高速炉の先駆け:ドーンレイ炉
電力を見直したい
先生、「ドーンレイ炉」って聞いたことがないのですが、どんなものだったんですか?
電力の研究家
ドーンレイ炉は、イギリスで昔、作られて動いていた実験用の原子炉だよ。高速増殖炉という種類の炉でね、普通の原子炉とはちょっと違う仕組みで動いていたんだ。
電力を見直したい
高速増殖炉…ですか?普通の原子炉と何が違うんですか?
電力の研究家
簡単に言うと、ウラン燃料をより効率的に使って、 plutoniumという燃料を作り出すことができる炉なんだ。ドーンレイ炉は、高速増殖炉の技術を確かめるために、実際に電気を作るところまでやっていたんだよ。
ドーンレイ炉とは。
「ドーンレイ炉」は、イギリスで実験のために作られ、動かされていた「高速炉」と呼ばれる種類の原子力発電炉のことです。この炉は、1959年に原子炉内で核分裂が安定して続く状態になり、1961年には高速炉としては初めて、実際に電気を作ることに成功しました。その後、様々な基礎的な実験に使われましたが、1977年にその役割を終えました。この炉は、最大で6万キロワットの熱を発生させ、そのうち1.5万キロワットを電気に変換することができました。燃料にはウランとモリブデンの合金が使われ、熱を炉の外に運ぶ冷却材にはナトリウムとカリウムの合金が使われていました。炉の構造としては、冷却材が循環するループを持つタイプでした。
高速炉研究のパイオニア
– 高速炉研究のパイオニア
イギリスで建設・運転されたドーンレイ炉は、高速炉の実験炉として原子力開発の歴史にその名を刻みました。高速炉とは、一般的な原子炉のように中性子を減速させずに、高速中性子のまま核分裂反応を起こす炉のことです。ウラン資源をより効率的に利用できる可能性を秘めており、次世代の原子炉として期待されています。
ドーンレイ炉は、1959年から1977年まで稼働し、高速炉の基礎研究、材料試験、燃料開発など、多岐にわたる分野で貴重なデータを提供しました。この炉で得られた知見は、その後の高速炉開発に大きく貢献し、世界中の研究者に影響を与えました。具体的には、高速炉の安全性に関する研究、炉心設計の最適化、新型燃料の開発などに貢献しました。
ドーンレイ炉の成功は、イギリスが高速炉研究のパイオニアとしての地位を確立する上で重要な役割を果たしました。その技術力は、現在も世界から高く評価されています。ドーンレイ炉の経験は、将来の原子力エネルギー利用、特に資源の有効利用や核廃棄物の低減といった課題解決に向けて、貴重な財産となっています。
項目 | 内容 |
---|---|
炉型 | 高速炉 (実験炉) |
運転期間 | 1959年 – 1977年 |
主な成果 | – 高速炉の基礎研究 – 材料試験 – 燃料開発 – 安全性に関する研究 – 炉心設計の最適化 – 新型燃料の開発 |
意義 | – イギリスの高速炉研究におけるパイオニアとしての地位確立 – 世界の高速炉開発に貢献 – 将来の原子力エネルギー利用、資源の有効利用、核廃棄物低減への貢献 |
世界初の電力供給
1959年に、イギリスのカンブリア州にあるセラフィールドという場所で、ある画期的な出来事が起こりました。それは、ドーンレイ炉と呼ばれる原子炉が、臨界状態に達したというものでした。臨界状態とは、原子炉の中で核分裂の連鎖反応が持続的に起こる状態のことを指します。このドーンレイ炉は、世界で初めてプルトニウムを生み出す高速増殖炉として設計され、大きな期待を背負って建設されました。そして、この期待に応えるように、ドーンレイ炉はその後、世界をさらに驚かせることになります。
わずか2年後の1961年、ドーンレイ炉は世界で初めて、高速増殖炉として発電を行い、実際に電力網に電気を供給することに成功したのです。これは、原子力発電の歴史にとって非常に重要な出来事でした。なぜなら、高速増殖炉が、単に実験室の中だけの技術ではなく、実際に電気を作り出すことができる実用的な技術であることを証明したからです。この成功は、世界中に大きな衝撃を与え、高速増殖炉技術の開発競争を加速させることになりました。そして、ドーンレイ炉はその後も20年以上にわたって稼働し続け、原子力発電の歴史にその名を刻みました。
年代 | 内容 | 補足 |
---|---|---|
1959年 | ドーンレイ炉が臨界状態に到達 | 世界初のプルトニウム生産高速増殖炉 |
1961年 | ドーンレイ炉が発電に成功、電力網に供給開始 | 世界初の高速増殖炉による発電 高速増殖炉の実用性を証明 |
1961年以降 | 20年以上稼働 |
小型ながら高性能
– 小型ながら高性能
「ドーンレイ炉」は、他の原子炉と比較して規模は小さいものの、大きな成果を上げた原子炉として知られています。その出力は、熱出力で6万kW、電気を発生させる出力に換算すると1.5万kWでした。この出力は、都市全体に電力を供給するには十分ではありませんが、「ドーンレイ炉」は、電力供給を主な目的として建設された原子炉ではなかったのです。
「ドーンレイ炉」は、将来の原子力発電の鍵を握ると期待されていた、「高速炉」の研究開発に特化した実験炉として建設されました。「高速炉」とは、中性子を減速させずに核分裂反応を起こすことで、より多くのエネルギーを取り出すことができる、次世代の原子炉です。「ドーンレイ炉」は、様々な種類の「高速炉」の基礎研究に用いられ、その運転データは、後の「高速炉」開発に大きく貢献しました。
「ドーンレイ炉」の大きな特徴の一つに、燃料と冷却材に、当時としては革新的な物質を採用していたことが挙げられます。燃料には、ウランとモリブデンの合金が使用されました。これは、高温での安定性と核分裂反応の効率を高めるために選ばれました。一方、熱を炉心から運び出す冷却材には、ナトリウムとカリウムを混合した「NaK合金」と呼ばれる金属が採用されました。これは、「NaK合金」が、熱伝導率が高く、中性子をあまり吸収しないという性質を持つためです。このような、燃料と冷却材の組み合わせは、「ループ型」と呼ばれる設計で炉内に配置されました。これは、燃料と冷却材を別々のループで循環させることで、安全性と効率性を高める設計です。
このように、「ドーンレイ炉」は、小型ながらも、当時の最先端技術を駆使して設計・建設された、高性能な実験炉でした。そして、その役割を十分に果たし、「高速炉」開発の礎を築いたと言えるでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
炉型 | 高速炉実験炉 |
出力 | 熱出力: 60,000 kW 電気出力: 15,000 kW |
目的 | 高速炉の研究開発 |
燃料 | ウラン・モリブデン合金 |
冷却材 | NaK合金 (ナトリウム・カリウム合金) |
設計 | ループ型 |
16年間の運用と貢献
ドーンレイ炉は、1962年の臨界開始から1977年の閉鎖までの16年間、実験炉として大きな役割を果たしました。この間、ドーンレイ炉は単なる電力供給源を超え、高速炉技術の進歩に大きく貢献しました。
ドーンレイ炉の運転期間中、様々な試験や実験が行われました。これらの試験を通じて、高速炉の安全性、信頼性、経済性に関する貴重なデータが収集されました。特に、高速中性子による材料の照射挙動や、ナトリウム冷却材の特性に関する研究は、後の高速炉開発に大きく貢献しました。
さらに、ドーンレイ炉の運転経験は、高速炉の設計、建設、運転に関する多くの知見をもたらしました。これらの知見は、技術者や研究者に共有され、高速炉技術の向上と発展に大きく貢献しました。現在も、ドーンレイ炉で得られた経験と知見は、高速炉研究の礎として、将来の高速炉開発に役立てられています。
期間 | 分類 | 内容 | 備考 |
---|---|---|---|
1962年 – 1977年 (運転期間中) |
実験炉としての役割 | 電力供給 | |
高速炉技術の進歩に貢献 | 様々な試験や実験を実施 | ||
試験・実験の成果 | 高速炉の安全性、信頼性、経済性に関するデータ収集 | ||
高速中性子による材料の照射挙動に関する研究 | 後の高速炉開発に貢献 | ||
ナトリウム冷却材の特性に関する研究 | 後の高速炉開発に貢献 | ||
高速炉の設計、建設、運転に関する知見の獲得 | 技術者や研究者に共有 | ||
1977年 – 現在 | 実験炉の経験の活用 | 高速炉研究の礎として、将来の高速炉開発に役立てられています。 |
未来への遺産
未来への遺産、その言葉がふさわしい存在があります。かつてイギリスの地に存在し、世界初の商用高速炉として歴史に名を刻んだ、ドーンレイ炉です。その運転は1962年から1977年までの間でしたが、ドーンレイ炉がもたらした功績は、時を経た今もなお、色褪せることなく輝き続けています。高速炉は、従来の原子炉とは異なり、ウラン燃料をより効率的に利用できるだけでなく、使用済み燃料を再処理することで、資源の有効活用と廃棄物量の削減を両立できる、まさに夢の原子力発電技術として期待されています。ドーンレイ炉は、その高速炉のパイオニアとして、その後の原子力発電技術の発展に計り知れない影響を与えました。閉鎖から長い歳月が流れましたが、高速炉は次世代の原子力発電技術として、再び脚光を浴びています。地球温暖化やエネルギー資源の枯渇といった課題が深刻化する中、高速炉はエネルギー問題解決の切り札として、世界中から熱い視線を注がれています。ドーンレイ炉の残した功績は、未来のエネルギー問題解決への道を切り開くものとして、その価値をますます高めています。それは、まさに人類への、未来への遺産と言えるでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
名称 | ドーンレイ炉 |
種類 | 高速炉(世界初の商用炉) |
稼働期間 | 1962年~1977年 |
特徴 | ウラン燃料をより効率的に利用 使用済み燃料の再処理による資源の有効活用と廃棄物量の削減 |
功績 | 高速炉のパイオニアとして、その後の原子力発電技術の発展に貢献 |
今後の展望 | 次世代の原子力発電技術として、地球温暖化やエネルギー資源の枯渇といった課題解決への期待 |