二相流の圧力損失計算を解説

二相流の圧力損失計算を解説

電力を見直したい

先生、「二相流増倍係数相関式」って、何ですか?難しそうな名前で、よくわからないです。

電力の研究家

そうだね。「二相流増倍係数相関式」は少し難しい言葉だね。簡単に言うと、水と空気のように、液体と気体が混ざって流れる時に、どれくらい流れにくくなるかを計算するための式なんだ。

電力を見直したい

流れにくくなるんですか?

電力の研究家

そう。例えば、ストローで水を飲む時と、空気と水を一緒に吸い込む時を比べてごらん。空気と水が混ざると、水を吸い込むのが大変になるよね?その「大変さ」を計算するのに役立つ式なんだよ。

二相流増倍係数相関式とは。

原子力発電で使われる言葉である「二相流増倍係数相関式」は、気体と液体が混ざり合った流れにおける、流れの方向への圧力低下を計算する際に、流れと管との間の摩擦による影響を推定するための実験に基づいた関係式です。よく知られている方法の一つに、ロックハート-マルティネリ-ネルソンの方法があります。この方法は、気体と液体が混ざり合った流れにおける摩擦による圧力低下の度合いを、液体成分または気体成分だけが単独で流れている時の摩擦による圧力低下の度合いに対する比率として表し、その比率の値を一つの変数だけで決まるグラフとして示しています。

二相流とは

二相流とは

– 二相流とは原子力発電プラントの冷却システムなど、エネルギー関連産業においては、液体と気体が混ざり合った流れ、すなわち二相流を扱う場面が多く見られます。 この二相流は、液体あるいは気体のみの流れである単相流と比べて、その挙動が複雑であるため、解析には専門的な知識や技術が求められます。例えば、沸騰水型原子炉(BWR)を例に考えてみましょう。BWRの炉心では、核燃料の加熱によって水が沸騰し、蒸気が発生します。この蒸気と冷却水が混ざり合ったものが二相流となり、配管内を流れて熱交換器やタービンへと運ばれていきます。この二相流が配管内を流れる際、流れの抵抗によって圧力が徐々に低下する現象、すなわち圧力損失が生じます。圧力損失は、システム全体の効率や安全性を評価する上で非常に重要な要素となります。 例えば、圧力損失が大きすぎると、冷却水が十分に循環せず、炉心の冷却が不十分になる可能性があります。また、圧力損失が急激に変化すると、配管や機器に大きな負荷がかかり、損傷に繋がる恐れもあります。そのため、二相流における圧力損失を正確に予測することは、原子力発電プラントの設計や運転において非常に重要です。しかし、二相流は気泡の大きさや分布、流れの速度など、様々な要因によって圧力損失が変化するため、その予測は容易ではありません。そこで、近年ではコンピュータシミュレーション技術の発展により、二相流の挙動をより詳細に解析することが可能になりつつあります。

項目 内容
二相流の定義 液体と気体が混ざり合った流れ
発生箇所 原子力発電プラントの冷却システムなど
具体例 沸騰水型原子炉(BWR)の炉心で水が沸騰し、蒸気と冷却水が混ざり合ったもの
二相流解析の重要性 二相流は挙動が複雑なため、専門的な知識や技術が必要
圧力損失 流れの抵抗によって圧力が徐々に低下する現象
システム全体の効率や安全性を評価する上で非常に重要
圧力損失の影響 – 冷却水の循環不足による炉心冷却の不十分
– 配管や機器への負荷増加による損傷リスク
圧力損失予測の難しさ 気泡の大きさや分布、流れの速度など、様々な要因によって圧力損失が変化するため
解決策 コンピュータシミュレーション技術の発展により詳細な解析が可能に

圧力損失と二相流増倍係数相関式

圧力損失と二相流増倍係数相関式

原子力発電プラントなど、気体と液体が混ざり合った状態である二相流を扱う際には、その流れに伴う圧力損失を正確に把握することが非常に重要です。圧力損失は、流体と配管内壁との間の摩擦、流体の重さによる影響、流れの速度変化に伴うエネルギー損失など、様々な要因が複雑に絡み合って生じます。
特に、配管内壁との摩擦によって生じる圧力損失は、配管の長さや形状、流体の速度、気体と液体の混合状態など、多くの要素に影響を受けるため、その評価は容易ではありません。
そこで、二相流における圧力損失、特に摩擦損失をより正確に予測するために、実験データに基づいた経験的な計算式が数多く提案されてきました。これらの計算式は、一般に二相流増倍係数相関式と呼ばれています。
二相流増倍係数相関式は、二相流における摩擦による圧力損失の勾配と、気体または液体どちらか一方のみが流れる場合の摩擦損失勾配の比を、無次元数などのパラメータを用いて表現したものです。この相関式を用いることで、比較実験を行いやすい単相流のデータから、複雑な挙動を示す二相流の圧力損失を推定することが可能となります。

二相流における圧力損失の重要性 圧力損失の要因 圧力損失評価の難しさ 解決策
原子力発電プラントのように気体と液体が混ざり合った二相流を扱う際には、圧力損失を正確に把握することが非常に重要 流体と配管内壁との摩擦、流体の重さ、流れの速度変化など、様々な要因が複雑に絡み合っているため 特に、配管内壁との摩擦による圧力損失は、配管の長さや形状、流体の速度、気体と液体の混合状態など、多くの要素に影響を受けるため、評価が容易ではない 実験データに基づいた経験的な計算式である二相流増倍係数相関式が数多く提案されている

代表的な相関式:Lockhart-Martinelli-Nelson法

代表的な相関式:Lockhart-Martinelli-Nelson法

二相流は、原子力発電所を含む様々なエネルギーシステムにおいて重要な役割を担っています。二相流とは、気体と液体のように異なる相が混ざり合って流れる状態を指し、その流れは複雑な挙動を示すため、正確に予測することが重要となります。

二相流における摩擦損失を評価する上で、様々な相関式が提案されていますが、その中でもLockhart-Martinelli-Nelson (LMN) 法は、その簡便さと適用範囲の広さから、広く用いられています。LMN法は、二相流における摩擦損失勾配を、液相のみが単相流として流れた場合の摩擦損失勾配に対する比率として表現します。この比率は、二相流増倍係数と呼ばれ、気液の密度比や粘性比、そして二相流の流量比から計算される無次元数、すなわちMartinelliパラメータの関数としてグラフ化されます。

LMN法の利点は、グラフを用いることで、比較的容易に二相流の摩擦損失を見積もることができる点です。しかし、LMN法は、水平円管内の流れを前提とした相関式であるため、適用範囲には限界があります。例えば、垂直管や傾斜管、異形管内流れ、あるいは流れ方向に変化する熱流束条件下など、より複雑な流れ場に対して適用する際には、注意が必要です。このような場合には、他の相関式を用いたり、数値計算による詳細な解析が必要となる場合があります。

項目 内容
二相流とは 気体と液体のように異なる相が混ざり合って流れる状態
二相流の重要性 原子力発電所を含む様々なエネルギーシステムにおいて重要な役割を担う

複雑な挙動を示すため、正確な予測が重要
LMN法 (Lockhart-Martinelli-Nelson) 二相流における摩擦損失を評価する相関式の一つ

簡便さと適用範囲の広さから広く用いられる
LMN法の特徴 二相流増倍係数 (液相単相流時の摩擦損失勾配に対する比率) を用いる

二相流増倍係数は、Martinelliパラメータ (密度比、粘性比、流量比から計算される無次元数) の関数としてグラフ化
LMN法の利点 グラフを用いることで、比較的容易に二相流の摩擦損失を見積もることができる
LMN法の限界 水平円管内の流れを前提としているため、適用範囲に限界がある

(例: 垂直管や傾斜管、異形管内流れ、流れ方向に変化する熱流束条件下など)
LMN法の限界を超える場合の対応 他の相関式を用いたり、数値計算による詳細な解析が必要

まとめ

まとめ

液体と気体のように、異なる状態の物質が混ざり合って流れる現象を二相流と呼びます。このような流れは、原子力発電所だけでなく、化学プラントや石油プラントなど、様々な産業分野で頻繁に遭遇します。 このようなプラントでは、配管内を流れる流体の圧力損失を正確に予測することが、プラント設計の効率化、円滑な運転、そして安全性の確保という観点から非常に重要になります。
二相流における圧力損失を評価する際、よく用いられるのが二相流増倍係数相関式と呼ばれるものです。これは、多数の実験データに基づいて得られた経験的な計算式であり、複雑な二相流の挙動を比較的簡単に評価できる便利なツールとして、産業界で広く活用されています。
しかしながら、万能な相関式は存在しません。 各相関式には、適用可能な流れのパターン(例えば、気泡流、スラグ流、環状流など)や、気体と液体の混合比率、配管の形状など、それぞれ適用範囲と限界があることを理解しておく必要があります。状況に応じて適切な相関式を選択し、必要に応じて数値流体力学(CFD)などのより詳細な解析手法を併用することで、より高精度な圧力損失予測が可能となります。そして、より安全で効率的なプラントの設計・運転を実現できるのです。

二相流とは 圧力損失評価方法 注意点
液体と気体など、異なる状態の物質が混ざり合って流れる現象。
原子力発電所、化学プラント、石油プラントなど、様々な産業分野で頻繁に遭遇する。
二相流増倍係数相関式がよく用いられる。
– 多数の経験データに基づいた計算式。
– 産業界で広く活用されている。
万能な相関式は存在しない。
– 適用可能な流れのパターン、気液混合比率、配管形状などに注意が必要。
– 状況に応じて適切な相関式を選択する。
– 必要に応じて数値流体力学(CFD)などの詳細な解析手法も併用する。