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その他

放射免疫測定法:微量物質を測る驚異の技術

- 放射免疫測定法とは放射免疫測定法(RIA)は、ごくわずかな量の物質を検出・測定できる、非常に感度の高い技術です。 1950年代に、血液中に含まれるごくわずかなインスリンを測定するために初めて応用されました。 その後、ホルモンやタンパク質など、生物の体内にごくわずかに存在する物質を測定する方法として、生物学や医学の分野で広く利用されるようになりました。 RIAは、鍵と鍵穴の関係のように、特定の物質とだけ結合する抗体の性質を利用しています。 抗体は、体内に侵入してきた異物(抗原)を認識して結合する、免疫システムにおいて重要な役割を担うタンパク質です。 測定したい物質と、それと全く同じ物質に放射性物質で目印をつけたものを用意し、抗体と混ぜ合わせます。 すると、両者は抗体の結合する場所を奪い合うようにして結合します。 この競合の結果、結合した放射性物質の量を測定することで、目的の物質がどれくらい存在していたのかを知ることができます。 目印となる放射性物質はごく微量でも検出できるため、従来の方法では測定できなかった、ごくわずかな物質の存在量を正確に把握することが可能となりました。
放射線について

意外と身近な放射性元素ポロニウム

- ポロニウムとはポロニウムは、原子番号84番の元素で、元素記号はPoと表されます。この元素は、1898年にキュリー夫妻によって発見されました。彼らは、ウラン鉱石であるピッチブレンドから、ウランやトリウムよりもはるかに強い放射能を持つ物質を分離することに成功し、これを新しい元素として「ポロニウム」と名付けました。この名称は、マリー・キュリーの祖国であるポーランドにちなんで付けられました。ポロニウムは、自然界ではウラン鉱石などに極めて微量にしか存在しません。地球の地殻全体でも、わずか100グラム程度しか存在しないと推定されています。このように、ポロニウムは非常に希少な元素です。ポロニウムは放射性元素の一種であり、アルファ線を放出して崩壊していく性質を持っています。アルファ線は、ヘリウム原子核の流れであり、紙一枚で遮ることができるほど透過力は弱いという特徴があります。しかし、体内に取り込まれると、細胞に損傷を与える可能性があり注意が必要です。ポロニウムは、その強い放射能を利用して、人工衛星の熱源や静電気除去装置などに利用されています。また、タバコの煙にも含まれており、喫煙による健康被害の一因として挙げられています。
核燃料

材料の隙間:ポロシティとは?

物質を構成する要素は、その目に見える部分だけではありません。物質内部には、目には見えない小さな空間が存在し、その空間こそが物質の性質を理解する上で重要な役割を担います。このような物質内部の空間の割合を示す指標が「ポロシティ」です。 ポロシティは、物質全体に占める空隙の体積比率を表し、値が大きいほど空隙が多いことを示します。例えば、スポンジのように多数の空隙を持つ物質はポロシティが高く、逆に鉄のように緻密な構造を持つ物質はポロシティが低くなります。 ポロシティは、物質の強度、熱伝導率、透過性など、様々な物性に影響を与えます。例えば、断熱材として用いられるセラミックス材料では、内部に多くの空隙が存在することで熱伝導率が低下し、高い断熱効果を発揮します。また、フィルターとして使用される多孔質材料では、空隙の大きさや形状を制御することで、特定の大きさの粒子のみを通過させることが可能になります。 このように、ポロシティは物質の性質を理解し、材料設計を行う上で非常に重要な指標と言えるでしょう。
核燃料

使用済燃料の熱処理:ボロキシデーション

原子力発電所では、ウランを燃料として熱と電気を作っています。この燃料は使い終わった後も、放射線を出す物質を含んでいるため、「使用済燃料」と呼ばれ、厳重に管理する必要があります。 使用済燃料は、まだ燃料として使用できる物質を含んでいるため、再処理することで資源を有効に活用できます。再処理とは、使用済燃料から有用な物質を回収し、再び燃料として利用できるようにする技術のことです。 再処理を行うことで、使用済燃料に含まれるウランやプルトニウムを取り出すことができます。これらの物質は、新しい燃料として原子力発電で再び利用することができます。また、再処理を行うことで、使用済燃料の量を減らし、保管する期間を短縮することも可能です。 再処理は、資源の有効利用や環境負荷低減の観点から重要な技術です。しかし、再処理には高度な技術や設備が必要となるため、慎重に進めていく必要があります。
その他

プラズマを操るポロイダル磁場コイル

- 核融合エネルギー実現のための磁場閉じ込め 核融合エネルギーは、未来のエネルギー源として期待されています。太陽が莫大なエネルギーを生み出している原理である核融合反応を、地球上で人工的に実現しようという試みです。 しかし、核融合反応を起こすためには、太陽の中心部にも匹敵する超高温・高密度状態を作り出す必要があります。地球上でそのような極限状態を実現するために、物質を高温で電離した状態であるプラズマを、強力な磁場を用いて閉じ込める方法が研究されています。 磁場閉じ込め方式を採用した代表的な装置として、トカマクとステラレータが挙げられます。 トカマクは、ドーナツ型の真空容器内にプラズマを閉じ込める方式です。プラズマ自身が電流を流すことで磁場を発生させ、外部からコイルで磁場を加えることでプラズマを安定して閉じ込めます。一方、ステラレータは、複雑にねじれた形状のコイルを用いることで、外部磁場のみでプラズマを閉じ込める方式です。 現在、世界各国でトカマク型の装置を用いた研究が盛んに行われており、国際協力によって建設中の国際熱核融合実験炉(ITER)は、核融合エネルギーの実現に向けた重要な一歩となることが期待されています。
その他

体内の調整役:ホルモン

- ホルモンとは私たちの体には、健康を維持し、生命活動を円滑に行うために、様々な調整機能が備わっています。その調整役の一つを担うのが「ホルモン」と呼ばれる物質です。ホルモンは、体の中にある特定の器官で作られ、血液の流れに乗って別の場所へと移動します。そして、目的地となる器官や組織にたどり着くと、まるで鍵と鍵穴のように特定の細胞に結合し、その細胞の働きを調節する指令を出します。ホルモンの特徴は、ごく微量でも大きな効果を発揮することです。例えば、食事をして血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が上がると、すい臓という器官から「インスリン」というホルモンが分泌されます。インスリンは、筋肉や肝臓などの細胞に働きかけ、血液中のブドウ糖を細胞内に取り込むように促します。その結果、血糖値は正常な範囲に戻るのです。このように、ホルモンは神経系のように電気信号で情報を伝えるのではなく、血液を介してメッセージ物質を運ぶという特徴があります。体内で作られるホルモンの種類は実に多岐にわたり、それぞれが異なる役割を担うことで、私たちの体の機能を非常に細かく、そして協調的に調節しているのです。
放射線について

微量の刺激で健康に?ホルミシスの謎

- 毒にも薬にもなる?ホルミシスとは「ホルミシス」という言葉をご存知でしょうか? 普段の生活ではあまり耳にする機会がないかもしれませんが、実は私たちの身の回りでも見られる興味深い現象です。簡単に言うと、通常は体に害のある物質でも、ごくわずかな量であれば、反対に健康に良い影響を与える可能性があるというものです。例えば、強い太陽の光を長時間浴び続けると、皮膚が赤く炎症を起こしてしまいます。いわゆる日焼けです。しかし、適量の太陽の光を浴びることは、体内でビタミンDを作るために必要であり、骨を丈夫にする効果も期待できます。これはホルミシスの一例と言えるでしょう。他にも、お酒が好きな方なら「お酒は百薬の長」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。適量のお酒は、血の巡りを良くしたり、ストレスを和らげたりする効果も期待できますが、飲み過ぎると体に悪影響があることは言うまでもありません。これもホルミシスの考え方に通じるところがあります。ホルミシスは、放射線などにも当てはまります。大量の放射線を浴びると人体に深刻な影響が出ますが、ごく微量の放射線であれば、体の細胞を活性化させ、免疫力を高めるという研究結果も報告されています。ただし、ホルミシスはまだまだ研究段階であり、全ての人に当てはまるわけではありません。また、どの程度の量が安全で効果的なのかは、物質や個人差によっても異なります。安易に自分で試すことは危険ですので、専門家の意見を参考にするようにしましょう。
その他

原子力発電でも活躍!驚異の素材 PTFE

- PTFEとはポリテトラフルオロエチレン (PTFE) は、フッ素と炭素のみからなるフッ素樹脂の一種です。 一般的には「フッ素樹脂」や商品名である「テフロン」といった名称で知られており、私たちの身の回りでもフライパンのコーティングなどに使われています。PTFEは、その分子構造に由来する優れた特性を持つため、原子力発電所を含む様々な分野で幅広く利用されています。 PTFEの最大の特徴は優れた耐薬品性です。PTFEは、ほぼ全ての溶媒に溶けることがなく、酸やアルカリ、有機溶媒に対しても高い耐性を示します。この特性から、原子力発電所では、腐食性のある物質を扱う配管やバルブのシール材などに利用されています。また、PTFEは高い耐熱性も持ち合わせています。-200℃の極低温から260℃の高温まで、その特性を維持することが可能です。原子力発電所では、高温高圧の蒸気や熱水に晒される環境下でも安定した性能を発揮することが求められますが、PTFEはこのような過酷な条件にも対応できる材料として重宝されています。さらに、PTFEは摩擦係数が非常に小さく、優れた滑り性を有します。そのため、軸受やパッキンなどの摺動部品に用いることで、摩耗を低減し、エネルギー効率の向上に貢献します。原子力発電所においても、ポンプやバルブなどの駆動部分にPTFEが使われています。このようにPTFEは、耐薬品性、耐熱性、滑り性など、数々の優れた特性を持つことから、原子力発電所の安全性と信頼性の向上に欠かせない材料として、様々な箇所で活躍しています。
放射線について

宇宙でも活躍するボナーボール型中性子検出器

- 中性子検出の仕組み 原子核の研究や原子力発電など、様々な分野で重要な役割を担う中性子。電気を帯びていないため観測が難しく、巧みな方法で検出する必要があります。その代表的な方法の一つに、ボナーボール型中性子検出器があります。 この検出器は、二重構造を持つことが特徴です。中心部には、ヘリウム−3というガスを封入した球形の容器が設置されています。ヘリウム−3は中性子と反応しやすい性質を持ち、検出の鍵を握ります。この容器を、水素を豊富に含むポリエチレンなどの物質でできた外層が包み込む構造となっています。 検出器に高速の中性子が飛び込んでくると、まず外層の水素原子核と衝突します。すると、水素原子核は陽子と中性子で構成されているため、高エネルギーを持った陽子や三重水素が飛び出してきます。これらの粒子が、中心部のヘリウム-3に衝突すると、ヘリウム-3はイオン化し、電流が発生します。この電流を測定することで、間接的に中性子の存在を捉えることができるのです。 このように、ボナーボール型中性子検出器は、直接観測が難しい中性子を、他の粒子との反応を利用して間接的に検出する仕組みです。原子力分野の発展に大きく貢献している技術と言えるでしょう。
原子力発電の基礎知識

原子核の世界とポテンシャル障壁

私たちの身の回りに存在するあらゆる物は、目には見えない小さな粒である原子からできています。そして、その原子の中心には、さらに小さな原子核が存在します。原子核は、陽子と中性子と呼ばれる粒子で構成されており、物質がどのような性質を持つのかを決める、言わば設計図のような役割を担っています。 原子核はあまりにも小さく、私たちが普段使っている光学顕微鏡を使っても、その姿を見ることはできません。しかし、目に見えないからといって、そこには何の法則も存在しないわけではありません。原子核の世界にも、当然ながら法則は存在します。そして、それは私たちが普段、目に見える世界で体験している法則とは大きく異なる、量子力学という不思議な法則に従っています。 例えば、原子核を構成する陽子と中性子は、決まった位置にじっとしているのではなく、雲のように広がった状態で存在しています。また、一つの粒子が同時に複数の状態を持つことも可能です。このような、私たちの常識を超えた不思議な振る舞いが、原子核の世界では日常的に起こっているのです。このようなミクロの世界の法則を理解することが、原子力エネルギーの平和利用や、医療分野における新たな技術開発に繋がると期待されています。
原子力施設

原子力研究の最前線:ホットラボとは

- ホットラボの概要ホットラボとは、「ホットラボラトリー」を省略した呼び方で、放射線を帯びた物質を安全に取り扱うための特別な施設や設備を備えた実験室のことを指します。原子力研究においては、ウラン燃料の核分裂によって生じる様々な元素や、人工的に放射能を持たせた物質など、高い放射能を持つ物質を扱う機会が多くあります。これらの物質は、人体に深刻な影響を与える可能性があり、安全に扱うためには、厳重な安全対策が必須となります。そこで、ホットラボが重要な役割を果たします。ホットラボでは、分厚い鉛でできた壁や遮蔽窓、遠隔操作が可能なマニピュレータ、高性能な換気システムなど、放射線による被ばくを最小限に抑えるための様々な工夫が凝らされています。これらの設備により、研究者たちは安全な環境で、放射性物質の分析、実験、処理などを行うことができます。ホットラボは、原子力研究の進歩に欠かせない施設であり、新しいエネルギー源の開発や医療分野への応用など、様々な分野に貢献しています。
放射線について

環境に残る脅威:ホットパーティクル

原子力発電所で事故が発生すると、放射性物質が広い範囲に拡散してしまうのではないかと、多くの人が不安に感じるのではないでしょうか。放射性物質は目に見えないため、より一層不安を掻き立てます。目に見えない脅威として、特に注意が必要なのが「ホットパーティクル」です。ホットパーティクルとは、極めて小さな粒子でありながら、高い放射能を持つ物質のことを指します。髪の毛の太さと比較しても、ホットパーティクルは10分の1から100分の1という小ささしかありません。 ホットパーティクルは、その小ささゆえに、空気中に浮遊しやすく、風に乗って遠くまで運ばれてしまう可能性があります。また、土壌や水に混入しやすく、環境汚染を引き起こす原因となります。さらに、呼吸によって体内に取り込まれてしまうと、肺などの臓器に付着し、長期間にわたって放射線を浴び続けることになりかねません。ホットパーティクルによる健康への影響は、粒子の大きさや放射能の強さ、体内への取り込み方などによって異なり、まだ解明されていない部分も多くあります。そのため、私たちは、目に見えないからこそ、ホットパーティクルの危険性について正しく理解し、日頃から注意を払いくことが重要です。
原子力施設

ホットセル:放射線から守る砦

私たちは日常生活の中で、常に、ごく微量の放射線を浴びています。これは自然界から発生するものであり、私たちの体への影響はほとんどありません。しかし、医療現場で使われるレントゲン検査のように、人工的に作り出される強い放射線には注意が必要です。特に、原子力発電などで使用される核燃料物質は、極めて強い放射線を出すため、厳重な管理と特殊な設備が欠かせません。 原子力発電所で働く人々の安全を守るための重要な設備の一つに、「ホットセル」と呼ばれる施設があります。ホットセルは、厚さ数メートルにも及ぶコンクリートや鉛の壁と、放射線を遮蔽する特殊なガラスでできた窓を備えた、まるで要塞のような部屋です。この頑丈な構造によって、内部で取り扱う高レベル放射性物質から発生する放射線を遮断し、外部への影響を完全に防ぐことができます。 ホットセル内部では、遠 дистанционно操作できる特殊なロボットアームを用いて、核燃料物質の加工や実験、検査などが行われます。これらの作業はすべて、安全性を最優先に、厳格な手順に従って進められます。ホットセルは、原子力発電を安全に利用するために無くてはならない施設であり、目に見えない脅威から人々と環境を守る、重要な役割を担っているのです。
原子力の安全

原子炉の安全を守るホットスポットファクタ

原子力発電所の中心には、核分裂反応によって熱を生み出す原子炉があります。この原子炉の中には、ウランやプルトニウムといった核燃料を収納した燃料集合体が多数配置され、その内部を冷却水が循環することで熱を外部に取り出す仕組みになっています。原子炉の運転においては、燃料集合体の安全性を確保することが最も重要です。 原子炉内では、場所によって出力(核分裂反応の起こりやすさ)や冷却水の流方に偏りが生じます。そのため、燃料集合体の中でも特に温度が高くなる場所が出てきます。これをホットスポットと呼びます。このホットスポットの温度が、燃料の溶融や破損を引き起こすような限界温度を超えてしまうと、重大事故につながりかねません。 そこで、ホットスポットの温度が限界温度を超えないよう、安全を見込んだ余裕を数値で表したもの、それがホットスポットファクタです。具体的には、燃料集合体全体で平均した温度とホットスポットの温度の比として表されます。ホットスポットファクタは、原子炉の設計段階で詳細な計算を行い、適切な値が設定されます。そして、原子炉の運転中は、このホットスポットファクタが常に監視され、安全性が確保されています。このように、ホットスポットファクタは原子炉の設計と運転において非常に重要な役割を担っていると言えるでしょう。
核燃料

原子力開発の要!ホット試験とは?

- ホット試験とは原子力開発において、ホット試験は欠かせないプロセスの一つです。原子炉の内部で使用される燃料や材料は、運転中に強烈な放射線を浴び続けます。この放射線は物質の性質を変化させる可能性があり、安全な原子力発電のためには、材料が放射線環境下でどのように変化するのかを事前に把握しておく必要があります。ホット試験とは、その名の通り、実際に放射性物質を用いて行う試験のことを指します。原子炉内と同様の、高放射線環境を人工的に作り出し、その環境下で燃料や材料にどのような変化が生じるかを調べます。具体的には、材料の強度や耐食性、寸法変化などが測定されます。これらのデータは、原子炉の設計や運転条件の決定に不可欠な情報となります。ホット試験は、その性質上、高度な技術と厳重な安全管理が求められます。放射性物質の取り扱いには、特別な施設と専門知識が必要となるからです。日本では、日本原子力研究開発機構などが、ホット試験を実施できる施設を保有し、日々研究開発に役立てています。ホット試験によって得られた知見は、原子力発電の安全性と信頼性の向上に大きく貢献しています。将来の原子力技術の発展のためにも、ホット試験の役割はますます重要性を増していくと言えるでしょう。
原子力施設

ホットケーブ:放射性物質を安全に取り扱う施設

- ホットケーブとはホットケーブとは、強い放射線を発する物質を安全に取り扱うために作られた特別な施設です。放射線は、生物にとって大変危険であり、直接触れることはできません。そこで、この施設では、厚いコンクリートや鉛などで作られた壁で囲まれた部屋を作り、その中で作業を行います。まるで未来を描いた物語に出てくるような、この部屋では、特殊なロボットアームやカメラなどを遠隔操作し、物質の移動や実験などを行います。部屋の内部は、放射線の影響を受けないように、常に監視され、厳重に管理されています。ホットケーブは、原子力発電所や研究所など、放射性物質を取り扱う様々な場所で利用されています。放射性物質の研究開発や、原子炉の運転・保守など、人が直接触れることが難しい作業を行う上で、無くてはならない施設となっています。
核燃料

ホットアトム:原子炉の中の熱い原子

原子力発電は、物質の根源である原子核のエネルギーを利用した発電方法です。原子炉の中心部では、ウランやプルトニウムといった重い原子核が中性子を吸収することで不安定になり、二つ以上の軽い原子核に分裂します。これが核分裂と呼ばれる現象で、この時に膨大なエネルギーが熱として放出されます。 核分裂反応では、熱エネルギーの発生だけでなく、元の原子核よりも軽い様々な原子核も新たに生成されます。これらの原子核は、核分裂の際に大きなエネルギーを受け取り、非常に速い速度で飛び散ります。 この高い運動エネルギーを持った原子を、私たちは「ホットアトム」と呼んでいます。これは、原子炉という高温の炉の中で熱せられたように、高いエネルギー状態にあることから名付けられました。ホットアトムは、周囲の原子や分子と激しく衝突することで、自身のエネルギーを周囲に伝えていきます。この過程は、物質の化学的性質に大きな影響を与えるため、放射線化学の分野で重要な研究対象となっています。
原子力の安全

原子炉の安全を守る!補助給水系とは?

原子力発電所では、原子炉の運転が停止した後も、核燃料は熱を出し続けます。この熱を「残留熱」と呼びますが、放置すると原子炉内の温度が過度に上昇し、炉心損傷などの深刻な事故につながる可能性があります。そこで、残留熱を安全に除去するために設けられているのが補助給水系です。 補助給水系は、その名の通り、原子炉に冷却水を供給する役割を担っています。通常運転時、原子炉には主給水ポンプによって冷却水が送り込まれていますが、停電やポンプの故障など、万が一の事態が発生した場合、主給水系が機能しなくなる可能性があります。このような場合に備え、補助給水系は、独立した電源やポンプ、配管などを備え、非常時でも確実に原子炉に冷却水を供給できるよう設計されています。 補助給水系は、原子力発電所の安全性を確保する上で非常に重要なシステムであり、その信頼性は厳しく要求されます。定期的な点検や試験を通して、常に万全の状態に保たれています。
原子力の安全

原子力の平和利用を守る仕組み:保障措置とは

- 保障措置の目的 原子力発電をはじめとした原子力の平和利用は、私たちの社会に様々な恩恵をもたらす一方で、軍事転用される可能性も孕んでいます。もしも、発電などに使用されるはずの核物質が、兵器の開発に利用されてしまったら、国際社会の安全が脅かされる事態になりかねません。 そこで、核物質が平和的な目的だけに利用されていることを国際的に確認し、軍事転用を防ぐための仕組みとして、保障措置が設けられています。これは、国際原子力機関(IAEA)による査察などを柱とした、世界共通の監視システムです。 保障措置は、核兵器の拡散を防止するとともに、原子力の平和利用を促進するという、国際社会全体の利益につながる重要な役割を担っていると言えるでしょう。具体的には、各国がIAEAと締結した保障措置協定に基づき、核物質の在庫や移動などをIAEAに報告し、IAEAは報告内容が正しいことを確認するために、査察などを行っています。 このように、保障措置は、国際的な協力と信頼関係のもとに成り立っており、原子力の平和利用を持続可能なものとするために、欠かせないものです。
原子力の安全

原子力発電の安全を守る保守管理

原子力発電所は、私たちの暮らしに欠かせない電気を供給する重要な施設です。安全で安定した電力供給のためには、原子力発電所を構成する様々な機器が正常に機能することが不可欠です。巨大かつ複雑な機器を取り扱う原子力発電所において、これらの機器の信頼性を維持し、発電所の安全運転を継続するために、保守管理は極めて重要な役割を担っています。 原子力発電所における保守管理は、機器の点検、修理、交換、そして改良など、多岐にわたる作業を含んでいます。定期的な点検では、機器の状態を詳細に検査し、異常の兆候を早期に発見することで、深刻な事故を未然に防ぎます。また、長年の運転で劣化したり、技術の進歩によってより安全性の高い機器が登場したりした場合には、計画的に修理や交換を実施します。さらに、過去の経験や最新の技術に基づいて、機器の性能や安全性を向上させるための改良工事も行われます。 このように、原子力発電所における保守管理は、発電所の安全性と信頼性を確保するために、欠かすことのできない重要な業務です。原子力発電所は、私たちの社会に欠かせない電力を供給し続けるために、日々、保守管理を含む様々な努力を続けています。
放射線について

体内を照らす光:ポジトロンCTとは

- ポジトロンCTとは何かポジトロンCTは、体内の活動状況を鮮明な画像で捉えることができる、最新の画像診断技術です。 CTやMRIが体の臓器や血管などの構造を主に映し出すのに対し、ポジトロンCTは細胞や組織の機能を可視化できる点が大きな特徴です。検査では、微量の放射性物質を含む薬剤を体内に投与します。この薬剤は、ブドウ糖のように、がん細胞など活発に活動している細胞に集まる性質を持っています。 薬剤が集まった部分からは、「ポジトロン」と呼ばれる微粒子が放出されます。ポジトロンCTはこのポジトロンを検出し、コンピューター処理によって画像化することで、がん細胞など活発な細胞がどこにあるのか、その大きさや形はどうかなどを詳細に把握することができます。ポジトロンCTは、がんの診断だけでなく、心臓病や脳疾患など、様々な病気の診断にも用いられています。 また、治療の効果判定や、病気の進行状況を把握するためにも利用されています。従来の画像診断では分からなかった体の機能を捉えることができるため、病気の早期発見や、より適切な治療法の選択に役立つことが期待されています。
原子力の安全

原子炉の制御とポジティブスクラム

- 原子炉の制御原子炉の心臓部では、ウランなどの核燃料が核分裂反応を起こし、莫大なエネルギーを生み出しています。 この反応を安全かつ安定的に継続させるためには、核分裂で発生する中性子の数を精密に制御することが不可欠です。原子炉の出力調整において中心的な役割を担うのが「制御棒」です。制御棒は、中性子を吸収する性質を持つ物質で作られており、炉心に挿入したり引き抜いたりすることで、核分裂反応の速度を調整します。 制御棒を炉心に深く挿入すると、多くの中性子が吸収され、核分裂反応は抑制され、原子炉の出力は低下します。 反対に、制御棒を引き抜くと、中性子を吸収する量が減り、核分裂反応は促進され、原子炉の出力は上昇します。緊急時には、制御棒を完全に炉心に挿入することで、中性子のほとんど全てが吸収され、核分裂反応は連鎖的に停止します。これにより、原子炉は安全な状態へと導かれます。 このように、制御棒は原子炉の出力調整という重要な役割だけでなく、緊急時の安全確保にも欠かせない役割を担っているのです。
その他

ホジキン病:放射線治療の効果が高い悪性リンパ腫

ホジキン病は、血液のがんである悪性リンパ腫の一種です。リンパ系は、全身に張り巡らされた免疫システムの一部であり、リンパ節、脾臓、骨髄などが含まれます。このリンパ系にできるがんが、悪性リンパ腫と呼ばれる病気です。 ホジキン病は、悪性リンパ腫の中でも、特徴的な癌細胞であるリード・ステルンベルグ細胞が見られるという点で、他の悪性リンパ腫と区別されます。この細胞は、顕微鏡で観察すると、二つ以上の核を持つ大きな細胞として確認できます。 ホジキン病は、初期には首、脇の下、足の付け根などのリンパ節が腫れることが多く、痛みを伴わない腫れであることが多いです。病気が進行すると、発熱、体重減少、寝汗、全身倦怠感などの症状が現れることもあります。 ホジキン病は、放射線療法や化学療法、造血幹細胞移植などの治療法によって、多くの場合完治が期待できる病気です。早期発見、早期治療が重要となりますので、気になる症状がある場合は、医療機関への受診をお勧めします。
放射線について

保健物理:原子力と放射線を守る学問

現代社会において、原子力発電や医療といった分野で放射線は欠かせないものとなっています。目に見えないエネルギーである放射線は、私たちの生活に様々な恩恵をもたらしてくれる一方で、使い方を誤ると人体や環境に影響を与える可能性も秘めています。 放射線は、レントゲン撮影による病気の診断や、がん細胞を死滅させる放射線治療など、医療分野で広く活用されています。また、工業製品の検査や農作物の品種改良などにも利用され、私たちの生活を支えています。 しかし、放射線は使い方を誤ると、細胞や遺伝子に損傷を与え、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、放射線を取り扱う際には、適切な知識と安全対策が不可欠です。放射線の人体への影響や安全な取り扱い方を研究する学問が、『保健物理』です。保健物理は、放射線から人々と環境を守るために、放射線の測定方法や防護対策、法律や倫理など、多岐にわたる分野を網羅しています。 放射線は、正しく理解し、安全に利用することで、私たちに多くの恩恵をもたらしてくれる強力なエネルギーです。安心安全な社会を実現するために、放射線と安全に付き合っていくことが重要です。