革新炉PRISM:安全と効率性を両立
電力を見直したい
先生、この文章に出てくる『出力138MWeの原子炉モジュール3基』っていうのは、どういう意味ですか?
電力の研究家
いい質問だね。『モジュール』っていうのは、簡単に言えば「部品」みたいなものだと考えていいよ。原子力発電所の場合、この部品の中に原子炉などが含まれているんだ。PRISMは、138MWeの電気を発電できるモジュールを3つ組み合わせることで、より大きな電気を発電できるようになっているんだよ。
電力を見直したい
なるほど。じゃあ、3つ組み合わせると電気が3倍になるんですか?
電力の研究家
その通り!138MWeのモジュールが3つだから、合計で414MWeの電気を発電できることになるね。PRISMはこの414MWeの組み合わせを『パワーブロック』と呼んでいて、さらに2つのパワーブロックを組み合わせることで、もっと大きな発電所を作ることができるんだ。
PRISMとは。
「ピー・アール・アイ・エス・エム」という原子力発電の言葉は、アメリカのジー・イー社が出したもので、重いものが下に落ちる力や、空気や水が高いところから低いところへ自然と動く力といった、当たり前の物理の法則を安全に使うためのしくみにした、速いスピードで動く原子炉のことです。この原子炉は、アメリカエネルギー省が進めている、エー・エル・エム・アール/アイ・エフ・アールの元となるものでもあります。ピー・アール・アイ・エス・エムは、少しでも安く電気を作り出すために、1基あたり138メガワットの電気を起こせる原子炉を3基まとめて、ひとつの発電機となるように作られています(3基で414メガワット)。つまり、この発電機が2つあれば、合わせて828メガワットの電気を起こせることになります。燃料には、急に変化が起きてもバラバラになりにくい金属が使われています。原子炉の容器は、直径が6.7メートル、高さがおよそ20メートルで、そこから出てくる時の温度は485度です。また、原子炉で生まれた熱を冷ますためには、原子炉の容器や蒸気を発生させる装置の外側を、自然の風の流れで冷やすしくみになっています。
次世代原子炉の旗手
原子力発電は、大量のエネルギーを安定して供給できる技術として、将来のエネルギー源の一つとして期待されています。しかし、従来の原子力発電には、事故時の安全性や放射性廃棄物の処理など、解決すべき課題も残されています。これらの課題を克服し、より安全で効率的な原子力発電を実現するため、世界中で次世代原子炉の開発が進められています。
そうした次世代原子炉の一つとして期待を集めているのが、PRISM (Power Reactor Innovative Small Module)です。PRISMは、革新的な設計と高い安全性を兼ね備えた高速炉として注目されています。従来の原子炉とは異なり、PRISMは冷却材に液体金属ナトリウムを使用しています。ナトリウムは熱伝導率が高いため、原子炉を小型化できるだけでなく、より高い温度で運転することが可能です。これにより、発電効率が向上し、より多くのエネルギーを生み出すことができます。また、PRISMは、炉心損傷などの事故が発生した場合でも、自然の力によって冷却できる受動的安全システムを採用しており、安全性にも優れています。
PRISMは、従来の原子力発電が抱える課題を克服し、より安全で高効率なエネルギー供給を実現する可能性を秘めた原子炉として、今後の開発の進展が期待されています。
項目 | 内容 |
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概要 | 原子力発電は将来期待されるエネルギー源だが、安全性や廃棄物処理などの課題もある。次世代原子炉の開発が進んでおり、その一つがPRISM。 |
PRISMの特徴 |
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期待される効果 | 従来の原子力発電の課題を克服し、安全で高効率なエネルギー供給を実現 |
自然の力を利用した安全性
– 自然の力を利用した安全性原子力発電所において、安全性の確保は最も重要な課題です。革新型炉であるPRISMは、その安全性を高めるために、自然の力を巧みに利用しています。従来の原子炉では、原子炉を冷却し続けるために、冷却材を循環させるポンプが不可欠でした。しかし、このポンプは電力によって駆動されるため、停電時などには冷却機能が停止してしまうリスクがありました。一方、PRISMでは冷却材に液体金属を使用し、自然循環によって冷却材を循環させる設計になっています。これは、温められた液体金属は密度が低くなって上昇し、冷やされた液体金属は密度が高くなって下降するという、自然の法則を利用したものです。そのため、ポンプのような動力源を必要とせず、冷却材の循環が維持されます。さらに、PRISMは、万が一、炉内で異常な温度上昇が起きた場合でも、重力を利用して安全を確保する仕組みを備えています。炉心の温度が異常に上昇すると、制御棒を支えている機構が熱で溶け始めます。すると、制御棒は自身の重さによって炉心に落下し、核分裂反応を抑制します。このようにPRISMは、電力や人為的な操作に頼ることなく、自然の法則に基づいた安全確保システムを構築しているため、より高い安全性が期待されています。
特徴 | 説明 |
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冷却材の循環 | 従来型原子炉とは異なり、PRISMは冷却材に液体金属を使用し、自然循環によって冷却材を循環させる。これは、温められた液体金属は密度が低くなって上昇し、冷やされた液体金属は密度が高くなって下降するという、自然の法則を利用したもので、ポンプのような動力源を必要としない。 |
異常時における安全確保 | 炉内で異常な温度上昇が起きた場合、重力によって制御棒が炉心に落下し、核分裂反応を抑制する仕組みを備えている。 |
モジュール構造による経済性向上
電力供給の安定化や地球温暖化対策の切り札として、原子力発電への期待が高まっています。その中でも、革新的な設計思想を持つ「PRISM」は、従来型原子炉の課題を克服し、より安全で経済的な電力供給を実現する可能性を秘めています。
PRISMの最大の特徴は、出力138MWeの原子炉モジュールを3基組み合わせたパワーブロックを建設する点です。このモジュール構造は、従来の大規模な原子力発電所とは異なり、工場で主要な機器を一体成型して輸送・設置するため、建設期間の大幅な短縮とコスト削減が可能になります。
さらに、複数のモジュールを組み合わせることで、発電所の規模を需要に合わせて柔軟に変えられることも大きなメリットです。例えば、需要の少ない地域では1つのモジュールで運転を開始し、需要の増加に合わせてモジュールを追加していくことで、初期投資を抑えながら、段階的に発電能力を増強できます。
このように、モジュール構造を採用したPRISMは、従来型原子炉と比較して、建設期間の短縮、コスト削減、規模の柔軟性といった経済的なメリットを兼ね備えています。この経済性の高さは、原子力発電の普及を促進する上で、大きな原動力となるでしょう。
項目 | 内容 |
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名称 | PRISM |
特徴 | 出力138MWeの原子炉モジュールを3基組み合わせたパワーブロック構造 |
メリット | 1. 工場での一体成型による建設期間の短縮とコスト削減 2. モジュール追加による発電所の規模の柔軟性 3. 需要に合わせて段階的に発電能力を増強可能 |
効果 | 原子力発電の普及促進 |
高速炉と金属燃料
– 高速炉と金属燃料高速炉とは、中性子を減速させずに核分裂反応を起こす原子炉です。このタイプの原子炉は、ウラン燃料をより効率的に利用できるだけでなく、プルトニウムを燃料として使用することも可能です。高速炉の一つであるPRISMは、これらの利点に加え、金属燃料を採用している点が特徴です。従来の原子炉では、燃料として酸化物燃料が主に使用されてきました。一方、PRISMで採用されている金属燃料は、過度の温度変化が生じた場合でも形状を安定的に維持できるという特性を持っています。これは、原子炉の運転において、万が一の異常事態が発生した場合でも、燃料の溶融や破損といったリスクを抑え、高い安全性を確保できることを意味します。さらに、PRISMのような高速炉は、核燃料サイクル全体の効率を高め、放射性廃棄物の発生量抑制にも貢献します。高速炉は、使用済み燃料中に含まれるウランやプルトニウムを再処理し、燃料として再び利用する、いわゆる核燃料サイクルを閉じるために不可欠な技術です。従来の原子炉では処理が難しいプルトニウムを燃料として利用できるため、資源の有効活用と放射性廃棄物の減容化の両面から期待されています。このように、PRISMは、高速炉技術と金属燃料という革新的な技術を組み合わせることで、エネルギー問題と環境問題の解決に大きく貢献できる可能性を秘めていると言えるでしょう。
項目 | 内容 |
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炉型 | 高速炉 – 中性子を減速させずに核分裂反応を起こす – ウラン燃料をより効率的に利用可能 – プルトニウムを燃料として使用可能 |
PRISMの特徴 |
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高速炉のメリット |
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PRISMの将来性 | 高速炉技術と金属燃料という革新的な技術により、エネルギー問題と環境問題の解決に貢献できる可能性 |
開発の現状と今後の展望
– 開発の現状と今後の展望現在、世界のエネルギー事情は大きな転換期を迎えており、地球温暖化対策やエネルギー安全保障の観点から、原子力発電への期待が再び高まっています。その中でも、革新的な原子炉として注目されているのが、米国で開発が進められているPRISMです。PRISMは、従来の原子炉とは異なるいくつかの特徴を持っています。まず、冷却材に液体金属を使用している点が挙げられます。液体金属は熱伝導率が高いため、より小型で効率的な原子炉の設計が可能となります。また、PRISMは、燃料として使用済みのウランやプルトニウムを再利用することができるため、核廃棄物の減容化にも大きく貢献すると期待されています。現在、PRISMは米国エネルギー省の主導のもと、GE社を中心に開発が進められています。これまでの研究開発により、安全性や経済性に関する基礎データは取得されつつありますが、実用化に向けては、さらなる技術開発や実証炉の建設が不可欠です。PRISMの実用化には、まだ多くの課題が残されていますが、その革新的な技術は、将来の原子力発電のあり方を大きく変える可能性を秘めています。世界各国が協力して研究開発を進めることで、PRISMの実用化を加速し、より安全で持続可能なエネルギーシステムの構築に貢献していくことが期待されます。
項目 | 内容 |
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現状と展望 | – 世界のエネルギー事情は転換期 – 地球温暖化対策やエネルギー安全保障の観点から原子力発電への期待が高まっている – 革新的な原子炉としてPRISMが注目されている |
PRISMの特徴 | – 冷却材に液体金属を使用 – 高い熱伝導率により小型化・高効率化を実現 – 使用済みウラン・プルトニウムの再利用 – 核廃棄物の減容化に貢献 |
PRISMの開発状況 | – 米国エネルギー省主導のもと、GE社を中心に開発中 – 安全性・経済性に関する基礎データ取得 – 実用化にはさらなる技術開発と実証炉建設が必要 |
PRISMへの期待 | – 将来の原子力発電を変える可能性 – 世界各国が協力して研究開発を進めることで、実用化を加速 – より安全で持続可能なエネルギーシステム構築への貢献 |