エネルギー安全保障と原子力発電
電力を見直したい
先生、原子力発電って石油危機と何か関係があるんですか?
電力の研究家
いい質問だね!実は、日本は過去に二度、石油が手に入りにくくなって、ものすごく困ったことがあったんだ。これを石油危機って言うんだけど、その時にエネルギーを石油に頼りすぎることの危険性が分かったんだ。
電力を見直したい
それで、石油の代わりに原子力発電を使うことにしたってことですか?
電力の研究家
その通り!石油危機をきっかけに、石油に変わるエネルギーとして原子力発電に力を入れるようになったんだよ。もちろん、原子力発電以外にも、太陽光や風力などの自然エネルギーも重要視されるようになったんだ。
石油危機とは。
「石油危機」という言葉は、原子力発電と深く関わっています。まず、第一次石油危機は1973年10月に起きたアラブ諸国とイスラエルの戦争がきっかけです。この戦争のせいで石油の値段が上がり、色々な物の値段も上がってしまいました。次に、第二次石油危機は1978年にイランで政変が起きたことがきっかけです。石油の需要と供給のバランスが崩れ、石油輸出国機構が原油価格をめちゃくちゃに操作したため、1979年に石油価格が爆発的に高騰しました。このように、過去2回の石油危機によって、日本の経済の弱点が明らかになりました。そこで、それまでバラバラだった石油に代わるエネルギー政策を、計画的に、集中的に進めるために、1980年から新しい体制が作られました。これが現在の国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の設立につながります。そして、2002年3月には、2010年度までに開発・導入を目指す石油代替エネルギーの種類と供給目標が政府によって決定されました。
過去の石油危機とエネルギー問題
1970年代、世界は二度の大規模な石油危機に直面しました。これは、私たち人類にとって、エネルギー資源の重要性と、その供給源の不安定さを改めて認識させられる出来事となりました。特に1973年の第一次石油危機は、中東戦争を背景に、産油国が原油の価格を操作したことで、世界の石油供給に大きな混乱が生じました。その結果、原油価格は以前の数倍にまで高騰し、日本を含む多くの国で深刻な経済混乱が発生しました。人々の生活にも大きな影響が出ました。物資不足や価格高騰が社会問題となり、省エネルギーが強く叫ばれるようになったのもこの頃からです。
続く1978年の第二次石油危機は、イラン革命による政情不安が原因でした。この危機により、再び原油価格が高騰し、世界経済は再び大きな打撃を受けました。日本では、石油への依存度が非常に高かったことから、特に大きな影響を受けました。この二度の石油危機は、日本経済の脆弱性を露呈させるとともに、エネルギー源の多角化と安定供給の確保が、国の将来を左右する重要課題であることを、私たちに突きつけました。この経験を教訓に、日本は石油に代わるエネルギーの開発と導入に積極的に取り組み始めました。原子力発電の開発も、その取り組みの一つです。
危機 | 時期 | 背景 | 影響 |
---|---|---|---|
第一次石油危機 | 1973年 | 中東戦争、産油国による原油価格操作 | 原油価格高騰、経済混乱、物資不足、省エネルギー意識の向上 |
第二次石油危機 | 1978年 | イラン革命による政情不安 | 原油価格高騰、世界経済への打撃、日本のエネルギー脆弱性露呈 |
石油代替エネルギーの推進
過去に幾度となく経験した石油危機は、日本にとって大きな痛手となり、エネルギーの安定供給の重要性を痛感させられる出来事となりました。この教訓から、日本はエネルギー安全保障の強化を国家的な課題として掲げ、石油に過度に依存したエネルギー構造からの脱却を図ってきました。
1980年には、石油代替エネルギーの開発・導入を総合的かつ計画的に推進するため、新エネルギー・産業技術総合開発機構、通称NEDOが設立されました。NEDOは、太陽光を電力に変える太陽光発電や、風の力を利用した風力発電、地球内部の熱を利用する地熱発電など、様々な再生可能エネルギーの研究開発や、実際に利用できる段階まで推し進めるための支援を行ってきました。
また、NEDOは、再生可能エネルギーの導入だけでなく、省エネルギー技術の開発や普及にも力を入れてきました。工場やオフィスビル、家庭などで消費するエネルギーを減らす技術を開発し、広く普及させることで、エネルギー効率の向上に取り組んできました。
これらの取り組みによって、日本はエネルギー源の多角化を進めるとともに、エネルギー消費の効率化も図ってきました。しかし、エネルギー安全保障の観点からは、依然として課題も残されています。
取り組み | 内容 | 目的 |
---|---|---|
新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) の設立 (1980年) | 太陽光発電、風力発電、地熱発電など、様々な再生可能エネルギーの研究開発、実用化支援 | 石油代替エネルギーの開発・導入促進 |
省エネルギー技術の開発・普及 | 工場、オフィスビル、家庭などで消費するエネルギーを減らす技術の開発と普及 | エネルギー効率の向上 |
原子力発電の役割
エネルギー資源の枯渇や地球温暖化が深刻化する中、地球全体のエネルギー政策において重要な役割を担っているのが原子力発電です。
原子力発電は、石油や石炭などの化石燃料を使用せず、ウランを燃料とすることで発電を行います。発電時に二酸化炭素を排出しないため、地球温暖化対策として非常に有効な手段と考えられています。また、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーと異なり、天候に左右されずに安定した電力を供給できる点も大きな利点です。
さらに、一度発電所が建設されれば、ウラン燃料は少量で長期間稼働できるため、エネルギーの安定供給という観点からも重要な役割を担います。
しかし、原子力発電には、解決すべき課題も存在します。発電に伴い発生する放射性廃棄物の処理や、事故発生時のリスクへの懸念は、原子力発電に対する不信感に繋がっています。これらの課題を克服するために、安全性向上に向けた技術開発や厳格な規制の運用など、たゆまぬ努力が続けられています。
メリット | デメリット |
---|---|
– 二酸化炭素を排出しないため、地球温暖化対策に有効 – 天候に左右されず安定した電力を供給可能 – ウラン燃料は少量で長期間稼働できるため、エネルギーの安定供給に貢献 |
– 放射性廃棄物の処理 – 事故発生時のリスク |
エネルギーミックスの最適化
エネルギー問題は、私たちが生活を営む上で欠かせないエネルギーの安定供給と、地球環境の保全という両面から、世界全体で取り組むべき喫緊の課題です。エネルギー資源の偏在は、国家間の経済格差や政治的な不安定さを招く要因となりかねません。また、地球温暖化は、気候変動による自然災害の増加や生態系への影響など、地球全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。さらに、世界人口の増加や経済発展に伴い、エネルギー需要は今後も増大していくと予想されます。これらの課題を克服し、持続可能な社会を実現するためには、それぞれのエネルギー源の特徴を理解し、最適なエネルギーミックスを構築していく必要があります。太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、地球環境への負荷が小さいという点で優れていますが、天候に左右されるという不安定さも持ち合わせています。一方、原子力発電は、二酸化炭素排出量の削減効果が高く、安定したエネルギー供給が可能ですが、安全性確保が重要な課題です。エネルギーミックスの最適化には、省エネルギー技術の開発や普及によるエネルギー消費量の削減も不可欠です。私たちは、あらゆる選択肢を検討し、安全性、安定供給、経済効率性、環境適合性などを総合的に判断しながら、バランスの取れたエネルギー政策を推進していく必要があります。
エネルギー源 | メリット | デメリット |
---|---|---|
再生可能エネルギー (太陽光発電、風力発電など) |
地球環境への負荷が小さい | 天候に左右されるため、エネルギー供給が不安定 |
原子力発電 | 二酸化炭素排出量削減効果が高い 安定したエネルギー供給が可能 |
安全性確保が課題 |