン135(¹³⁵Xe)です。 キセノン135は、熱中性子を非常に吸収しやすいという性質を持っています。熱中性子とは、原子炉内で核分裂反応を引き起こすために重要な役割を果たす粒子です。キセノン135はこの熱中性子を吸収してしまうため、原子炉内の核分裂反応の効率を低下させてしまうのです。その結果、原子炉の出力制御が複雑になる要因となります。 さらに、キセノン135は原子炉内で均一に生成・消滅するわけではありません。場所によって生成量と消滅量が異なるため、原子炉内でのキセノン135の濃度に偏りが生じます。熱中性子の吸収量はキセノン135の濃度が高い場所ほど大きくなるため、原子炉内の場所によって中性子の吸収量が異なってきます。これが、原子炉全体の出力分布が時間とともに変動する現象、すなわちキセノン振動と呼ばれる現象を引き起こす原因です。
原子力の安全

原子力発電の安全監視を支えるレーザー技術

原子力発電は、ウランなどの核燃料が原子核分裂する際に生じる莫大なエネルギーを利用して電気を作り出す発電方法です。火力発電と比べて、発電効率が高く、地球温暖化の原因となる二酸化炭素をほとんど排出しないという利点があります。しかし、原子力発電は同時に、放射線を帯びた物質を扱うため、その安全性の確保が何よりも重要となります。 原子力発電所では、幾重にも張り巡らされた安全対策によって、事故のリスクを最小限に抑えています。原子炉は、頑丈な圧力容器と格納容器によって二重に囲まれており、放射性物質の外部への漏洩を防いでいます。また、コンピューター制御による集中監視システムや、人間の目で確認を行う運転員による監視体制など、常に運転状態を監視し、異常が発生した場合には、自動的に原子炉を停止させるシステムや、緊急時対応システムが作動するように設計されています。さらに、定期的な点検や検査、従業員への教育訓練など、安全文化の醸成にも力を入れています。原子力発電は、エネルギー資源の乏しい我が国にとって、重要な役割を担っています。安全性を最優先に、将来のエネルギー需給を支える、重要な発電方法の一つと言えるでしょう。
核燃料

燃料ペレットの縁に見るリム効果

原子力発電所では、ウランという物質が持つエネルギーを利用して発電を行っています。ウランは核分裂という反応を起こすと、莫大な熱エネルギーを生み出す性質があります。このウランを燃料として利用し、その熱で水を沸騰させて蒸気を作り、タービンを回して発電機を動かしています。 このウラン燃料ですが、そのままの形で使用されるわけではありません。小さな粒状に加工され、ジルコニウム合金という金属製の容器に封入されます。この容器に入った状態のものを燃料棒と呼びます。そして、この燃料棒を束ねて、さらに大きな構造体にしたものを燃料集合体と呼びます。 燃料集合体は原子炉の炉心に設置され、中性子と呼ばれる粒子の照射を受け続けます。中性子の照射を受けることでウランは核分裂を起こし、熱を発生し続けます。この状態が燃料の燃焼です。そして、この燃料の燃焼の度合いを示す指標となるのが燃焼度です。 燃焼度が高い、つまり燃料が長時間照射された状態になると、燃料集合体の中では様々な変化が起こります。燃料の組成変化や、燃料ペレットの形状変化、さらに燃料棒を構成する金属の劣化などが挙げられます。これらの変化は、燃料の性能や安全性を評価する上で重要な要素となります。