ふげん:日本の原子力開発を支えた原型炉
電力を見直したい
『ふげん』って原子力発電の用語で出てきたんですけど、どんなものかよく分かりません。教えてください。
電力の研究家
「ふげん」は、福井県敦賀市にあった原子力発電所のことだよ。新型転換炉(ATR)と呼ばれる種類の発電炉で、プルトニウムを燃料に使うことができるのが特徴だったんだ。
電力を見直したい
プルトニウムを使えるって、他の原子力発電所とは違うんですか?
電力の研究家
そうなんだ。「ふげん」は、プルトニウムを燃料として使う技術を研究するために作られた発電所だったんだよ。日本の独自の技術が使われていて、プルトニウム利用技術の確立に貢献したんだよ。
ふげんとは。
「ふげん」は、福井県敦賀市にあった原子力発電所の名前です。この発電所は、「重水」と呼ばれる特殊な水を使って原子炉の運転を制御し、「軽水」と呼ばれる普通の水で蒸気を作り出す、「重水減速沸騰軽水冷却型」という、当時としては新しいタイプの原子炉でした。このタイプは「新型転換炉」とも呼ばれています。
「ふげん」は、動力炉・核燃料開発事業団(現在は日本原子力研究開発機構)によって建設されました。原子炉の熱出力は557メガワット、発電量は165メガワットで、燃料には、濃縮ウランと天然ウランに加えて、プルトニウムを混ぜたものを使用していました。このプルトニウムを混ぜた燃料は、「プルトニウム富化天然ウラン燃料」と呼ばれています。
「ふげん」は、プルトニウムを燃料として使う技術を確立するため、日本独自の設計が数多く採用されました。たとえば、使用済みの燃料からプルトニウムを取り出して再利用する「プルトニウム自給サイクル」や、燃料を三層の円周上に配置する特殊な構造などが挙げられます。
「ふげん」は、1978年5月に原子炉が初めて起動し、1979年3月から本格的な運転を開始しました。その後、燃料や材料の開発、運転や保守の技術向上など、様々な技術開発を行いながら、プルトニウム利用技術の確立に大きく貢献しました。そして、2003年に運転を終了しました。現在は、約10年間の準備期間を経て、原子炉を解体する作業が進められており、30年以内の完了を目指しています。
「ふげん」という名前は、仏教の「普賢菩薩」に由来しています。普賢菩薩は、知恵を象徴する「文殊菩薩」とともに、仏様の脇に仕える菩薩として知られており、白い象に乗って描かれることが多いです。
「ふげん」とは
– 「ふげん」とは「ふげん」は、福井県敦賀市に建設された、実際に発電を行うことを目的としながら、同時に新しい技術の実証炉としての役割も担った原子炉です。正式名称は「新型転換炉ふげん」といい、1979年から2003年までの24年間にわたり運転されました。一般的な原子炉では軽水と呼ばれる普通の水を使用しますが、「ふげん」は重水と呼ばれる、水素よりも重い重水素を多く含む特殊な水を使用するのが大きな特徴です。重水は中性子を減速させる能力が高いため、天然ウランを燃料として利用し、プルトニウムを生成する転換炉の運転に適しています。「ふげん」はこのような特性を持つ重水を利用することで、ウラン資源の有効利用や、将来のエネルギー源として期待される高速増殖炉の技術開発に貢献することを目指していました。「ふげん」は電力会社ではなく、動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)によって建設、運転されました。これは、「ふげん」が単なる発電施設ではなく、国のエネルギー政策の一環として、原子力技術の高度化を目的とした重要な国家プロジェクトだったことを示しています。24年間の運転期間を経て、「ふげん」は2003年にその役割を終え、現在は廃炉作業が進められています。
項目 | 内容 |
---|---|
名称 | 新型転換炉ふげん |
所在地 | 福井県敦賀市 |
運転期間 | 1979年~2003年 (24年間) |
目的 |
|
特徴 | 重水(重水素を多く含む水)を使用 |
重水の利点 | 中性子を減速させる能力が高く、天然ウランを燃料として利用し、プルトニウムを生成する転換炉の運転に適している。 |
ふげんの役割 |
|
建設・運転機関 | 動力炉・核燃料開発事業団 (現 日本原子力研究開発機構) |
備考 | 国のエネルギー政策の一環として、原子力技術の高度化を目的とした国家プロジェクト |
現状 | 2003年に運転終了、現在廃炉作業中 |
「ふげん」の特徴
「ふげん」は新型転換炉(ATR)という種類に分類される原子炉で、いくつかの点で従来の原子炉とは異なる特徴を持っていました。最大の特徴は、中性子を減速させる物質として、減速材に重水を使用していた点です。重水は普通の水と比べて中性子の速度を落とす効果が高く、ウラン燃料をより効率的に利用することが可能となります。そのため、ウラン資源を有効活用する上で重要な役割を担っていました。
また、「ふげん」はプルトニウムを燃料の一部として使用していました。これは、「ふげん」が、使用済みの燃料から再び核燃料を作り出すという「核燃料サイクル」を実現するための実証炉としての役割も担っていたためです。 「ふげん」は、将来の原子力発電のあり方を探るための実験炉としての側面も持ち合わせていたのです。
「ふげん」は、福井県敦賀市に建設され、1978年から2003年まで運転されました。その間、新型転換炉の技術実証や核燃料サイクルの研究開発など、日本の原子力開発において重要な役割を果たしました。
項目 | 内容 |
---|---|
原子炉の種類 | 新型転換炉(ATR) |
減速材 | 重水 – 中性子の減速効果が高く、ウラン燃料をより効率的に利用可能 |
燃料 | ウラン、プルトニウム |
役割 | – ウラン資源の有効活用 – 核燃料サイクルの実証炉 – 将来の原子力発電のあり方を探るための実験炉 |
運転期間 | 1978年~2003年 |
建設地 | 福井県敦賀市 |
「ふげん」の役割
「ふげん」は、福井県敦賀市に建設された原子力発電所であり、発電だけを目的とするのではなく、日本の未来の原子力利用のために、新しい技術の開発や実証を行うという重要な役割を担っていました。
まず、「ふげん」は、ウラン燃料から生成されるプルトニウムを燃料として利用する、「プルサーマル」と呼ばれる技術の実証炉として建設されました。プルトニウムはウランよりも資源量が豊富であるため、これを有効活用することは、日本のエネルギー安全保障の観点からも非常に重要です。「ふげん」での長年の運転経験は、プルサーマル技術の確立に大きく貢献しました。
また、「ふげん」では、燃料や原子炉内の材料を長期間使用した場合の劣化や安全性の評価、運転や保守に関する技術の向上など、数多くの研究開発が行われました。これらのデータや経験は、その後の原子力発電所の設計や運転に活かされ、日本の原子力技術の進歩に大きく貢献しました。
このように「ふげん」は、単なる発電所ではなく、日本の原子力技術の未来を切り拓くための、重要な実験炉としての役割を担っていたと言えるでしょう。
目的 | 内容 | 意義 |
---|---|---|
プルサーマル技術の実証 | ウラン燃料から生成されるプルトニウムを燃料として利用する技術の実証炉として建設。 | プルトニウムの有効活用による日本のエネルギー安全保障の観点からの貢献。プルサーマル技術確立への貢献。 |
原子力技術の研究開発 | 燃料や原子炉内の材料の長期間使用における劣化や安全性の評価、運転や保守に関する技術の向上など。 | データや経験がその後の原子力発電所の設計や運転に活かされ、日本の原子力技術の進歩に貢献。 |
「ふげん」の成果
「ふげん」は、福井県敦賀市に位置し、日本で初めてプルトニウムを燃料として発電を行う実証炉として、1978年に運転を開始しました。24年間にわたる運転期間中、大きなトラブルに見舞われることなく、安定して電力を供給し続けました。
「ふげん」の最大の成果は、プルトニウム燃料の使用に関する貴重なデータを取得し、日本の核燃料サイクル技術の確立に大きく貢献したことです。プルトニウムはウラン燃料の使用済み燃料から取り出すことができるため、資源の有効利用という観点から重要な燃料です。「ふげん」での運転経験を通じて、プルトニウム燃料の製造、取扱、そして発電における安全性を確認し、その後の実用化に向けた技術基盤を築きました。
さらに、「ふげん」は発電のみならず、運転や保守の技術開発の場としても重要な役割を果たしました。例えば、原子炉の定期検査に欠かせない遠隔操作技術は、「ふげん」で開発が進められ、その後の原子力発電所の安全性向上に役立てられています。このように「ふげん」で培われた技術は、その後の原子力発電所の建設や運転に活かされ、日本の原子力技術の進歩に大きく貢献したと言えるでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
名称 | ふげん |
所在地 | 福井県敦賀市 |
運転開始年 | 1978年 |
運転期間 | 24年間 |
燃料 | プルトニウム |
主な成果 |
|
貢献 |
|
「ふげん」のその後
福井県敦賀市に位置していた高速増殖炉「ふげん」は、1978年から2003年までの25年間、夢の原子炉として大きな期待を背負い、運転を続けました。しかし、時代の流れと共に、その役割を終え、2003年に運転を終了しました。現在は、原子炉を安全かつ確実に解体していくための廃止措置が進められています。
廃止措置とは、原子炉を解体し、取り出した放射性物質を含む機器や建物を適切に処理・処分していく、長期間にわたる複雑な作業です。
「ふげん」の場合、廃止措置は大きく4つの段階に分けて進められます。まずは、原子炉内の燃料や冷却材であるナトリウムを取り出す作業が行われます。次に、原子炉周辺の機器や配管などを解体していきます。そして、原子炉本体の解体へと進み、最後に建物を解体して更地にすることで、すべての工程が完了します。
「ふげん」の廃止措置は、単に一つの原子炉を解体するだけではありません。将来、他の原子力発電所が寿命を迎えた際に必要となる技術開発の場としての重要な意味も持っています。「ふげん」で得られた経験や技術は、将来の原子力発電所の廃止措置をより安全かつ効率的に進めるための貴重な財産となるでしょう。
高速増殖炉「ふげん」 | 概要 |
---|---|
運転期間 | 1978年 – 2003年 (25年間) |
現在の状況 | 廃止措置作業中 |
廃止措置の目的 | 原子炉を安全かつ確実に解体し、放射性物質を含む機器や建物を適切に処理・処分する。 |
廃止措置の段階 | 1. 燃料とナトリウムの取り出し 2. 周辺機器・配管の解体 3. 原子炉本体の解体 4. 建物の解体 |
「ふげん」廃止措置の意義 | 将来の原子力発電所の廃止措置に必要な技術開発の場としての役割 |
「ふげん」の名前の由来
新型転換炉ふげん、その独特な名前は、仏教における重要な菩薩である「普賢菩薩」に由来しています。普賢菩薩は、人々に限りない慈悲を注ぎ、その智慧の光で迷える者を悟りの道へと導く存在として知られています。
「ふげん」という原子炉には、この普賢菩薩のように、人々の暮らしを豊かにし、明るい未来を創造するという願いが込められています。原子力は未知の力であり、その平和利用には大きな期待と責任が伴います。人々の幸福のために、この新しい力を賢く使い、未来を切り開いていきたいという、開発者たちの熱い思いが「ふげん」という名前に凝縮されているのです。
項目 | 内容 |
---|---|
名称 | 新型転換炉ふげん |
由来 | 普賢菩薩 |
願い | 人々の暮らしを豊かにし、明るい未来を創造する |
特徴 | 未知の力である原子力を平和利用し、人々の幸福のために賢く使う |