独自技術が生んだ原子力発電:カナダ型重水炉

独自技術が生んだ原子力発電:カナダ型重水炉

電力を見直したい

先生、『カナダ型重水炉』って軽水炉とは違うんですよね?どんなところが違うんですか?

電力の研究家

いい質問ですね。まず、燃料が違います。軽水炉は濃縮ウランを使いますが、カナダ型重水炉は天然ウランを使います。 また、中性子を減速させる減速材と、原子炉を冷やす冷却材に、軽水炉は軽水を使うのに対して、カナダ型重水炉は重水を使います。

電力を見直したい

燃料と減速材と冷却材が違うんですね。重水を使うことには何かメリットがあるんですか?

電力の研究家

はい、重水は軽水に比べて中性子を吸収しにくいという性質があります。そのため、天然ウランでも核分裂反応を起こしやすくなるんです。

カナダ型重水炉とは。

「カナダ型重水炉」は、カナダで独自に開発され、実際に使われている原子力発電の方式です。これは、重水を使い、原子炉の中で起こる核分裂の速度を調整し、熱を取り出す仕組みです。英語の「CANadian Deuterium Uranium」の頭文字をとって「CANDU炉」とも呼ばれます。

一般的な原子炉とは違い、燃料には天然のウランを使い、燃料を入れる部分は横に置かれた圧力管というところに収められます。原子炉の容器は「カランドリア・タンク」と呼ばれ、中には格子状に並べられたたくさんの「カランドリア管」が取り付けられています。カランドリア管の中と外は重水で満たされ、その中に圧力管が通っています。この構造のおかげで、中性子の速度を落とす役割と、熱を奪う役割を完全に分けることができます。

また、運転中に燃料を交換できるという特徴も、一般的な原子炉とは異なる点です。燃料交換は運転中にできるとはいえ、炉心から取り出された使用済み燃料の動きを直接確認することは難しいです。そのため、「燃料バンドルカウンタ」という装置を使って、自動的に数を数える仕組みになっています。ただし、安全確保の観点から、現在では運転中の燃料交換は行われていません。

カナダ型重水炉とは

カナダ型重水炉とは

– カナダ型重水炉とはカナダ型重水炉は、その名の通りカナダで開発された原子力発電炉です。正式名称はCANDU炉と言い、これは「CANadian Deuterium Uranium(カナダ重水ウラン)」の頭文字を取ったものです。この原子炉は、現在世界で主流となっている軽水炉とは異なる設計思想に基づいており、独自の技術が使われています。最大の特徴は、天然ウランを燃料として使用できる点です。ウランには、核分裂しやすいウラン235と、そうでないウラン238が存在します。天然ウランにおけるウラン235の濃度はわずか0.7%程度ですが、カナダ型重水炉はこの濃度のまま燃料として使用できます。一方、軽水炉ではウラン235の濃度を3~5%程度にまで濃縮する必要があり、特別な施設とコストがかかります。さらに、カナダ型重水炉は運転中に燃料交換が可能という利点も持ち合わせています。軽水炉の場合、燃料交換を行うためには原子炉を停止しなければなりませんが、カナダ型重水炉は運転を続けながら燃料交換ができます。そのため、高い稼働率を維持することが可能です。しかし、カナダ型重水炉にも課題はあります。軽水炉に比べて大型になりやすく、建設コストが高額になりやすい点は、導入を検討する上で重要な要素となります。このように、カナダ型重水炉は独自の技術を用いることで、天然ウランの使用や運転中の燃料交換といった特徴を実現しています。世界的に見ると、カナダをはじめ、インドや韓国などで採用されている原子炉です。

項目 カナダ型重水炉 軽水炉
燃料 天然ウラン (ウラン235: 約0.7%) 濃縮ウラン (ウラン235: 3~5%)
燃料交換 運転中可能 停止時のみ可能
建設コスト 高額 比較的安価
稼働率 高い 普通
採用国 カナダ、インド、韓国など 世界各国

重水を使う理由

重水を使う理由

原子力発電所では、ウランの核分裂反応を利用して熱エネルギーを生み出し、発電を行っています。この核分裂反応を効率的に起こすためには、原子核に衝突して反応を引き起こす中性子の速度を適切に制御する必要があります。
中性子の速度を落とす物質を減速材と呼びますが、カナダ型重水炉と呼ばれるタイプの原子炉では、減速材として重水を使用しています。重水は普通の水と比べて、中性子を減速させる効果が非常に高いという特徴があります。
原子炉で利用されるウラン燃料には、天然ウランと濃縮ウランの二種類があります。天然ウランは、ウランを採掘したそのままの状態のものを指し、濃縮ウランは、天然ウランに含まれる核分裂しやすいウラン235の割合を高めたものを指します。
重水は中性子の減速効果が高いため、ウラン235の割合が低い天然ウラン燃料を用いても効率的に核分裂反応を起こすことが可能となります。ウラン濃縮には高度な技術と費用が必要となるため、ウラン濃縮技術を持たないカナダでは、重水と天然ウランを用いた原子力発電が適していたと言えます。

項目 内容
発電のしくみ ウランの核分裂反応を利用
核分裂反応を起こすために必要なこと 中性子の速度制御
減速材 中性子の速度を落とす物質(カナダ型重水炉では重水を使用)
重水の特性 普通の水より中性子の減速効果が高い
ウラン燃料の種類 天然ウランと濃縮ウラン
天然ウラン ウランを採掘したままの状態のもの
濃縮ウラン ウラン235の割合を高めたウラン
重水炉の特徴 重水は中性子の減速効果が高いため、天然ウラン燃料でも核分裂反応を効率的に起こせる
カナダにおける原子力発電 ウラン濃縮技術を持たないため、重水と天然ウランを用いた原子力発電が適していた

燃料交換の工夫

燃料交換の工夫

原子力発電所では、運転を続けるために定期的に燃料を交換する必要があります。我が国で主に採用されている軽水炉と呼ばれるタイプの原子炉では、燃料交換の際には原子炉を停止させなければなりません。燃料の交換作業中は発電を行うことができなくなるため、発電所の稼働率が低下してしまうという課題がありました。

一方、カナダで開発されたカナダ型重水炉と呼ばれるタイプの原子炉では、原子炉の運転を継続したまま燃料交換を行うことが可能です。これは、カナダ型重水炉が多数の圧力管を備えており、それぞれの圧力管に燃料を収納する構造になっているためです。燃料交換を行う際には、交換対象となる圧力管にのみ専用の装置を接続し、燃料の挿入と取り出しを行います。他の圧力管では原子炉の運転が継続されるため、燃料交換に伴う原子炉の停止は不要となります。

このように、運転中に燃料交換が可能なカナダ型重水炉は、軽水炉と比較して稼働率の面で優れていると言えるでしょう。しかしながら、我が国では、安全確保の観点から、現在運転中の燃料交換は行われていません。

項目 軽水炉 カナダ型重水炉
燃料交換の方式 原子炉を停止して交換 原子炉の運転を継続したまま交換可能
稼働率 低い 高い
日本での現状 主流 安全確保の観点から運転中の燃料交換は行われていない

カランドリア構造の役割

カランドリア構造の役割

– カランドリア構造の役割カナダ型重水炉の心臓部とも言えるのが、カランドリア構造です。これは、巨大な円筒形の容器であるカランドリアの中に、カランドリア管と呼ばれる多数の管を縦に配置した構造をしています。それぞれのカランドリア管の中には、燃料を封じた燃料棒を束ねた燃料集合体が収納された圧力管が通っています。カランドリア管と圧力管の間には、中性子の速度を落とす減速材と燃料から発生する熱を奪う冷却材を兼ねた重水が満たされています。原子炉内で核分裂反応を起こしたウラン燃料から放出される中性子は、高速で飛び回っており、このままでは次のウラン原子核にうまく衝突できません。そこで、重水を用いることで中性子の速度を減速させ、核分裂の連鎖反応を効率的に維持させています。カランドリア構造の最大の特徴は、減速材である重水と冷却材である重水が完全に分離されている点にあります。これは、減速材の量を調整することで原子炉の出力制御をしやすくする一方、冷却材の量と流れを安定させることで、より安全に炉心を冷却できるという利点があります。このように、カランドリア構造は、カナダ型重水炉の安全性と効率性を両立させる上で、非常に重要な役割を担っていると言えます。

構成要素 説明
カランドリア 巨大な円筒形の容器。多数のカランドリア管を縦に配置。
カランドリア管 カランドリア内に設置された多数の管。内部に圧力管が通る。
圧力管 燃料集合体が収納されている。カランドリア管内部に設置。
燃料集合体 燃料棒を束ねたもの。圧力管に収納。
重水 カランドリア管と圧力管の間に充填。減速材と冷却材を兼ねる。

燃料バンドルカウンタの役割

燃料バンドルカウンタの役割

原子力発電所では、発電のために原子核分裂を起こし続ける必要があります。この核分裂を維持するために、新しい燃料を炉心に供給し、使い終わった燃料を取り出す作業が定期的に行われています。
カナダ型重水炉と呼ばれるタイプの原子炉では、運転中に燃料を交換することができます。これは、原子炉の運転効率を高める上で大きな利点ですが、同時に、炉心から取り出された使用済み燃料の動きを直接確認することが難しいという課題も生み出します。
そこで、燃料の動きを正確に把握するために、「燃料バンドルカウンタ」と呼ばれる装置が活躍します。燃料集合体は炉心から取り出されると、専用のプールに貯蔵されますが、この移動の際に燃料バンドルカウンタが自動的に燃料集合体の数を数える仕組みになっています。
燃料バンドルカウンタは、燃料集合体が通過する際に発生する放射線を検知することで、その数を正確に数えます。これにより、燃料の移動を常に監視し、燃料の所在を明確に把握することができます。この情報は、燃料管理の安全性を確保する上で非常に重要です。燃料の所在を常に把握することで、燃料の紛失や盗難といったリスクを低減し、原子力発電所の安全な運転を支えています。

項目 内容
目的 原子力発電所における核分裂の維持
プロセス 新しい燃料の炉心への供給と使い終わった燃料の取り出し
カナダ型重水炉の特徴 運転中の燃料交換が可能 (効率性向上、使用済み燃料の監視の難化)
燃料バンドルカウンタの役割 炉心からプールへの燃料移動の監視、燃料集合体の数のカウント
燃料バンドルカウンタの仕組み 燃料集合体通過時の放射線検知によるカウント
燃料バンドルカウンタの重要性 燃料移動の監視による燃料所在の把握、燃料管理の安全性確保、紛失・盗難リスクの低減