世界の原子力発電を支える軽水炉

世界の原子力発電を支える軽水炉

電力を見直したい

先生、軽水炉って普通の水を使うって書いてありますけど、わざわざ「軽水」って言うのはなんでですか?

電力の研究家

いい質問ですね!実は、原子力発電では、普通の水以外に「重水」も使われることがあるんです。重水は普通の水と性質が少し違うので、区別するために普通の水を「軽水」と呼んでいるんですよ。

電力を見直したい

へえー、そうなんですね。重水を使う原子炉もあるんですか?

電力の研究家

はい、ありますよ。カナダが開発したCANDU炉という原子炉は重水を使っています。重水を使うと、ウラン燃料を濃縮しなくても発電できるという利点があるんです。

軽水炉とは。

「軽水炉」って何かというと、アメリカで生まれた発電用の原子炉のことなんだ。この原子炉は、圧力容器の中に普通の水を入れて、濃度の低いウラン燃料を詰めて動かす仕組みなんだよ。普通の水は、専門的には「軽水」って呼ばれていて、原子炉の中で燃料から出る熱を冷ますのと同時に、核分裂の速度を調整する役割も持っているんだ。今、世界中で動いている原子炉の8割以上がこの軽水炉なんだって。軽水炉には、圧力容器の中で水を熱して蒸気を作り、その蒸気でタービンを回して発電する「加圧水型炉」と、圧力容器の中で直接蒸気を発生させてタービンを回す「沸騰水型炉」の二種類があるんだ。加圧水型炉は、最初は潜水艦用の動力として開発されたんだけど、その後、改良に改良が重ねられて、今の形になったんだ。一方、沸騰水型炉は、加圧水型炉ができて少し経ってから開発されたんだよ。

軽水炉とは

軽水炉とは

– 軽水炉とは軽水炉は、原子力発電所で私たちが日々使っている電気を作り出すために使われている原子炉の一種です。では、なぜ「軽水」炉と呼ばれるのでしょうか?それは、この炉が水を減速材と冷却材の両方に使用していることに由来します。減速材は、ウラン燃料から放出される中性子の速度を落とす役割を担います。中性子の速度を落とすことで、核分裂反応をより効率的に維持しやすくなるのです。一方、冷却材は原子炉で発生した熱を運び出す役割を担います。この熱を利用して蒸気を作り出し、タービンを回すことで発電を行います。軽水炉では、この減速材と冷却材の両方の役割を水が担っているため、「軽水」炉と呼ばれているのです。水は熱を奪う能力が高く、比較的扱いやすい物質であるため、減速材と冷却材の両方に適しています。 軽水炉は世界中で広く普及しており、原子力発電の多くがこの軽水炉によって支えられています。

項目 説明
炉型 軽水炉
減速材
冷却材
減速材の役割 ウラン燃料から放出される中性子の速度を落とす。核分裂反応をより効率的に維持する。
冷却材の役割 原子炉で発生した熱を運び出す。蒸気を作り出し、タービンを回すことで発電する。
水の利点 熱を奪う能力が高く、比較的扱いやすい。
普及率 世界中で広く普及。原子力発電の多くを支える。

軽水炉の二つの型

軽水炉の二つの型

– 軽水炉の二つの型軽水炉は、現在世界で最も広く利用されている原子炉です。その中でも、加圧水型炉(PWR)と沸騰水型炉(BWR)は、それぞれ異なる特徴を持つ二大主流を占めています。PWRは、原子炉内で水を高圧に保つことで、約300度という高温でも沸騰させずに水のまま循環させるのが特徴です。この高温高圧の水は、一次冷却系と呼ばれる閉じたループ内を循環し、蒸気発生器へと送られます。蒸気発生器では、一次冷却系の熱が二次冷却系の水へと伝わり、蒸気が発生します。こうして作られた蒸気がタービンを回し、発電機を駆動する仕組みです。PWRは、一次冷却系と二次冷却系が分離しているため、放射性物質を含む一次冷却水がタービンや発電機に直接触れることがないという利点があります。一方、BWRは、原子炉内で水を直接沸騰させて蒸気を発生させる方式です。原子炉で発生した蒸気は、そのままタービンへと送られ、発電機を駆動します。BWRは、PWRに比べて構造がシンプルで、蒸気発生器が不要なため、建設費を抑えられるというメリットがあります。しかし、タービンや配管などに放射性物質が付着する可能性があるため、放射線管理の面ではより慎重な対策が必要となります。このように、PWRとBWRはそれぞれ異なる特徴を持つため、設置場所や運転方法など、様々な条件を考慮して選択されます。世界的に見ると、PWRの方がBWRよりも多く建設されていますが、日本ではBWRも広く採用されています。

項目 加圧水型炉 (PWR) 沸騰水型炉 (BWR)
特徴 原子炉内で水を高圧に保ち、約300度という高温でも沸騰させずに水のまま循環させる。一次冷却系と二次冷却系が分離。 原子炉内で水を直接沸騰させて蒸気を発生させる。
メリット 放射性物質を含む一次冷却水がタービンや発電機に直接触れることがない。 構造がシンプルで、蒸気発生器が不要なため、建設費を抑えられる。
デメリット タービンや配管などに放射性物質が付着する可能性があるため、放射線管理の面ではより慎重な対策が必要。
世界の状況 PWRの方が多く建設されている。
日本の状況 広く採用されている。

世界で普及している軽水炉

世界で普及している軽水炉

– 世界で普及している軽水炉

軽水炉は、現在、世界で最も広く利用されている原子炉の形式であり、世界中の原子力発電所の約8割を占めています。この型の原子炉がこれほどまでに普及した背景には、いくつかの理由があります。

第一に、軽水炉は安全性と信頼性の面で優れていることが挙げられます。長年の研究開発によって、軽水炉の設計や運転技術は高度に洗練されており、万が一の事故発生時にも備えた多層的な安全対策が施されています。実際に、軽水炉は長い運転期間を通じて、その安全性を証明してきました。

第二に、軽水炉は豊富な運転実績を持っていることが挙げられます。世界中で長年にわたり多数の軽水炉が運転されており、その過程で得られた膨大なデータや経験は、更なる安全性と信頼性の向上に役立てられています。この豊富な運転実績は、新規に原子力発電所を建設する国々にとっても大きな魅力となっています。

これらの理由から、軽水炉は世界中で広く採用され、原子力発電の主力としての地位を確立しています。今後も、安全性と信頼性をさらに高めるための技術開発が進められるとともに、世界的なエネルギー需要の増加に対応していくことが期待されています。

項目 内容
種類 軽水炉
世界シェア 約8割
メリット1 安全性と信頼性が高い。長年の研究開発による高度な設計と運転技術、多層的な安全対策。
メリット2 豊富な運転実績。長年の運転データと経験に基づく安全性と信頼性の向上。

加圧水型炉の特徴

加圧水型炉の特徴

– 加圧水型炉の特徴加圧水型炉(PWR)は、現在世界で最も広く利用されている原子炉の形式です。その歴史は古く、原子力潜水艦の開発時代にまで遡ります。その後、安全性と効率性を向上させるための技術革新が続けられ、現在のような形になりました。PWRの最大の特徴は、原子炉で発生させた熱を、別の装置である蒸気発生器で水蒸気に変換する点にあります。原子炉で熱せられた水は、高圧の状態を保ったまま蒸気発生器へと送られます。そして、蒸気発生器の中で熱交換を行い、二次側の水を加熱して水蒸気を発生させます。この水蒸気がタービンを回し、発電機を駆動することで電気が作られます。原子炉と蒸気発生器が分離している構造であるため、放射性物質を含む水がタービンや復水器などの機器へ混入するリスクが低く抑えられています。これは、PWRの大きな利点の一つと言えるでしょう。また、炉心内の圧力を高く保つことで、沸騰を抑制し、安定した運転を実現しています。PWRは、その安全性と信頼性の高さから、世界中で広く採用されています。日本の原子力発電所においても、PWRは主要な炉型として活躍しています。

項目 内容
炉型 加圧水型炉 (PWR)
特徴 – 原子炉で発生させた熱を、別の装置である蒸気発生器で水蒸気に変換
– 原子炉と蒸気発生器が分離している構造
– 炉心内の圧力を高く保つことで、沸騰を抑制し、安定した運転を実現
メリット – 放射性物質を含む水がタービンや復水器などの機器へ混入するリスクが低い
– 安全性と信頼性が高い
現状 – 世界で最も広く利用されている原子炉の形式
– 日本の原子力発電所においても主要な炉型として活躍

沸騰水型炉の特徴

沸騰水型炉の特徴

– 沸騰水型炉の特徴沸騰水型炉(BWR)は、加圧水型炉(PWR)と並んで世界中で広く利用されている原子炉の一種です。BWRは、その名の通り原子炉内で水を沸騰させて蒸気を発生させることでタービンを回し、発電を行います。BWRの大きな特徴の一つに、構造のシンプルさがあります。PWRでは蒸気を発生させるために、原子炉とは別に蒸気発生器が必要となります。一方、BWRでは原子炉内で直接蒸気を作り出すため、蒸気発生器が不要となり、システム全体が簡素化されます。 この構造のシンプルさにより、BWRはPWRと比べて建設コストを抑えることが可能となります。また、BWRは熱効率の高さも大きな利点です。原子炉内で発生させた高温高圧の水を直接タービンに送るため、熱エネルギーの損失が少なく、効率的に発電を行うことができます。しかしながら、BWRはPWRと比べて原子炉のサイズが大きくなる傾向があります。これは、原子炉内で蒸気を発生させるために、PWRよりも大きな圧力容器が必要となるためです。さらに、BWRでは放射性物質を含む蒸気がタービン系へ直接流れるという点も考慮が必要です。PWRでは蒸気発生器を介することで、放射性物質がタービン系へ流れ込むのを防いでいますが、BWRではこのような仕組みがないため、タービン系における放射線対策が重要となります。このように、BWRはシンプルさと高効率を両立させた原子炉ですが、大型化や放射線対策といった課題も抱えています。これらの特徴を理解した上で、BWRの導入を検討することが重要です。

項目 内容
炉型 沸騰水型炉 (BWR)
特徴 原子炉内で水を沸騰させて蒸気を発生させることでタービンを回し、発電を行う。
メリット – 構造がシンプル
– 建設コストを抑えられる
– 熱効率が高い
デメリット – 原子炉のサイズが大きくなる傾向がある
– 放射性物質を含む蒸気がタービン系へ直接流れる