次世代の原子力発電: ナトリウム冷却炉

次世代の原子力発電: ナトリウム冷却炉

電力を見直したい

原子力発電の『ナトリウム冷却炉』って、普通の原子炉と何が違うんですか?

電力の研究家

いい質問だね!普通の原子炉では水が冷却に使われていることが多いんだけど、『ナトリウム冷却炉』は金属のナトリウムを冷却に使うんだ。ナトリウムは熱をすごくよく伝えるから、効率がいいんだよ。

電力を見直したい

へえー!金属を冷却に使うんですね!でも、ナトリウムって危なくないんですか?

電力の研究家

確かにナトリウムは水や空気と激しく反応するから、取り扱いには注意が必要なんだ。だけど、原子炉の中で使うときは、安全に管理できるように設計されているんだよ。

ナトリウム冷却炉とは。

「ナトリウム冷却炉」って言葉は、原子力発電で使われる用語なんだ。簡単に言うと、金属のナトリウムか、ナトリウムを混ぜた金属で冷やす原子炉のことだよ。

ナトリウム冷却炉の中には、「高速炉」って呼ばれる種類がある。これは、速い中性子を使う原子炉で、昔から世界中で「高速増殖炉」として開発されてきたんだ。最近だと、この高速炉は、未来の原子炉の新しい設計思想である「第4世代原子炉」の一つに選ばれたんだよ。

この「第4世代原子炉」には、二つの種類がある。一つは、酸化物の燃料を使って、使った燃料を再処理する時に水を使う方法。もう一つは、金属の燃料を使って、再処理する時に水を使わない方法だ。どちらも、日本が「高速増殖炉サイクルの実用化に向けた調査研究」で検討しているものだよ。

特に、前者の代表例として、「もんじゅ」の開発経験を活かして、核燃料サイクル開発機構が開発を進めている大型のループ型原子炉があるんだ。これは、原子炉を小さくしたり、ループの数を減らしたり、一次系の機器をまとめたりすることで、経済性を高めているのが特徴だよ。

ナトリウム冷却炉とは

ナトリウム冷却炉とは

– ナトリウム冷却炉とはナトリウム冷却炉は、原子炉内で発生した熱を運び出すために、冷却材として金属ナトリウムまたはその合金を利用する原子炉です。 私たちが普段目にしたり、耳にしたりする原子力発電所では、冷却材として水が用いられています。水を沸騰させて蒸気を発生させ、その蒸気でタービンを回し発電機を動かすのが一般的なしくみです。 一方で、ナトリウム冷却炉では、この水のかわりにナトリウムが熱を運ぶ役割を担います。ナトリウムは、熱を伝える力が非常に高く、高温でも沸騰しないという特徴があります。そのため、原子炉をより高い温度で運転することができ、結果として発電効率が向上するという利点があります。また、ナトリウムは水と比べて中性子を吸収しにくい性質を持っているため、核燃料の効率的な利用にも貢献します。しかし、ナトリウムは空気中の酸素や水と激しく反応するという性質も持ち合わせています。そのため、ナトリウム冷却炉では、ナトリウムが空気や水に直接触れないよう、特別な設計や対策が必要となります。

項目 内容
冷却材 金属ナトリウムまたはその合金
利点 – 熱伝導率が高く、高温でも沸騰しないため、発電効率が高い
– 中性子を吸収しにくい性質を持つため、核燃料を効率的に利用できる
欠点 – 空気中の酸素や水と激しく反応するため、特別な設計や対策が必要

高速炉との関係

高速炉との関係

– 高速炉との関係ナトリウム冷却炉は、高速炉と呼ばれる原子炉の一種です。原子炉の中には、核分裂反応で発生する中性子の速度を落とすために、減速材と呼ばれる物質が使われているものがあります。しかし、高速炉では、この減速材を用いずに中性子の速度を速いまま保って核分裂反応を起こします。高速炉は、中性子の速度が速いことで、ウラン238という物質をプルトニウムに変換する能力に優れています。プルトニウムはウランよりも多くのエネルギーを生み出すことができるため、高速炉は従来の原子炉よりも多くのエネルギーを取り出すことが可能となります。高速炉は、その優れた能力から、将来のエネルギー問題解決への貢献が期待され、これまで高速増殖炉として研究開発が進められてきました。ナトリウム冷却炉は、この高速増殖炉の開発で培われた技術を応用して開発が進められている原子炉です。熱伝導性に優れたナトリウムを冷却材に用いることで、高速炉の持つ高い熱出力を効率的に冷却することができます。

項目 内容
炉の種類 高速炉
減速材 使用しない
中性子の速度 速い
特徴 ウラン238をプルトニウムに変換する能力に優れている
プルトニウムのエネルギー効率の良さから従来の原子炉よりも多くのエネルギーを取り出すことが可能
冷却材 ナトリウム(熱伝導性に優れる)

第4世代原子炉としての期待

第4世代原子炉としての期待

– 第4世代原子炉としての期待ナトリウム冷却炉は、将来の原子力発電を担う技術として期待される「第4世代原子炉」の一つに位置付けられています。第4世代原子炉は、従来の原子炉と比較して、安全性、経済性、核拡散抵抗性、廃棄物処理などのあらゆる面で優れた性能の実現を目指した、革新的な原子炉の概念です。
ナトリウム冷却炉は、その高い熱伝導率と低融点という特性から、熱交換の効率が高く、冷却材の温度を高温に保つことが可能です。これは、原子炉の熱効率を向上させ、より多くの電力を生成できることを意味します。また、ナトリウム冷却炉は、水冷却炉のように高圧にする必要がないため、原子炉の構造を簡素化でき、安全性も向上すると考えられています。
さらに、ナトリウム冷却炉は、使用済み核燃料に含まれるウランやプルトニウムを再利用する「高速炉」としての特性も持ち合わせています。高速炉は、核燃料資源の有効利用と放射性廃棄物の減容・長期毒性低減に大きく貢献できる可能性を秘めています。 このように、ナトリウム冷却炉は、次世代の原子力発電技術として、資源の有効利用、環境負荷の低減、エネルギー安全保障の強化など、様々な課題解決への貢献が期待されています。

項目 内容
分類 第4世代原子炉
特徴 – 高い熱伝導率と低融点を持つナトリウムを冷却材として使用
– 高温・高効率な運転が可能
– 水冷却炉より構造が簡素で安全性が高い
– 高速炉として核燃料の再利用が可能
メリット – 熱効率向上による発電量の増加
– 安全性の向上
– 核燃料資源の有効利用
– 放射性廃棄物の減容・長期毒性低減
期待される貢献 – 資源の有効利用
– 環境負荷の低減
– エネルギー安全保障の強化

酸化物燃料と金属燃料

酸化物燃料と金属燃料

次世代の原子力発電所として期待されている、ナトリウムを冷却材に用いる原子炉には、燃料の種類によって大きく二つに分けられます。一つは酸化物燃料を用いる原子炉、もう一つは金属燃料を用いる原子炉です。

酸化物燃料は、現在稼働している原子炉の多くで採用されている実績のある燃料です。ウランやプルトニウムといった核燃料物質を酸化物の形でセラミックス状に加工して用います。一方、金属燃料は、文字通り核燃料物質を金属の状態で使用します。酸化物燃料と比べて歴史は浅いものの、高い熱伝導率や冷却材であるナトリウムとの相性の良さといった利点があります。

熱伝導率が高いということは、燃料内部で発生した熱を効率的に外部に伝えることができるため、原子炉の運転温度を低く保つことが可能となります。これは、原子炉の安全性を高める上で重要な要素となります。また、ナトリウムとの相性が良いということは、燃料と冷却材の反応を抑え、長期にわたって安定した運転を実現できる可能性を示唆しています。

このように、酸化物燃料と金属燃料はそれぞれに特徴があり、どちらの燃料を採用するかによって、原子炉の設計や性能は大きく変わってきます。現在、世界各国で両方の燃料を用いた原子炉の研究開発が進められており、将来の原子力発電を担う技術として期待されています。

項目 酸化物燃料 金属燃料
燃料の状態 酸化物(セラミックス状) 金属
実績 豊富 歴史は浅い
熱伝導率 低い 高い
ナトリウムとの相性 良い
メリット 高い熱伝導率による原子炉の安全性向上、長期安定運転の可能性

日本の開発状況

日本の開発状況

我が国では、これまでに高速増殖炉「もんじゅ」の開発や、ナトリウムを冷却材として用いる原子炉に関する基礎研究など、将来の原子力利用を見据えた技術開発に精力的に取り組んできました。特に、高速増殖炉は、ウラン資源を有効活用できる夢の原子炉として、長年、研究開発の中心を担ってきました。
現在、核燃料サイクル開発機構(JNC)を中心に、新型の高速増殖炉である大型ループ型炉の研究開発が進められています。この原子炉は、「もんじゅ」の開発で得られた貴重な知見や経験を活かし、安全性と信頼性を確保しつつ、経済性の向上を追求した点が大きな特徴です。具体的には、原子炉構造のコンパクト化、冷却材を循環させるループ数の削減、機器の統合など、様々な工夫が凝らされています。これらの革新的な設計により、建設費や運転コストの大幅な削減が期待されています。将来のエネルギー需要を満たす上で、大型ループ型炉は極めて重要な役割を担うと期待されています。

項目 内容
過去の取り組み – 高速増殖炉「もんじゅ」の開発
– ナトリウム冷却材を用いた原子炉の基礎研究
将来の原子力利用に向けた技術開発 – 新型高速増殖炉(大型ループ型炉)の研究開発
– 開発主体:核燃料サイクル開発機構(JNC)
– 特徴:安全性と信頼性を確保しつつ、経済性の向上を追求
– 具体的な工夫:
– 原子炉構造のコンパクト化
– 冷却材循環ループ数の削減
– 機器の統合
– 効果:建設費や運転コストの大幅な削減
– 将来展望:将来のエネルギー需要を満たす上で極めて重要な役割を担うと期待