体内被曝

放射線について

骨に集まる放射性物質の危険性

- 骨親和性放射性核種とは骨親和性放射性核種とは、体内に入ると血液によって運ばれ、最終的に骨に蓄積しやすい性質を持つ放射性物質のことです。体内への侵入経路は多岐に渡り、空気中に漂う放射性物質を含む塵や埃を呼吸によって吸い込んでしまったり、汚染された飲食物を摂取したりすることなどによって、私たちの体内に侵入する可能性があります。骨は、カルシウムなど、体にとって重要なミネラルを蓄積する役割を担っています。骨親和性放射性核種は、これらのミネラルと化学的な性質が似ているため、骨に吸収されやすく、長期間にわたって骨の中に留まり続けるという特徴があります。体内に取り込まれた放射性物質は、その種類や量、被曝時間によって、人体に様々な影響を及ぼします。骨に蓄積した放射性核種からは、絶えず放射線が放出され続けるため、骨の細胞や組織、さらには骨髄にダメージを与え、健康への悪影響を引き起こす可能性があります。具体的には、骨腫瘍や白血病などの発症リスクが高まることが知られています。骨親和性放射性核種による健康への影響を最小限に抑えるためには、放射性物質への曝露をできるだけ避けることが重要です。そのため、放射性物質を扱う職場環境では、適切な防護対策を講じることが必要不可欠です。また、放射性物質による環境汚染が発生した場合には、政府や関係機関からの情報に基づいて、適切な行動をとることが大切です。
放射線について

放射線防護の要:ICRP標準人とは

放射線による健康への影響を評価し、人々を適切に防護するためには、被曝線量の評価が欠かせません。しかし、現実には体格や代謝は千差万別であり、一人ひとりに合わせた被曝線量を正確に計算することは非常に困難です。 そこで、国際放射線防護委員会(ICRP)は、「ICRP標準人」という仮想の人体模型を定義しました。これは、世界中の様々な人種や体格のデータを元に、平均的な解剖学的および生物学的特性を持つ仮想的な人間をモデル化したものです。 ICRP標準人は、年齢が20歳から30歳代で、体重は男性70キログラム、女性60キログラムと設定されています。さらに、臓器の大きさや位置、放射性物質の吸収率や体内での動き方などが細かく定義されており、被曝線量の計算に必要となる様々なパラメータが標準化されています。 この標準化により、世界中で放射線防護に関する基準を統一し、被曝線量の評価や防護対策の効果を比較することが可能になります。もちろん、ICRP標準人はあくまで仮想の人体模型であるため、現実の人間の多様性を完全に反映しているわけではありません。しかし、放射線防護の基礎となる重要な概念として、広く活用されています。
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体内被曝における線源組織:放射性物質の体内分布

- 線源組織とは私たちの体は、口から摂取したり、呼吸で吸い込んだりした様々な物質を、種類によって異なる場所に蓄積する性質があります。例えば、カルシウムは骨に、鉄分は血液に多く含まれていることはよく知られています。実は、放射性物質も同様に、その種類によって体内での動きが異なり、特定の臓器や組織に集まりやすいという特徴があります。この時、放射性物質が特に多く集まり、長い時間留まる臓器や組織のことを「線源組織」と呼びます。 別名「線源臓器」とも呼ばれます。放射性物質は、その原子核が壊変する際に放射線を放出します。そして、線源組織に集まった放射性物質は、そこから周囲の組織や細胞に放射線を照射し続けることになります。そのため、放射線被ばくによる健康への影響を考える上で、どの種類の放射性物質が、体のどこに、どれくらいの量、どれくらいの期間留まるのかを把握することが非常に重要になります。 線源組織と被ばく線量の関係を分析することで、より効果的な放射線防護対策を立てることができるのです。例えば、ヨウ素131という放射性物質は、甲状腺に集まりやすい性質があります。そのため、ヨウ素131を体内に取り込んでしまった場合には、甲状腺がんのリスクが高まる可能性があります。そこで、事故や災害などでヨウ素131が放出された場合には、安定ヨウ素剤を服用することで、甲状腺へのヨウ素131の取り込みを抑制し、被ばくによる健康影響を低減する対策が取られます。