金属の腐食を防ぐ:異種金属接触腐食とは
電力を見直したい
先生、「異種金属接触腐食」って、違う種類の金属がくっついた時に起きる腐食のことですよね?
電力の研究家
そうだよ。よく知っているね! 電気が流れやすい水に浸かると、金属の種類によって電気が流れやすさが違うから、その間で電気が発生して腐ってしまうんだ。
電力を見直したい
でも、鉄と鉄みたいに同じ金属でも起こることってあるんですか?
電力の研究家
いい質問だね! 実は、同じ金属でも、作られ方や表面の状態が違うと、電気が流れやすさが少しだけ変わることがあるんだ。だから、同じ種類の金属でも「異種金属接触腐食」が起きることがあるんだよ。
異種金属接触腐食とは。
「異種金属接触腐食」は、原子力発電で使われる言葉の一つです。異なる種類の金属が電気を伝える液体に浸かると、金属の間で電圧の差が生まれます。すると、片方の金属はプラス、もう片方の金属はマイナスになり、プラス側の金属が腐食していきます。これを「異種金属接触腐食」と呼びます。鉄のように同じ種類の金属でも、その構造や表面の状態が違うと電圧の差が生まれるため、「異種金属接触腐食」が起こることがあります。
異種金属接触腐食とは何か
– 異種金属接触腐食とは何か異種金属接触腐食とは、読んで字のごとく、異なる種類の金属が接触した状態で、電気を通しやすい液体(電解質溶液)に浸かると、電流が発生し、片方の金属が腐食してしまう現象です。身近な例では、鉄と銅を海水に浸すと、鉄は錆びやすく、銅は錆びにくいという現象が起こります。これは、鉄と銅ではイオンになりやすさが異なるためです。鉄はイオン化傾向が高く、プラスの電気を帯びたイオンになりやすい性質を持っています。一方、銅はイオン化傾向が低く、イオンになりにくい性質です。そのため、鉄と銅が接触すると、鉄から銅へ電子が移動し、電流が発生します。この時、電子を失った鉄はプラスの電気を帯びたイオンになり、海水に溶け出していきます。これが鉄の腐食、つまり錆びです。反対に、電子を受け取った銅は、鉄から溶け出したプラスイオンと結びつき、錆として付着することがあります。このように、異種金属接触腐食は、金属のイオン化傾向の違いによって発生する電位差が原因で起こります。イオン化傾向の高い金属ほど腐食しやすく、イオン化傾向の低い金属は腐食しにくいため、異種金属を接触させる場合は、それぞれの金属のイオン化傾向を考慮する必要があります。
現象 | 詳細 |
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異種金属接触腐食 | 異なる種類の金属が接触し、電解質溶液に浸かることで、電流が発生し、片方の金属が腐食する現象。 |
例 | 鉄と銅を海水に浸すと、鉄が錆びて、銅は錆びにくい。 |
原因 | 金属のイオン化傾向の違いによる電位差。イオン化傾向の高い金属から低い金属へ電子が移動し、電流が発生する。電子を失った金属はイオン化し、溶け出す。 |
対策 | 異種金属を接触させる場合は、それぞれの金属のイオン化傾向を考慮する。 |
異種金属接触腐食のメカニズム
– 異種金属接触腐食のメカニズム異種金属接触腐食は、異なる種類の金属が接触した状態で電解質溶液に浸されると、電位差によって電流が発生し、腐食が促進される現象です。この現象は、例えるなら電池の仕組みによく似ています。金属はそれぞれイオン化傾向という、溶液中でイオンになりやすさを示す指標を持っています。異種金属が接触すると、イオン化傾向の高い金属は陽極として働き、電子を放出して陽イオンとなって溶液中に溶け出します。この時、放出された電子は、電気を通しやすい経路を通ってイオン化傾向の低い金属(陰極)へと移動します。陰極では、溶液中の水素イオンや酸素などが電子を受け取る還元反応が起こります。このように、異種金属接触腐食は陽極では金属が溶け出す反応、陰極では電子を受け取る反応が同時に進行することで発生します。そして、この反応は電子の移動が続く限り継続し、陽極側の金属の腐食が進行していくのです。
現象 | 詳細 |
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異種金属接触腐食 | 異なる種類の金属が接触した状態で電解質溶液に浸されると、電位差によって電流が発生し、腐食が促進される現象。 |
陽極における反応 | イオン化傾向の高い金属が陽極として働き、電子を放出して陽イオンとなって溶液中に溶け出す。金属が溶け出す反応。 |
陰極における反応 | イオン化傾向の低い金属が陰極として働き、溶液中の水素イオンや酸素などが電子を受け取る還元反応が起こる。電子を受け取る反応。 |
身近な異種金属接触腐食の例
– 身近な異種金属接触腐食の例異種金属接触腐食は、私たちの生活空間で意外と普通に見られる現象です。例えば、住宅の水道管を想像してみてください。水道管は、鉄製の管や銅製の管など、異なる金属を繋ぎ合わせて作られることがあります。このような箇所では、金属間の電位差によって電流が発生し、腐食が起こりやすくなります。これが異種金属接触腐食です。水道管の場合、腐食が進むと水漏れが発生し、生活に支障をきたす可能性があります。また、ベランダの手すりや門扉など、雨風にさらされる場所に設置された金属製の構造物にも、異種金属接触腐食は発生しやすいです。例えば、鉄製の支柱にアルミ製の装飾が取り付けられている場合、異なる金属の接触部分で腐食が進み、強度が低下する恐れがあります。このような腐食は、構造物全体の安全性を脅かす可能性もあり、注意が必要です。さらに、海を航行する船舶や海上に架かる橋梁といった大型構造物においても、異種金属接触腐食は深刻な問題を引き起こす可能性があります。特に海水は、真水に比べて電解質濃度が高いため、金属の腐食が加速しやすい環境です。定期的な点検や防食処理を適切に行わないと、構造物の劣化が進み、大事故に繋がる可能性も否定できません。
場所 | 異種金属接触腐食の例 | 影響 |
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住宅 | 鉄製の管と銅製の管を繋ぎ合わせた水道管 | 腐食が進むと水漏れが発生 |
住宅 | 鉄製の支柱にアルミ製の装飾を取り付けたベランダの手すりや門扉 | 腐食が進み、強度が低下、安全性を脅かす |
海 | 船舶や橋梁 | 電解質濃度の高い海水により金属の腐食が加速、構造物の劣化、大事故に繋がる可能性 |
異種金属接触腐食への対策
– 異種金属接触腐食への対策異種金属接触腐食は、異なる種類の金属が電気的に接続された状態で電解質溶液中に置かれることで発生する腐食現象です。この腐食を防ぐためには、いくつかの対策方法があります。まず、設計段階において、できる限りイオン化傾向の近い金属を組み合わせることが重要です。イオン化傾向とは、金属が水溶液中で陽イオンになりやすさを示す指標であり、イオン化傾向が近い金属同士を組み合わせることで、電位差を小さくし、腐食の発生を抑えることができます。どうしてもイオン化傾向の異なる金属を組み合わせる必要がある場合は、絶縁材を挟むことで、金属同士の直接的な接触を防ぐことができます。絶縁材としては、ゴムやプラスチックなどが用いられます。また、塗装やめっきなどの表面処理を施すことも有効な対策です。金属表面を塗装またはめっき処理することで、金属と電解質溶液との接触を遮断し、腐食の発生を抑制します。さらに、電気防食法を用いて腐食を抑制することも可能です。電気防食法には、犠牲陽極法と外部電源法の2種類があります。犠牲陽極法は、保護したい金属よりもイオン化傾向の高い金属を接続することで、保護する金属の腐食を抑制する方法です。この方法では、イオン化傾向の高い金属が優先的に腐食し、保護する金属の腐食を防止します。一方、外部電源法は、外部から電流を流すことで、保護する金属を陰極化し、腐食を抑制する方法です。これらの対策方法を適切に組み合わせることで、異種金属接触腐食を効果的に防ぐことができます。
対策方法 | 説明 |
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異種金属の接触回避 | イオン化傾向の近い金属を組み合わせることで、電位差を小さくし、腐食の発生を抑える。 |
絶縁 | ゴムやプラスチックなどの絶縁材を挟むことで、金属同士の直接的な接触を防ぐ。 |
表面処理 | 塗装やめっきにより金属と電解質溶液との接触を遮断する。 |
電気防食法 | – 犠牲陽極法:保護したい金属よりもイオン化傾向の高い金属を接続することで、保護する金属の腐食を抑制する。 – 外部電源法:外部から電流を流すことで、保護する金属を陰極化し、腐食を抑制する。 |