エネルギーの源、核分裂生成物

エネルギーの源、核分裂生成物

電力を見直したい

先生、『核分裂生成物』って、原子力発電で出てくる言葉ですよね?どんなものかよくわからないんです。

電力の研究家

そうだね。『核分裂生成物』は、原子力発電の燃料であるウランが核分裂する時にできるものなんだ。例えるなら、薪が燃えた後に灰が残るだろう?その灰に当たるのが『核分裂生成物』だよ。

電力を見直したい

なるほど。じゃあ、その『核分裂生成物』は、どんなものなのですか?

電力の研究家

『核分裂生成物』には様々な種類があるんだけど、セシウムやストロンチウムといった放射線を出すものが多く含まれているんだ。これが、原子力発電所から出る廃棄物が危険だと言われる理由の一つだね。

核分裂生成物とは。

原子力発電で使う『核分裂生成物』という言葉は、原子核が分裂してできたものや、それが壊れてできたものを指します。簡単に『FP』と書くこともあります。原子核が分裂すると色々なものができますが、その中でも特に多いのがセシウム137やストロンチウム90です。核分裂生成物は、使い終わった燃料を再処理する過程で、強い放射線を持つものの一部と一緒に酸性の水溶液に溶け出します。そして、強い放射線と熱を出す原因となります。

核分裂と生成物

核分裂と生成物

原子力発電所の中心には原子炉があり、そこで電気エネルギーを生み出しています。原子炉では、ウランなどの重い原子核が中性子を吸収することで、二つ以上の軽い原子核に分裂する現象が連続的に起こっています。この現象を核分裂と呼びます。核分裂が起こると同時に莫大なエネルギーが放出され、そのエネルギーを利用して発電を行っているのです。

核分裂によって生み出されるエネルギーは、私たちの生活に欠かせない電気を供給する源となっています。そして、核分裂と同時に生み出される物質が存在します。それが核分裂生成物と呼ばれるものです。核分裂生成物は、元のウランなどの原子核よりも軽い原子核を持つ元素で、様々な種類が存在します。これらの生成物は放射能を持つため、適切に管理する必要があります。原子力発電は、核分裂という現象を利用して膨大なエネルギーを生み出すと同時に、放射性物質である核分裂生成物を生み出すという側面も持ち合わせています。

項目 説明
原子炉の役割 ウランなどの重い原子核が中性子を吸収することで核分裂を起こし、エネルギーを発生させる。
核分裂 重い原子核が中性子を吸収し、二つ以上の軽い原子核に分裂する現象。莫大なエネルギーを放出する。
核分裂生成物 核分裂と同時に生成される、元の原子核よりも軽い原子核を持つ元素。放射能を持つ。
原子力発電のポイント 核分裂を利用して膨大なエネルギーを生み出すが、放射性物質である核分裂生成物の管理が必要。

多様な核分裂生成物

多様な核分裂生成物

原子核が分裂する現象、核分裂。この時、元の原子核からは想像もできないほど多様な核分裂生成物と呼ばれる新たな原子核が生み出されます。原子番号にして30種類以上、質量数で表現すると実に200種類以上にものぼる核分裂生成物が確認されています。

興味深いことに、この核分裂生成物は、ただ闇雲に生成されるわけではありません。どのような種類の原子核が、どれほどの量で生成されるかは、核分裂を起こす原子核の種類や、核分裂を引き起こす中性子のエネルギーといった条件によって大きく左右されます。そのため、核分裂生成物の種類と量の分布は、核分裂の指紋のような役割を果たし、その核分裂がどのような状況で起こったのかを分析する重要な手掛かりとなります。

原子力発電において重要な役割を果たすウラン235を例に挙げましょう。ウラン235が核分裂を起こすと、セシウム137やストロンチウム90といった放射線を出す能力の高い物質が生成されます。これらの物質は時間経過とともに放射線を放出しながら崩壊していく性質を持つため、適切に管理し、最終的には安全に処分しなければなりません。

このように、原子力発電においては、核分裂生成物の種類や量を正確に把握することが、原子炉の安全な運転や、発生する放射性廃棄物を適切に処理・処分する上で極めて重要となります。

項目 内容
核分裂生成物 核分裂によって生み出される多様な原子核
・種類:30種類以上(原子番号)
・質量数:200種類以上
核分裂生成物の種類と量を決める要因 ・核分裂を起こす原子核の種類
・核分裂を引き起こす中性子のエネルギー
核分裂生成物の重要性 ・核分裂の状況分析の手掛かりとなる
(核分裂の指紋)
ウラン235の核分裂生成物の例 ・セシウム137
・ストロンチウム90
(放射線を出す能力の高い物質)
原子力発電における核分裂生成物の扱い ・適切に管理
・最終的に安全に処分
原子力発電における核分裂生成物の把握の重要性 ・原子炉の安全な運転
・放射性廃棄物の適切な処理・処分

放射能と崩壊熱

放射能と崩壊熱

原子核が分裂すると、エネルギーとともに新たな原子核が生まれます。これを核分裂生成物と呼びますが、これらの多くは不安定な状態にあります。不安定な原子核は、より安定した状態になろうとして、放射線と呼ばれるエネルギーを放出しながら、徐々に別の原子核へと変化していきます。これが放射性崩壊と呼ばれる現象です。放射線は、物質を透過する能力や原子を電離させる力を持っており、生物の細胞や遺伝子に影響を与える可能性があります。従って、放射線の人体への影響を最小限に抑えるため、原子力発電所では厳重な遮蔽や管理が行われています。

一方、放射性崩壊に伴い、熱エネルギーも発生します。これは崩壊熱と呼ばれ、原子炉の運転停止後も長期間にわたって発生し続けるという特徴があります。崩壊熱は、使用済み燃料の冷却において極めて重要な要素となります。使用済み燃料を適切に冷却しないと、崩壊熱により燃料の温度が上昇し、最悪の場合、燃料の溶融や損傷を引き起こす可能性があります。これを防ぐため、原子力発電所では、使用済み燃料を冷却プールと呼ばれる水中に保管し、崩壊熱を安全に除去するシステムが構築されています。

項目 説明 備考
核分裂生成物 原子核分裂によって生じる新たな原子核 多くは不安定な状態
放射性崩壊 不安定な原子核が、より安定した状態になろうとして放射線を放出しながら別の原子核へと変化する現象 放射線は生物への影響があるため、厳重な遮蔽と管理が必要
崩壊熱 放射性崩壊に伴い発生する熱エネルギー 原子炉の運転停止後も長期間発生し続ける
使用済み燃料の冷却 崩壊熱により燃料の溶融や損傷を防ぐために、使用済み燃料を冷却プールで保管し、崩壊熱を安全に除去する 冷却不足は重大事故につながる可能性がある

高レベル放射性廃棄物

高レベル放射性廃棄物

– 高レベル放射性廃棄物
原子力発電所では、ウラン燃料が核分裂反応を起こすことで莫大なエネルギーを生み出します。この反応に伴い、ウラン燃料はプルトニウムや様々な放射性物質に変換されます。この放射性物質を含む使用済み燃料は、再処理と呼ばれる工程を経て、資源として再利用可能な物質と、高レベル放射性廃棄物に分けられます。

高レベル放射性廃棄物は、極めて高い放射能を持ち、長期間にわたって熱と放射線を出し続けるという特徴があります。そのため、人の健康や環境への影響を最小限に抑えるため、厳重な管理適切な処分が必須となります。

現在、日本では高レベル放射性廃棄物をガラスと混ぜて固化し、冷却のため数十年の間は地上で保管する「中間貯蔵」という方法がとられています。その後、地下深くの安定した岩盤層に埋設処分する「最終処分」が検討されていますが、処分地の選定や安全性の確保など、解決すべき課題は少なくありません。

高レベル放射性廃棄物の問題は、原子力発電を利用していく上で避けて通れない重要な課題です。安全な保管方法や最終処分地の選定は、将来世代に負の遺産を残さないためにも、国民全体の理解と協力が不可欠です。

項目 説明
発生源 原子力発電所の使用済み核燃料
特徴 極めて高い放射能を持ち、長期間にわたって熱と放射線を出し続ける
処理・処分 1. 再処理工程:資源として再利用可能な物質と高レベル放射性廃棄物に分離
2. ガラス固化体化
3. 中間貯蔵:冷却のため数十年の間は地上で保管
4. 最終処分:地下深くの安定した岩盤層に埋設処分(検討段階)
課題 最終処分地の選定、安全性の確保など

資源としての可能性

資源としての可能性

原子力発電所から発生する使用済み燃料には、ウランやプルトニウムといった核燃料物質だけでなく、様々な元素が含まれています。これらは一般的に「核分裂生成物」と呼ばれ、放射性廃棄物として、その処理や処分が課題となっています。しかし、核分裂生成物の中には、その放射性を活かして医療分野や工業分野で利用できるものも存在します。
例えば、セシウム137はガン治療などに用いられる医療用放射性同位元素の製造に利用できます。また、ストロンチウム90は工業用の非破壊検査の線源や、宇宙探査機の電源として活用が期待されています。
さらに、核分裂生成物は放射性崩壊の際に熱を発生するという特徴も持ち合わせています。この熱は「崩壊熱」と呼ばれ、発電や熱源としての利用が検討されています。具体的には、崩壊熱を利用した小型発電装置の開発や、海水淡水化などへの応用が研究されています。
このように、核分裂生成物は適切に管理し、その特性を深く理解することで、単なる廃棄物ではなく、資源としての新たな可能性を秘めていると言えます。

核分裂生成物 特徴 用途例
セシウム137 放射性 医療用放射性同位元素の製造(ガン治療など)
ストロンチウム90 放射性 工業用の非破壊検査の線源、宇宙探査機の電源
崩壊熱 小型発電装置の開発、海水淡水化など