生物学

その他

知られざる染色体:常染色体

人間の体は、約37兆個もの細胞が集まってできています。一つ一つの細胞には核が存在し、その中には遺伝情報であるDNAが格納されています。DNAは、生命の設計図とも言える重要な物質です。 DNAは、ヒストンというタンパク質に巻き付きながら、クロマチンという糸状の構造を作ります。この構造は、まるで糸巻きのように、長いDNAをコンパクトに収納する役割を担っています。さらに、クロマチンは複雑に折り畳まれ、より凝縮された状態へと変化します。そして、細胞分裂の際にのみ観察される棒状の形になったものが、染色体です。 染色体は、遺伝情報を正確に複製し、新しい細胞に分配するための重要な役割を担っています。染色体のおかげで、親から子へと、生命の情報が脈々と受け継がれていくのです。
その他

エネルギー産生の場: ミトコンドリア

私たちの体を作っている細胞一つ一つの中に、「ミトコンドリア」という小さな器官が存在します。ミトコンドリアは、例えるなら細胞内の発電所のような役割を担っています。私たち人間を含め、酸素を吸って生きているすべての生き物にとって、ミトコンドリアは欠かせない存在です。一体なぜ、ミトコンドリアはそれほどまでに重要なのでしょうか?それは、ミトコンドリアが、私たちが生きていくために必要なエネルギーのほとんどを作り出しているからです。私たちが毎日、ご飯を食べたり、運動したり、勉強したりするためには、エネルギーが必要です。そして、そのエネルギー源となるのは、食事から摂取した栄養素です。ミトコンドリアは、酸素を使って栄養素を分解し、その過程で「ATP」と呼ばれるエネルギーの通貨を生み出します。このATPこそが、体の中のあらゆる活動に使われるエネルギー源なのです。ミトコンドリアは、まるで細胞の中に住む小さな発電所のようです。私たちが毎日を元気に過ごすことができるのも、この小さな発電所のおかげと言えるでしょう。
その他

細胞の反乱:腫瘍とは何か

私たちの体は、細胞の分裂と増殖によって成長し、体の機能を維持しています。細胞はそれぞれ寿命があり、寿命が来ると死にます。それと同時に、新たな細胞が生まれて古い細胞と入れ替わることで、私たちの体は常に一定の状態に保たれているのです。 通常、細胞の増殖と死滅は非常に精巧な仕組みによって制御されています。体の成長に必要なだけ細胞が増え、その後は増殖が止まるように調節されているのです。これにより、組織や臓器は適切な大きさや形を保つことができます。 しかし、この緻密な制御機構が、何らかの原因で破綻してしまうことがあります。例えば、遺伝子の損傷や、ウイルス感染などがその原因として挙げられます。すると、細胞は本来の制御を受けずに際限なく増殖し始めます。これが腫瘍です。腫瘍は、周囲の組織を圧迫したり、破壊したりしながら増大していきます。さらに、腫瘍細胞の一部は、血液やリンパ液の流れに乗って体の他の部分に移動し、新たな腫瘍を作ることがあります。これを転移と呼びます。
その他

植物の成長を操る不思議な力:重力屈性

植物は、動物のように自らの力で移動することはできません。しかし、周囲の環境変化を感じ取り、その変化に応じて柔軟に成長方向を変えることで、より良い環境で生育しようとします。例えば、窓辺に置かれた鉢植えを観察してみてください。鉢植えの植物は、太陽の光を求めるように茎や葉を窓の外に向かって伸ばしているはずです。このように、植物が光や重力などの外部からの刺激に反応して、成長方向を変化させる性質を「屈性」と呼びます。 屈性には、大きく分けて二つの種類があります。一つは、刺激となるものの方向に向かって成長する「正の屈性」です。先ほどの例では、植物は光の方向へ成長しているので、これは「正の光屈性」と呼びます。もう一つは、刺激となるものの方向とは反対に、遠ざかるように成長する「負の屈性」です。植物の根は、重力の方向に伸びていく「正の重力屈性」を示しますが、同時に光とは反対方向に伸びていく「負の光屈性」も示します。これらの屈性によって、植物は土壌から水や栄養分を効率的に吸収し、太陽の光を最大限に浴びて、効率的に光合成を行うことができるのです。
その他

放射免疫測定法:微量物質を測る驚異の技術

- 放射免疫測定法とは放射免疫測定法(RIA)は、ごくわずかな量の物質を検出・測定できる、非常に感度の高い技術です。 1950年代に、血液中に含まれるごくわずかなインスリンを測定するために初めて応用されました。 その後、ホルモンやタンパク質など、生物の体内にごくわずかに存在する物質を測定する方法として、生物学や医学の分野で広く利用されるようになりました。 RIAは、鍵と鍵穴の関係のように、特定の物質とだけ結合する抗体の性質を利用しています。 抗体は、体内に侵入してきた異物(抗原)を認識して結合する、免疫システムにおいて重要な役割を担うタンパク質です。 測定したい物質と、それと全く同じ物質に放射性物質で目印をつけたものを用意し、抗体と混ぜ合わせます。 すると、両者は抗体の結合する場所を奪い合うようにして結合します。 この競合の結果、結合した放射性物質の量を測定することで、目的の物質がどれくらい存在していたのかを知ることができます。 目印となる放射性物質はごく微量でも検出できるため、従来の方法では測定できなかった、ごくわずかな物質の存在量を正確に把握することが可能となりました。
その他

生命の設計図:X染色体

私たち人間を含め、多くの生物はオスとメス、二つの性に分けられます。そして、どちらの性として生まれるのか、それを決定する重要な要素が染色体です。 染色体とは、細胞の中に存在する核と呼ばれる小さな部屋のようなものの中にあり、遺伝情報であるDNAを収納する構造体のことを指します。 人間の場合、通常は23対、合計46本の染色体を持っています。 46本の染色体のうち、2本は性染色体と呼ばれ、オスとメスで異なる組み合わせを持っています。 女性は2本のX染色体を持ちますが、男性は1本のX染色体と1本のY染色体を持っています。 このように、性染色体の組み合わせが異なるため、男性と女性では身体的特徴や機能に違いが生じます。 つまり、この性染色体の違いこそが、私たちが男性になるのか女性になるのか、性別の決定に大きく関わっているのです。
その他

組織の源、基底細胞

私たちの体は、数え切れないほどの小さな細胞が集まってできています。家を作るためのレンガのように、細胞はそれぞれが重要な役割を担い、集まることで組織や器官を作り出しています。 体中の臓器の中で最も大きく、常に外気に触れている皮膚も、実は細胞の集まりである「上皮」によって作られています。この上皮は、レンガを積み重ねて壁を作るように、細胞が何層にも重なってできており、体を守るための重要な役割を担っています。 この上皮の一番下、まるで建物の土台のように位置するのが「基底細胞」です。基底細胞は、上皮の細胞の中で最も未熟な細胞ですが、活発に分裂を繰り返すことで、失われた細胞を補い、常に新しい皮膚を作り出す役割を担っています。また、基底細胞は、紫外線などの外的刺激から体を守る役割も担っています。 このように、基底細胞は、目立つ存在ではありませんが、私たちの体を支え、守る「縁の下の力持ち」といえるでしょう。
その他

生き物のつながり:寄主植物

自然界は、多種多様な生き物が複雑な繋がりを持って織りなす、壮大な tapestry のようです。その中で、生き物同士の関係は、食う-食われるという単純なものから、共存共栄、あるいは片方だけが利益を得る関係まで、実に様々です。 その中でも特に興味深いのが、「寄生」という関係です。寄生とは、ある生き物が、別の生き物の体表や体内に住み着き、栄養を一方的に奪い取って生きていくことです。この時、栄養を奪われる側の生き物を「宿主」、奪う側の生き物を「寄生生物」と呼びます。 寄生というと、動物同士の関係をイメージするかもしれません。例えば、犬や猫に寄生するノミやダニ、人間の腸に住み着く回虫などがその例です。しかし、実は植物の世界でも、寄生は広く見られる現象です。寄生する植物は、他の植物に根を絡みつかせたり、組織の中に侵入したりして、水や栄養分を横取りします。 このような植物を「寄生植物」と呼び、寄生される側の植物は、動物の場合と同じく「寄主植物」と呼ばれます。寄生植物の中には、光合成を行う能力が全くなく、完全に寄主植物から栄養を奪って生きているものもいます。まるで、他の植物に完全に依存して生きる、植物界の「吸血鬼」のようです。 このように、寄生という関係は、一見残酷なように思えますが、長い進化の歴史の中で、寄生生物と宿主は、互いの存在を許容し、利用さえしながら、複雑な共存関係を築き上げてきたのです。自然界の巧妙なバランスと、生き物同士の不思議な繋がりの奥深さを、改めて感じさせられます。
その他

組織の主役はどっち?実質細胞と間質細胞

私たちの体は、驚くほど緻密で複雑な構造をしています。その最小単位である細胞は、それぞれが独自の役割を担い、互いに協力し合うことで、生命活動という壮大なドラマを織りなしているのです。 まるで人間社会のように、細胞たちも集団を形成し、それぞれの持ち場で力を発揮しています。この細胞集団を「細胞社会」と呼ぶことがあります。そして、細胞社会の中で、組織や器官の主要な機能を担っているのが「実質細胞」です。 例えば、心臓であれば、力強く収縮して血液を全身に送り出す筋肉細胞が、胃であれば、食べ物を消化するための酵素を分泌する細胞が、それぞれ実質細胞としての役割を担っています。 つまり、実質細胞とは、それぞれの組織や器官の顔ともいうべき、中心的な役割を担う細胞たちのことなのです。彼らの働きによって、私たちの体は健康を維持し、日々の活動を営むことができるのです。
その他

身体を守る免疫の番人:細網内皮組織

私たちの体には、まるで全身に張り巡らされた防衛ラインのように、体内をくまなくパトロールし、健康を維持するために働いている免疫システムが存在します。この重要な役割を担っているのが、「細網内皮組織」と呼ばれる細胞群です。 細網内皮組織は、リンパ管、脾臓、骨髄といったリンパ系器官に加え、副腎皮質など、体内の様々な場所に存在しています。まるでネットワークのように広がることで、体内への侵入者をいち早く感知し、排除する準備を整えているのです。 細網内皮組織を構成する細胞は、マクロファージや樹状細胞など、それぞれが独自の役割を担っています。例えば、マクロファージは、体内に侵入した細菌やウイルス、そして体内で発生した老廃物などを貪食して排除する役割を担っています。一方、樹状細胞は、抗原と呼ばれる、体内に入ってきた異物を認識して、他の免疫細胞に情報を伝える役割を担っています。このように、それぞれの細胞が連携して働くことで、私たちの体は、外敵から身を守り、健康を維持することができるのです。
その他

細胞の関門、細胞膜

すべての生物の最小単位である細胞。この細胞一つ一つを包み込んでいる薄い膜が、細胞膜です。まるでシャボン玉の膜のように、細胞の中身である原形質を外部環境から隔てる役割を担っています。この細胞膜は、その薄さも特徴の一つです。どれくらい薄いかというと、わずか8〜10ナノメートルしかありません。これは、髪の毛の太さの約1万分の1という、想像を絶する薄さです。 しかし、細胞膜は単なる薄い膜ではありません。細胞膜は、細胞内外で物質の出入りを巧みに調節する、まるで「関門」のような役割も果たしています。必要な栄養素を取り込み、不要な老廃物を排出することで、細胞内の環境を一定に保っているのです。また、外部からの刺激を感知し、細胞内部に情報を伝達する役割も担っています。つまり、細胞膜は、細胞が生きていく上で必要不可欠な、非常に重要な役割を担っていると言えるでしょう。
その他

免疫の主役、顆粒細胞とその働き

- 顆粒細胞とは?私たちの身体は、目に見えない小さな侵入者から常に守られています。細菌やウイルスといった病原体は、常に私たちの身体に侵入しようと狙っています。こうした外敵から身を守るために活躍するのが、免疫システムです。免疫システムは、様々な種類の細胞が複雑に連携することで成り立っており、その中でも重要な役割を担う細胞の一つが「顆粒細胞」です。顆粒細胞は、その名の通り細胞内に「顆粒」と呼ばれる小さな袋状の構造を持っています。顕微鏡で観察すると、この顆粒が細胞内に散らばっている様子を確認することができます。顆粒の中には、酵素やタンパク質など、病原体を撃退するための様々な物質が蓄えられています。顆粒細胞は、血液中をパトロールし、身体に侵入してきた病原体を見つけると、顆粒内の物質を放出します。これらの物質は、病原体を直接攻撃したり、他の免疫細胞を活性化して、より効果的に病原体を排除するように促します。顆粒細胞は、生まれながらに備わっている免疫システムである「自然免疫」において中心的な役割を担っています。私たちが健康な生活を送るためには、顆粒細胞の働きは欠かせません。
その他

扁平上皮組織の見分け方

- 扁平上皮組織とは人間の体を作る組織の一つに、上皮組織があります。上皮組織は、体の表面や内臓の表面を覆って、体を守ったり、物質の分泌や吸収などを行ったりしています。この上皮組織には、細胞の形や並び方によって、いくつかの種類があります。その中の一つが、扁平上皮組織と呼ばれるものです。扁平上皮組織は、細胞の幅が高さよりもはるかに大きく、平べったい形をしているのが特徴です。この平べったい細胞が、まるでレンガを敷き詰めたように、隙間なくぴったりと並んでいます。細胞の形が平たいことから、顕微鏡で観察すると、細胞は薄く、核の部分が少し盛り上がって見えます。この扁平上皮組織は、体の表面を覆う皮膚の最も外側の層(表皮)や、口の中、食道、血管の内側など、体の様々な場所に見られます。 扁平上皮組織は、その存在する場所によって、それぞれ異なった役割を担っています。例えば、皮膚の表皮では、外部からの刺激や細菌の侵入を防ぐ役割を担っています。また、血管の内側では、血液の流れをスムーズにする役割や、血管壁を通して物質が出入りするのを調節する役割を担っています。このように、扁平上皮組織は、体の様々な場所で重要な役割を果たしているのです。
その他

遺伝子の設計図:デオキシリボヌクレオチド

私たちの体、そして地球上に息づくあらゆる生物の体は、細胞と呼ばれる小さな単位で構成されています。肉眼では見えないほど小さな細胞ですが、その一つ一つの中に、生命の設計図とも呼ばれる重要な物質が存在します。それがDNAです。 DNAは、親から子へと受け継がれる遺伝物質であり、二重らせんと呼ばれる特徴的な形をしています。この二重らせんの中には、まるで暗号のように、私たちの体の特徴や機能に関する情報がぎっしりと詰まっているのです。 例えば、私たちの瞳の色、髪の色、背の高さなど、外見的な特徴は、DNAに記された情報に基づいて決定されます。また、体の中で行われる様々な活動、例えば、食べ物を消化したり、呼吸をしたり、病気と闘ったりといった機能も、DNAに書き込まれた設計図に従って制御されています。 このように、DNAは、私たちが親から受け継ぐ、かけがえのない生命の情報源であり、生命の連続性を維持する上で欠かせない存在と言えるでしょう。
その他

生命の設計図を読む: コドンの役割

私たちの体は、非常に小さな細胞という単位が集まってできています。細胞は肉眼では見えないほど小さく、人体は約37兆個もの細胞からできていると言われています。そして、この小さな細胞の一つ一つに、生命の設計図とも言える遺伝情報が詰まっているのです。この遺伝情報には、私たちの体の特徴(例えば、髪や目の色、身長など)を決める情報だけでなく、生命活動を維持するために必要な様々な情報も含まれています。 では、この重要な遺伝情報は一体どのような形で保存されているのでしょうか?答えは、DNAと呼ばれる物質です。DNAは、細胞の中心に位置する核と呼ばれる場所に存在しています。 DNAは、まるで鎖のように長く繋がった構造をしています。そして、この鎖をよく見ると、アデニン、グアニン、シトシン、チミンという4種類の物質が、決まった順番で繰り返し並んでいることが分かります。これらの物質は塩基とも呼ばれ、それぞれA、G、C、Tというアルファベットで表されます。 つまり、DNAは、A、G、C、Tの4文字が延々と続く、まるで暗号のようなものなのです。この4文字の並び方が、遺伝情報の内容を決めています。遺伝情報は、この4文字の組み合わせで書かれた、生命の設計図と言えるでしょう。
その他

原子力発電と分化:専門性を深める

分化とは、あるものが異なる性質を持つ別々のものに分かれていく現象を指します。生まれたばかりの赤ちゃんを例に考えてみましょう。赤ちゃんは皆、生まれた時はよく似た姿をしていますが、成長するにつれて顔つきや体つき、性格などが一人一人異なっていきます。これは、細胞がそれぞれ異なる役割を持つように変化していく、すなわち「分化」することによって起こります。 細胞は、筋肉の細胞、神経の細胞、血液の細胞など、実に様々な種類に分化することができます。それぞれの細胞は、心臓を動かす、脳に情報を伝える、酸素を運ぶといった具合に、体の中で特定の役割を担っています。 原子力発電の分野においても、この「分化」は重要なキーワードとなります。ウラン燃料が核分裂する際に発生する様々な元素は、それぞれ異なる性質を持っています。これらの元素を用途に応じて分離したり、安全に処理したりするプロセスにおいて、分化の考え方が活用されています。例えば、使用済み燃料からプルトニウムを分離する再処理技術は、分化の概念を応用した重要な技術の一つです。
その他

腸の吸収を支える小さな巨人: 腸絨毛上皮細胞

私たちが日々口にする食べ物は、体内でエネルギー源や体の組織を構成する材料へと変化します。この驚くべき変換は、主に「小腸」と呼ばれる器官で行われます。小腸は、食べ物が胃から送られてくる次の消化器官であり、栄養吸収の最前線といえます。 小腸の内壁をよく見ると、まるでビロードのような細かい突起が無数に生えていることに気がつきます。これが「絨毛」と呼ばれる構造で、栄養分の吸収効率を高めるための体の ingenious な仕組みです。絨毛は小腸全体の表面積を大きく広げ、より多くの栄養分と触れ合う機会を増やします。 絨毛の表面は「腸絨毛上皮細胞」と呼ばれる特殊な細胞で覆われています。この細胞は、栄養分を効率よく吸収するために、細胞膜上に無数の微絨毛と呼ばれるさらに小さな突起を持っています。腸絨毛上皮細胞は、まるで栄養分を吸い上げるポンプのように働き、体が必要とする栄養分を効率的に吸収していきます。 このように、小腸の絨毛と腸絨毛上皮細胞は、私たちが健康な体を維持するために非常に重要な役割を担っています。絨毛の働きが弱まると、栄養吸収がうまくいかなくなり、様々な体調不良を引き起こす可能性もあるのです。
その他

生命の設計図:核酸

私たちの体は、およそ37兆個という想像を絶する数の細胞が集まってできています。一つ一つの細胞は、まるで小さな部屋のように、それぞれが独自の機能を持っています。そして、その細胞の中心には、「核」と呼ばれるさらに小さな部屋が存在します。この「核」の中に存在し、細胞の働きを制御しているのが、「核酸」と呼ばれる物質です。核酸は、いわば「生命の設計図」のようなものであり、私たちの体の成長や変化、そして生命活動を維持するための重要な情報が書き込まれています。 この設計図は、アデニン、グアニン、シトシン、チミンという4種類の物質が特定の順番で並んだ構造をしていて、まるで暗号のような情報を持っています。この暗号こそが、体を作るための様々なタンパク質を作るための指令となっています。タンパク質は、筋肉や臓器、皮膚、髪など、私たちの体を構成するありとあらゆる要素を作り出すために必要不可欠な物質です。つまり、核酸の情報に基づいてタンパク質が作られることで、私たちの体は成長し、日々新しい細胞を作り出し、健康を維持することができるのです。核酸は、まさに生命の根幹を支える、非常に重要な物質と言えるでしょう。
その他

遺伝子の構成要素:チミジン

- チミジンとは 生命の設計図と呼ばれるDNAは、アデニン、グアニン、シトシン、チミンの4種類の塩基と呼ばれる物質が、文字のように一列に並ぶことで遺伝情報を記録しています。この4種類の塩基は、それぞれ異なる化学構造を持っていますが、いずれも糖と結合することでヌクレオシドという物質になります。 チミジンは、DNAを構成する4つの塩基のうちのひとつであるチミンに、デオキシリボースという糖が結合したヌクレオシドです。つまりチミジンは、DNAの遺伝情報を構成する基本単位の一つと言えるでしょう。 DNAは2本の鎖がらせん状に絡み合った構造をしています。チミジンはこの2本の鎖をつなぐ役割も担っています。チミジンは、もう一方の鎖のアデニンと2本の水素結合を形成することで、DNAの二重らせん構造を安定化させています。 このようにチミジンは、DNAの構成要素として、遺伝情報の保持と伝達に重要な役割を果たしているのです。
その他

皮膚のバリアー、角化層

私たちの体は、常に外界と接しており、様々な刺激にさらされています。強い日差しや冷たい外気、細菌やウイルスなど、体に悪影響を及ぼす可能性のあるものから、私たちを守ってくれるのが体の最外層、皮膚です。 皮膚は、体の表面全体を隙間なく覆う、まさに鎧のような役割を果たしています。そして、この鎧の最も外側、外界と直接触れ合う部分にあるのが「角化層」と呼ばれる薄い層です。 角化層は、死んだ細胞が何層にも重なることで形成されています。細胞の中には、ケラチンと呼ばれる繊維状のタンパク質がぎっしりと詰まっており、これが角化層を硬く丈夫なものにしています。この硬さは、外部からの衝撃を和らげ、体内部への侵入を防ぐための重要な性質です。 また、角化層の表面は、皮脂と呼ばれる油分で覆われています。皮脂は、水分の蒸発を防ぎ、肌の乾燥を防ぐ役割を担っています。 このように、角化層は、硬さと柔軟性を兼ね備えた構造と、皮脂による保護機能によって、私たちの体を外部の刺激から守る、重要な役割を担っているのです。
その他

遺伝子の隠された物語:介在配列の謎

私たちの体は、タンパク質をはじめ様々な分子によってその働きが保たれています。これらの分子を作るための設計図となるのが遺伝子です。遺伝子は、デオキシリボ核酸と呼ばれる長い鎖状の分子の中に、特定の塩基の並び方として保存されています。遺伝子というと、そのすべてがそのままタンパク質の設計図になっていると思われがちですが、実際には少し複雑です。遺伝子は、タンパク質の設計情報が書かれた部分と、その情報を制御する部分に分かれています。 まず、タンパク質の設計情報が書かれた部分は「構造遺伝子」と呼ばれ、体の機能を担うタンパク質のアミノ酸配列を決定します。一方、情報を制御する部分は「調節領域」と呼ばれ、遺伝子がいつ、どこで、どのくらい働くかを調節する役割を担います。調節領域には、遺伝子のスイッチを入れる「プロモーター」や、スイッチを切る「ターミネーター」、働く強さを調節する「エンハンサー」や「サイレンサー」など、様々な機能を持った領域が存在します。 このように、遺伝子はタンパク質の設計図というだけでなく、その情報を精密に制御する仕組みも併せ持っているのです。遺伝子の働きを理解することで、生命現象の解明や、病気の治療法開発など、様々な分野への応用が期待されています。
その他

外因性パラメータと健康

- 外因性パラメータとは私たち人間は、生まれ持った体質や遺伝情報の影響を大きく受けますが、それと同時に、生まれてから成長していく過程で触れる様々な環境によって、体や心が変化していきます。 このような、後天的に身に付く特徴や変化のことを「外因性パラメータ」と呼びます。例えば、幼い頃にどのような食事を摂っていたか、屋外で活発に体を動かしていたか、空気や水がきれいな地域で育ったかといったことは、全て外因性パラメータといえます。 また、家族や友人との良好な関係、学校や職場での人間関係、日々の生活で感じるストレスの大小なども、心身に影響を与える外因性パラメータです。これらの要素は、単独で作用するのではなく、複雑に絡み合いながら、私たちの健康状態を左右します。健やかな成長や健康維持のためには、遺伝的な要素だけでなく、どのような環境に身を置くか、どのような生活習慣を送るかといった外因性パラメータにも意識を向けることが大切です。
その他

遺伝子の変化、挿入突然変異

私たちの体は、細胞と呼ばれるごく小さな単位が集まってできています。細胞一つ一つはまるで小さな工場のように働いており、体を維持するために必要な様々な活動を行っています。そして、この細胞の中には、核と呼ばれるさらに小さな部屋のようなものがあります。 この核の中に大切に保管されているのが、DNAと呼ばれる物質です。DNAは、まるで私たちの体を作り上げるための設計図のようなものです。この設計図には、髪や目の色、身長といった体の特徴や、病気への強さなど、様々な情報が書き込まれています。 では、DNAはどのようにして膨大な量の情報を記録しているのでしょうか? DNAは、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)と呼ばれる4種類の物質が、まるで文字のように一列に並んでできています。これらの物質の並び方を変えることによって、様々な情報を記録することができるのです。 このように、DNAは4種類の物質の並び方によって遺伝情報を記録し、私たちの体の設計図として重要な役割を担っています。
その他

相同染色体:遺伝情報を受け継ぐペア

私たち人間を含む多くの生物は、両親から命の設計図を受け継いでいます。この設計図は、細胞の核の中にしまわれている染色体という糸のようなものに記されています。染色体はDNAという物質でできており、そこには様々な遺伝情報が含まれています。 興味深いことに、この染色体は、形や大きさが全く同じものが2本ずつペアになって存在しています。これを相同染色体と呼びます。私たち人間の場合、全部で46本の染色体を持っていますが、これは両親からそれぞれ23本ずつ受け継いだものであり、2本で1組のペアを形成し、合計23組の相同染色体として存在しています。 父親と母親から受け継いだ相同染色体には、同じ特徴に関わる遺伝情報が同じ場所に記録されています。例えば、目の色を決める遺伝情報を持つ場所が染色体上にあれば、その対になる相同染色体の同じ場所にも目の色に関する遺伝情報があります。ただし、全く同じ遺伝情報が書かれているわけではありません。父親由来の遺伝情報が茶色の目を伝える情報だったとしても、母親由来の遺伝情報は青い目を伝える情報かもしれません。このように、相同染色体は同じ場所に同じ特徴に関する遺伝情報を持っていますが、その内容は少しずつ異なる場合があります。 このように、両親から受け継いだ2つの染色体が対となって存在することで、私たちは両親の両方の特徴を受け継ぐことができるのです。