マグノックス炉:イギリス生まれの原子炉
電力を見直したい
『マグノックス炉』って、どんな原子炉のことですか?
電力の研究家
マグノックス炉は、イギリスで開発された原子炉で、日本では東海炉1号炉がその例です。特徴は、核燃料の被覆材にマグノックスという特別な素材を使っている点です。
電力を見直したい
マグノックスって、どんな素材なんですか?
電力の研究家
マグノックスは、主な成分がマグネシウムで、酸化しにくいという特徴を持っています。原子炉の燃料を包む被覆材として、とても重要な役割を果たします。
マグノックス炉とは。
「マグノックス炉」って言葉を原子力発電の分野で使いますが、これは、核燃料を包む材料に「マグノックス」っていうのを使った、ガスで冷やすタイプの原子炉のことです。この呼び名は、イギリスで改良された「コルダーホール炉」って呼ばれるものに対して、主に用いられています。ちなみに、日本原子力発電の東海1号炉も、このマグノックス炉の一種です。
で、そのマグノックスっていうのは、マグネシウムをメインにした合金で、ちょっぴりアルミニウムやベリルウムなんかが混ぜてあります。名前の由来は、英語で「酸化しないマグネシウム」っていう意味なんですって。このタイプの原子炉は、燃料に天然ウランを、スピードを落とす材料や反射させる材料に黒鉛を、そして冷やすためには炭酸ガスを使っています。
マグノックス炉とは
– マグノックス炉とはマグノックス炉は、イギリスで開発された原子炉の一種です。原子炉は大きく分けて、炉心の核分裂反応を制御するための減速材と、核燃料を包む被覆材の種類によって分類されます。マグノックス炉は、減速材に黒鉛、被覆材にはマグノックスと呼ばれるマグネシウム合金を使用していることが最大の特徴です。このマグノックスという名前は、「酸化しないマグネシウム」という意味の英語表現「Magnox」に由来しています。マグネシウムは本来、空気中で容易に酸化してしまう物質ですが、マグノックスはアルミニウムやベリリウムなどを添加することで、酸化を防ぐ性質を高めた合金です。マグノックス炉は、世界で初めて商業用発電に成功した原子炉である改良型コルダーホール炉としても知られています。1956年にイギリスで運転を開始したコルダーホール炉は、その後の原子力発電所の発展に大きく貢献しました。日本では、日本原子力発電の東海炉1号炉がマグノックス炉にあたり、1966年から1998年まで運転されていました。東海炉は、日本における原子力発電の黎明期を支えた重要な原子炉と言えるでしょう。マグノックス炉は、現在では新型の原子炉に比べて熱効率が低いことなどから、新規の建設は行われていません。しかし、その歴史的な意義や技術的な特徴から、原子力開発の重要な一歩として、現在も語り継がれています。
項目 | 内容 |
---|---|
炉型 | マグノックス炉 |
減速材 | 黒鉛 |
被覆材 | マグノックス(酸化しないマグネシウム合金) |
特徴 | 世界で初めて商業用発電に成功した原子炉 |
代表例 | – 改良型コルダーホール炉(イギリス、1956年運転開始) – 東海炉1号炉(日本、1966年-1998年運転) |
現状 | 新型炉に比べ熱効率が低いため、新規建設は行われていない |
燃料と材料
– 燃料と材料原子力発電を行うためには、核分裂の連鎖反応を制御し、エネルギーを取り出す必要があります。マグノックス炉は、この反応の燃料に天然ウランを使用しています。ウランは自然界に存在する元素で、特別な処理をせずにそのまま燃料として利用できるという利点があります。マグノックス炉では、燃料であるウラン燃料棒は黒鉛で覆われています。黒鉛は炭素の結晶であり、熱に強く、中性子の減速・反射に適した性質を持っているため、原子炉の重要な役割を担っています。具体的には、黒鉛は減速材として機能し、ウラン燃料から放出される高速中性子の速度を下げる役割を果たします。中性子の速度を下げることで、ウランの原子核により多くの中性子が吸収されやすくなり、安定した核分裂の連鎖反応を維持することができます。さらに、黒鉛は反射材としても機能し、炉心から外部に逃げようとする中性子を反射し、再び炉心に戻す役割も担います。これにより、中性子が炉心内で効率的に利用され、核分裂反応を維持することができます。このように、マグノックス炉では天然ウランと黒鉛という材料の特性を活かすことで、効率的な原子力発電を実現しています。
構成要素 | 説明 |
---|---|
ウラン燃料棒 | 核分裂の燃料。天然ウランを使用。 |
黒鉛 | 炭素の結晶。 ・減速材として中性子の速度を下げ、ウランへの吸収を促進。 ・反射材として炉心から逃げる中性子を反射し、炉心内での利用効率を高める。 |
冷却材の特徴
– 冷却材の特徴原子力発電所では、原子核分裂の際に発生する莫大な熱を、安全かつ効率的に取り除く必要があります。この重要な役割を担うのが冷却材です。冷却材は、原子炉内で発生した熱を吸収し、タービンを回して発電するシステムへと運びます。マグノックス炉と呼ばれるタイプの原子炉では、冷却材として炭酸ガスが採用されています。炭酸ガスは、私たちが普段呼吸している空気中にも含まれている、無色無臭の気体です。二酸化炭素とも呼ばれ、地球温暖化の原因物質として知られていますが、原子炉の冷却材としては優れた特性を持っています。炭酸ガスが冷却材として優れている点の一つに、中性子を吸収しにくいという性質があります。 中性子は、ウランなどの核分裂を引き起こすために必要な粒子です。もし冷却材が中性子を吸収してしまうと、核分裂反応が阻害され、発電効率が低下してしまいます。炭酸ガスは中性子の吸収率が低いため、原子炉内の核分裂反応を阻害することなく、効率的に熱を運び出すことができます。特に、マグノックス炉のように天然ウランを燃料とする原子炉では、炭酸ガスのこの特性が重要となります。 天然ウランは、核分裂しやすいウラン235の濃度が低いため、中性子の吸収を抑えることが、安定した核分裂反応を維持する上で不可欠です。そのため、中性子の吸収率が低い炭酸ガスは、マグノックス炉の冷却材として最適と言えるでしょう。このように、炭酸ガスはマグノックス炉の冷却材として重要な役割を担っており、原子力発電を支える技術の一つとなっています。
冷却材 | 特徴 | 利点 | 備考 |
---|---|---|---|
炭酸ガス (CO2) | – 無色無臭 – 中性子を吸収しにくい |
– 原子炉内の核分裂反応を阻害せず、効率的に熱を運び出せる – 天然ウランを燃料とする原子炉(マグノックス炉)に最適 |
– 地球温暖化の原因物質として知られる – マグノックス炉では重要な役割を担う |
マグノックス炉の役割
– マグノックス炉の役割マグノックス炉は、1950年代から1970年代にかけて、イギリスを中心に数多く建設されました。当時、原子力による発電は夢のエネルギーとして期待されており、マグノックス炉はその先駆的な役割を担っていました。マグノックス炉は、天然のウランを燃料として利用できるという大きな利点を持っていました。ウランを濃縮する必要がないため、コストを抑え、より早く発電を開始することができたのです。しかし、マグノックス炉は、他の原子炉と比べて低い温度で運転されるため、熱効率が低いという欠点がありました。発電効率を高めるためには、より高い温度で運転できる原子炉の開発が求められたのです。また、マグノックス炉は、炉の材料であるマグノックス(酸化マグネシウム)が、高温の二酸化炭素によって腐食しやすいという問題も抱えていました。腐食は炉の寿命を縮げ、安全性を低下させるため、深刻な課題でした。これらの課題を克服するため、現在ではより高温で運転でき、安全性と効率性の高い軽水炉が主流となっています。マグノックス炉は、現在では新型の原子炉にその座を譲っていますが、原子力発電の黎明期において、電力の供給やプルトニウムの生産に大きく貢献したことは間違いありません。原子力発電の礎を築いた技術として、マグノックス炉は歴史的に高く評価されています。
項目 | 内容 |
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役割 | 1950年代から1970年代にかけてイギリスで多く建設され、原子力発電の黎明期を支えた。 |
メリット | 天然ウランを燃料にできるため、ウラン濃縮が不要でコストを抑えられ、発電開始を早められた。 |
デメリット | 運転温度が低いため熱効率が低い。炉材のマグノックスが二酸化炭素で腐食しやすく、炉の寿命や安全性が課題。 |
現状 | 現在ではより高温で運転でき、安全性と効率性の高い軽水炉が主流。 |
評価 | 原子力発電の黎明期に電力の供給やプルトニウムの生産に大きく貢献した技術として歴史的に評価されている。 |