原子力発電の基礎:親物質とは?
電力を見直したい
先生、「親物質」って言葉がよくわからないんですけど、どういう意味ですか?
電力の研究家
そうだね。「親物質」はそれ自体は核分裂しないんだけど、原子炉の中で中性子っていうのを吸収すると、核分裂する物質に変わるんだ。例えば、ウラン238っていう親物質が中性子を吸収すると、プルトニウム239っていう核分裂する物質に変わるんだよ。
電力を見直したい
うーん、ちょっと難しいですね。 つまり、親物質自身は核分裂しないけど、あるものを吸収すると核分裂する物質に変わるってことですか?
電力の研究家
その通り!よく理解できたね。まさに、親物質はそれ自体はエネルギーを生み出さないけど、原子炉の中で中性子を吸収することで、エネルギーを生み出すことができる物質に変わるんだ。
親物質とは。
「親物質」という言葉は、原子力発電で使われる用語の一つです。ウラン238やトリウム232のように、それ自体は核分裂を起こさない物質のことを指します。しかし、原子炉などの中で中性子を吸収すると、プルトニウム239やウラン233といった核分裂を起こす物質に変わります。放射線を出すことで、例えばストロンチウム90がイットリウム90に変わるような「親核種」とは異なる意味を持つ言葉なので、注意が必要です。
親物質:核燃料サイクルのカギ
原子力発電の燃料として知られるウランですが、天然に存在するウランのすべてが、そのまま発電に利用できるわけではありません。発電に利用できるウランはウラン235と呼ばれる種類で、天然ウランの中にわずか0.7%しか含まれていません。残りの大部分はウラン238と呼ばれる種類で、こちらはそのままでは発電に利用することができません。
しかし、このウラン238は、原子炉の中で中性子を吸収することによって、別の物質へと変化します。その変化した物質が、プルトニウム239と呼ばれるものです。プルトニウム239はウラン235と同じように核分裂を起こすことができるため、燃料として利用することができます。
このように、ウラン238は、核分裂を起こしてエネルギーを生み出すことはできませんが、中性子を吸収することによって燃料となるプルトニウム239に変化することから、「親物質」と呼ばれています。ウラン238のような親物質の存在は、限られたウラン資源を有効に活用する上で、非常に重要な役割を担っています。ウラン238からプルトニウム239を生成する技術と、使用済み燃料からプルトニウムやウランを取り出して再利用する技術を組み合わせることで、資源の有効利用を図り、エネルギーの安定供給に貢献することができます。
ウランの種類 | 特徴 | 発電への利用 |
---|---|---|
ウラン235 | 天然ウラン中に0.7%しか存在しない | 核分裂を起こすことができるため、燃料として利用可能 |
ウラン238 | 天然ウランの大部分を占める そのままでは発電に利用できない 中性子を吸収するとプルトニウム239に変化する |
燃料となるプルトニウム239の親物質として重要 |
プルトニウム239 | ウラン238が中性子を吸収して変化した物質 | ウラン235と同じように核分裂を起こすことができるため、燃料として利用可能 |
ウラン238からプルトニウム239へ:親物質の変身
原子力発電所の中心にある原子炉では、燃料としてウランが使われています。ウランには、核分裂を起こしやすいウラン235と、そうでないウラン238という種類があります。ウラン235は、核分裂によってエネルギーを生み出すため、発電に直接利用されます。一方、ウラン238は、それ自体は核分裂を起こしにくいため、発電には不向きと考えられていました。
しかし、原子炉の中で興味深い現象が起こります。ウラン238が、原子炉内を飛び交う中性子を吸収すると、プルトニウム239という新しい物質に変化するのです。驚くべきことに、このプルトニウム239は、ウラン235と同じように核分裂を起こし、エネルギーを生み出す能力を持っています。つまり、発電に直接利用できないと思われていたウラン238が、原子炉内で中性子を吸収することによって、発電に利用可能なプルトニウム239に生まれ変わるのです。
このように、それ自体は核分裂性を示さない物質でも、中性子を吸収することで核分裂性の物質に変換されることがあります。このような物質を「親物質」と呼び、ウラン238はプルトニウム239の親物質にあたります。原子炉内では、このような親物質の変身を通して、核燃料が生成されるという、まるで錬金術のような現象が起こっているのです。
ウランの種類 | 核分裂性 | 発電への利用 | 備考 |
---|---|---|---|
ウラン235 | あり | 直接利用される | 核分裂によってエネルギーを生み出す |
ウラン238 | なし | 間接的に利用される | 中性子を吸収してプルトニウム239に変換されることで核燃料となる |
プルトニウム239 | あり | 直接利用される | ウラン238が中性子を吸収して生成される |
トリウム232:もう一つの親物質
原子力発電の燃料として、ウラン235がよく知られていますが、ウラン238も、核分裂はしないものの、原子炉内で変化することで燃料となりうる「親物質」と呼ばれる物質です。そして、ウラン238以外にも、トリウム232と呼ばれる物質も、親物質としての性質を持っていることが知られています。
トリウム232は、ウラン238と同様に、単独では核分裂を起こすことはできません。しかしながら、原子炉内において中性子を吸収すると、トリウム232は徐々に原子核変換を起こし、最終的にウラン233という物質に変化します。このウラン233は、ウラン235やプルトニウム239と同じように核分裂を起こす性質を持っているため、原子力発電の燃料として利用することが可能となります。
トリウム232は、ウラン238と比べて埋蔵量が多く、資源としての将来性も高い点が期待されています。また、トリウム232を燃料とする原子炉では、プルトニウム239の生成量が抑えられるなど、核拡散防止の観点からも利点があるとされています。このように、トリウム232は、将来の原子力発電を支える重要な資源として、さらなる研究や技術開発が進められています。
項目 | ウラン238 | トリウム232 |
---|---|---|
核分裂の可否 | 不可(親物質) | 不可(親物質) |
原子炉内での変化 | 中性子吸収によりウラン239へ変化 →β崩壊を繰り返してプルトニウム239へ変化 |
中性子吸収によりトリウム233へ変化 →β崩壊を繰り返してウラン233へ変化 |
変化後の物質の性質 | プルトニウム239は核分裂可能 | ウラン233は核分裂可能 |
埋蔵量 | – | ウラン238より豊富 |
その他 | – | プルトニウム239の生成量が少ない |
資源の有効活用:親物質の重要性
地球上に存在する資源を有効に活用することは、私たちの未来にとって非常に重要です。特に、エネルギー資源は私たちの生活や経済活動を支える基盤であり、その有効活用は喫緊の課題となっています。このような状況下で、原子力発電は資源の有効活用という観点から再び注目されています。原子力発電で利用されるウランには、核分裂を起こしやすいウラン235と、核分裂を起こしにくいウラン238が存在します。天然ウランのうち、ウラン235はわずか0.7%程度しか含まれていません。しかし、ウラン238は核分裂を起こしやすいプルトニウム239に変換することができるため、資源の有効活用という観点から非常に重要です。このウラン238のように、核分裂を起こしにくい物質でも、中性子を吸収して核分裂しやすい物質に変換できるものを親物質と呼びます。ウラン238以外にも、トリウム232という物質も親物質として知られています。トリウム232はウランよりも豊富に存在し、中性子を吸収することでウラン233に変換され、エネルギーを生み出すことができます。このように、親物質の存在は、限られた資源をより有効に活用し、エネルギー資源の確保に貢献する可能性を秘めています。特に、トリウム232はウランよりも埋蔵量が多いため、将来のエネルギー問題解決への貢献が期待されています。原子力発電の持続可能性を高めるためには、これらの親物質を有効活用することが重要と言えるでしょう。
親物質 | 特徴 | 変換後の物質 |
---|---|---|
ウラン238 | 天然ウランの約99.3%を占める 核分裂を起こしにくい |
プルトニウム239 (核分裂しやすい) |
トリウム232 | ウランよりも豊富に存在する 核分裂を起こしにくい |
ウラン233 (核分裂しやすい) |