南海トラフ:巨大地震とエネルギー資源の宝庫
電力を見直したい
『南海トラフ』って原子力発電と何か関係があるんですか? 地震が起こるところってことはわかるんですけど…
電力の研究家
良い質問ですね。南海トラフは巨大地震を起こす可能性がある場所ですが、これは原子力発電所にとっても大きな問題になる可能性があります。なぜか分かりますか?
電力を見直したい
えっと… 地震で発電所が壊れるとか…?
電力の研究家
その通り! 原子力発電所は地震に強いように設計されていますが、南海トラフ地震のような巨大地震が起きた場合、被害を受ける可能性があります。そこで、南海トラフ地震の発生確率や規模を研究して、原子力発電所の安全対策に役立てているんです。
南海トラフとは。
「南海トラフ」とは、日本の南西側、東海沖から紀伊半島沖、そして四国沖にかけて続く、船底のような形をした海底の谷のことです。ここで、フィリピン海にある海のプレートが、ユーラシア大陸のプレートの下に沈み込んでいます。フィリピン海のプレートは、沈み込む時にユーラシア大陸のプレートを巻き込むように一緒に引きずり込んでいます(図を見てください)。この引きずり込みが限界を超えると、大きな地震が起こります。このような大きな地震は、最近では1944年と1946年に東南海地震として起きました。今から約1300年前の白鳳時代にも大きな地震があった記録が残っており、それ以来、11回も大きな地震が起きています。石油の会社が集まった団体は、国の経済を扱う省庁から頼まれて、国内にある石油や天然ガスの調査を行っています。その一環として、1999年11月に南海トラフの海底を深く掘る調査を始めました。海底の表面から1,110メートルから1,272メートルの深さにある砂の層から、地層の一部を円柱状にくり抜いて採取しました。その採取したサンプルからは、たくさんのガスが出てきました。また、サンプルの温度が通常よりも低かったり、地層に含まれる水の塩分濃度が通常よりも低かったりしたことから、海底の表面から1,152メートルから1,210メートルの間に、3つの層に分かれて「メタンハイドレート」という物質が存在することが確認されました。その厚さは合計で約16メートルにもなります。
西南日本の巨大地震発生帯
西南日本の太平洋側沖合には、南海トラフと呼ばれる海底の深い溝が延びています。この溝は、地球の表面を覆うプレートと呼ばれる巨大な岩盤のうち、フィリピン海プレートと呼ばれる海洋プレートが、ユーラシアプレートと呼ばれる大陸プレートの下に沈み込む場所に位置しています。
フィリピン海プレートは、年間数センチメートルという非常にゆっくりとした速度で、ユーラシアプレートの下に沈み込んでいます。このプレートの動きは、海のプレートが陸のプレートを押す力となり、歪みを生み出します。長い年月をかけて蓄積された歪みが限界に達すると、プレート境界が急激にずれ動いて、巨大な地震が発生します。これが、南海トラフ周辺地域で巨大地震が繰り返し発生するメカニズムです。
南海トラフにおける巨大地震は、過去においても繰り返し発生しており、歴史記録にも残されています。過去の地震の発生時期や規模を調べることで、将来発生する地震の予測や防災対策に役立てることができます。
プレート | プレートの動き | 結果 |
---|---|---|
フィリピン海プレート(海洋プレート) | ユーラシアプレートの下に年間数センチメートル沈み込む | 歪みが生じる |
– | 歪みが限界に達する | プレート境界がずれ巨大地震が発生 |
プレートの動きと巨大地震
地球の表面は、パズルのピースのように複数のプレートで覆われており、それぞれが常にゆっくりと動き続けています。日本周辺は、特にこれらのプレートの動きが活発な地域です。フィリピン海プレートと呼ばれる海洋プレートは、年間数センチメートルというわずかな速度ですが、ユーラシアプレートと呼ばれる大陸プレートの下に沈み込んでいます。この時、2つのプレートは押し合い、大きな力が働きます。
この力によって、プレート境界には徐々に歪みが蓄積されていきます。長い時間をかけて蓄積された歪みが限界を超えると、プレート境界は耐え切れずに大きくずれ動きます。この急激な動きが、巨大地震を引き起こすのです。南海トラフと呼ばれる、フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界域では、過去に幾度となく巨大地震が発生してきました。歴史を振り返ると、南海トラフでは約100~150年の間隔で巨大地震が繰り返し発生しており、次の発生も懸念されています。巨大地震は私たちの社会に甚大な被害をもたらす可能性があるため、日頃から備えをしておくことが重要です。
プレート | 動き | 結果 |
---|---|---|
フィリピン海プレート(海洋プレート) | ユーラシアプレートの下に沈み込む | ・プレート境界に歪みが蓄積 ・歪みが限界を超えるとプレート境界がずれ動く ・巨大地震が発生 |
ユーラシアプレート(大陸プレート) | フィリピン海プレートと押し合う |
過去の大地震と将来の予測
日本の南に位置する南海トラフでは、過去1300年間に巨大地震が11回も発生しています。これは、およそ90年から200年ごとに巨大地震が起きている計算になります。直近では、1944年に東南海地震、その2年後となる1946年には南海地震が発生しました。これらの地震はどちらもマグニチュード8クラスという非常に大きな規模で、各地に甚大な被害をもたらしました。歴史的に見ても南海トラフは巨大地震の巣といえるでしょう。そして、過去の発生間隔から考えると、近い将来、再び南海トラフを震源とする巨大地震が発生する可能性は否定できません。もちろん、地震がいつ起こるかを正確に予測することは現在の技術では不可能です。しかし、過去の地震の記録やプレートの動きなどを詳しく調べることによって、将来の地震発生リスクをある程度推測することができます。これらの情報は、防災対策に役立てることができるとても重要なものです。備えあれば憂いなし、日頃から防災意識を高め、いざという時のための準備をしておくことが重要です。
項目 | 内容 |
---|---|
過去1300年間の巨大地震発生回数 | 11回 |
巨大地震の発生間隔 | 約90年~200年ごと |
直近の巨大地震 | 1944年 東南海地震 (M8) 1946年 南海地震 (M8) |
海底に眠るエネルギー資源
日本列島に沿って延びる海底の溝、南海トラフは、巨大地震の発生源として恐れられていますが、同時に未来を拓くエネルギー資源の宝庫としても注目されています。1999年、石油公団(現在の石油天然ガス・金属鉱物資源機構)が南海トラフで実施した調査掘削において、画期的な発見がありました。それは、メタンハイドレートの存在確認です。
メタンハイドレートとは、メタンガスが水分子と結合し、シャーベット状に固まった物質です。見た目こそ氷に似ていますが、火を近づけると燃焼し、周囲の水だけを残して消えてしまいます。このことから「燃える氷」とも呼ばれています。メタンハイドレートは、従来の化石燃料に比べて燃焼時に排出する二酸化炭素が少なく、地球温暖化対策の切り札として期待されています。
日本近海の海底には、このメタンハイドレートが豊富に存在すると推定されており、その量は国内の天然ガス消費量の約100年分に相当するとも言われています。もし、この海底資源を安全かつ効率的に採取できるようになれば、日本のエネルギー自給率向上に大きく貢献するでしょう。しかし、メタンハイドレートの開発には、まだ多くの課題が残されています。海底の地盤は不安定な場所が多く、資源を採取する際に海底地すべりが発生するリスクもあります。また、メタンハイドレートは、採取や輸送の過程でメタンガスが漏洩しやすく、環境への影響も懸念されています。これらの課題を解決し、海底のエネルギー資源を有効活用できるよう、技術開発が進められています。
項目 | 内容 |
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メタンハイドレートとは | メタンガスが水分子と結合し、シャーベット状に固まった物質。燃えると水だけを残すため「燃える氷」とも呼ばれる。 |
特徴 | 従来の化石燃料に比べて燃焼時の二酸化炭素排出量が少ない。 |
日本近海における埋蔵量 | 豊富に存在すると推定。国内の天然ガス消費量の約100年分に相当する量の可能性も。 |
メリット | 日本のエネルギー自給率向上に大きく貢献する可能性。 |
課題 | 海底地すべりのリスク、メタンガス漏洩による環境への影響。 |
今後の展望 | 課題解決に向けた技術開発が進行中。 |
資源開発と防災の両立に向けて
日本はエネルギー資源の多くを海外に依存しており、エネルギーの自給率向上は喫緊の課題です。その解決策の一つとして期待されているのが、南海トラフに存在するメタンハイドレートです。メタンハイドレートは、天然ガスの一種であるメタンを主成分とする、シャーベット状の物質です。日本近海の海底に大量に埋蔵されているとされ、将来のエネルギー源として大きな期待が寄せられています。
しかし、メタンハイドレートが存在する南海トラフは、巨大地震の発生帯としても知られています。過去にも繰り返し大きな地震を引き起こしてきた歴史があり、将来の発生も懸念されています。そのため、メタンハイドレートの開発にあたっては、地震による被害を最小限に抑えるための防災対策と両立させることが不可欠です。具体的には、地震の発生メカニズムの解明や、地震発生を予測する技術の向上などが求められます。また、海底の掘削やパイプラインの敷設など、開発に伴う施設の耐震性を高める技術開発も重要です。
このように、メタンハイドレートの開発は、エネルギー自給率向上と防災という、相反する課題を同時に解決していくという難題を抱えています。しかし、日本の未来のためには、安全性を確保しながら、新たなエネルギー資源の開発を進めていくことが求められます。
項目 | 内容 |
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背景 | 日本はエネルギー資源の多くを海外に依存しており、エネルギーの自給率向上は喫緊の課題である。 |
メタンハイドレートへの期待 | – 天然ガスの一種であるメタンを主成分とする、シャーベット状の物質 – 日本近海の海底に大量に埋蔵 – 将来のエネルギー源として大きな期待 |
課題 | – メタンハイドレートが存在する南海トラフは巨大地震の発生帯 – 開発に伴い、地震による被害のリスクが存在 |
対策 | – 地震の発生メカニズムの解明 – 地震発生を予測する技術の向上 – 海底の掘削やパイプラインの敷設など、開発に伴う施設の耐震性を高める技術開発 |
今後の展望 | 安全性を確保しながら、新たなエネルギー資源の開発を進めていくことが求められる。 |