原子力発電と活断層:安全確保の重要な視点
電力を見直したい
先生、『活断層』って原子力発電とどう関係があるんですか?地震が起きやすい場所にあるってことですか?
電力の研究家
良い質問ですね。まさに、活断層は地震を起こす可能性のある断層なので、原子力発電所のような重要な施設は活断層の近くには作ってはいけないことになっています。
電力を見直したい
なるほど。でも、活断層ってどこにあるか、いつ動くか、わからないですよね?
電力の研究家
その通りです。そのため、原子力発電所を作る際には、過去の地震の記録や地層を詳しく調べて、活断層がないか、活動する可能性がないかを慎重に確認する必要があるんです。
活断層とは。
「活断層」とは、簡単に言うと、地面にできた割れ目のことです。この割れ目は、岩盤が壊れてずれが生じたもので、地層がずれている面を境に両側で高さが違います。活断層は、比較的新しい地質時代に何度も活動していて、今後も活動する可能性のある断層を指します。この「最近の地質時代」の具体的な期間については、はっきりとした決まりがなく、およそ180万年前から現在までの「第四紀」を指す場合や、約10万年前までを目安とする場合もあります。原子力発電所の耐震設計審査指針が2006年9月に改訂された際には、活断層の評価期間がそれまでの1万年から5万年前から、約12万年から13万年前までに広げられました。また、新しい指針の説明では、地震を起こすと想定される断層を評価する際には、過去の文献調査、地形の変化を調べる調査、地表の地質調査、地球物理学的な調査などを適切に組み合わせ、十分な調査を行うこととされています。そして、原子力安全委員会は2008年6月に「活断層等に関する安全審査の手引き」の中で、具体的な調査方法を示しました。さらに、2011年3月の東日本大震災による福島第一原発事故をきっかけに、安全規制体制を抜本的に改革することになり、2012年9月には新しい規制を行う組織として原子力規制委員会が設立されました。地震への安全対策の要求がますます強まる中、活断層に関する上記の審査指針と手引きについても、原子力規制委員会によって見直される可能性があります。
活断層とは何か
活断層とは、地球内部の岩盤にできた割れ目の中で、過去に繰り返し地盤がずれ動いた跡があり、今後も動く可能性のあるものを指します。いわば、地球の表面に刻まれた過去の地震の傷跡とも言えます。この活断層こそ、地震の発生源となる可能性を秘めているため、人々の生活に大きな影響を与える可能性があります。
特に、原子力発電所のように、高い安全性が求められる施設の建設においては、活断層の存在は極めて重要な問題となります。原子力発電所は、ひとたび事故が起きれば、広範囲に深刻な被害をもたらす可能性があります。そのため、建設予定地の地下に活断層が存在するかどうか、存在する場合には活動性はどうなのか、将来どのくらいの規模の地震を引き起こす可能性があるのかを綿密に調査し、評価することが必要不可欠です。活断層の調査は、過去の地震の記録を紐解き、地層のずれや変形を分析すること、さらには、人工的に振動を起こして地下構造を調べるなど、高度な技術と専門的な知識を要する作業となります。
項目 | 内容 |
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活断層の定義 | 地球内部の岩盤にできた割れ目で、過去に繰り返し地盤がずれ動いた跡があり、今後も動く可能性のあるもの |
活断層と原子力発電所の関係 | 原子力発電所は事故時のリスクが大きいため、建設予定地の地下に活断層が存在するかどうかは極めて重要 |
原子力発電所建設における活断層調査のポイント | – 活断層の存在の有無 – 活動性の度合い – 将来起こりうる地震の規模 |
活断層調査の方法 | – 過去の地震記録の分析 – 地層のずれや変形の分析 – 人工的な振動を用いた地下構造調査 |
活断層の評価期間
原子力発電所は、地震による影響を最小限に抑えるため、断層の活動履歴を詳細に調査し、耐震設計に反映させる必要があります。この調査において重要な要素となるのが「活断層の評価期間」です。
活断層の評価期間とは、最近の地質時代において活断層がどのような活動をしてきたかを調べる期間のことを指します。過去の地震活動の痕跡をより長い期間にわたって調査することで、将来発生する可能性のある地震の規模や発生頻度をより正確に予測することができます。
2006年9月、原子力発電所の耐震設計審査指針が見直され、この活断層の評価期間が従来の1~5万年前から約12~13万年前へと大幅に延長されました。これは、より長い期間の地震活動履歴を考慮することで、安全性評価の精度を向上させるという目的で行われた変更です。
このように、活断層の評価期間の延長は、原子力発電所の安全性向上に向けた重要な取り組みの一つです。過去の地震の痕跡を詳細に分析することで、将来の地震発生の可能性をより正確に評価し、より安全な原子力発電所の建設と運転につなげることが可能となります。
項目 | 内容 |
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活断層の評価期間とは | 最近の地質時代において活断層がどのような活動をしてきたかを調べる期間 |
評価期間延長の目的 | より長い期間の地震活動履歴を考慮することで、安全性評価の精度を向上させる |
評価期間延長の内容 | 従来の1~5万年前から約12~13万年前へ延長 (2006年9月耐震設計審査指針見直し) |
評価期間延長の意義 | 過去の地震の痕跡を詳細に分析することで、将来の地震発生の可能性をより正確に評価し、より安全な原子力発電所の建設と運転につなげることが可能となる |
活断層の調査方法
– 活断層の調査方法活断層は、将来も活動して地震を引き起こす可能性のある断層です。そのため、活断層の位置や形状、活動履歴などを明らかにすることが、地震防災対策を進める上で非常に重要となります。活断層の調査は、様々な手法を組み合わせることで、総合的に行われます。まず、過去の地震の記録や、断層活動に関する文献を調査します。古文書や古地図などを用いて、過去の地震の発生時期や規模、被害状況などを明らかにします。また、過去の調査報告書などを参考に、既知の活断層の位置や性状などを把握します。次に、航空写真や現地調査などを通して、地形を詳しく調べます。活断層の活動によって、断層崖や地溝、断層変位地形などの特徴的な地形が形成されることがあります。これらの地形を識別することで、活断層の存在や位置、活動性などを推定することができます。さらに、地層や岩石の分布、変形、年代を調べる地質調査も行います。断層が動いたことによって地層がずれたり、曲がったりすることがあります。これらの痕跡を調べることで、断層の活動時期や規模、変位量などを推定することができます。また、人工的に発生させた地震波を用いて地下構造を探査する、地球物理学的調査も行います。地震波は、地下の岩石の性質や状態によって伝わる速度が変わったり、反射したりします。この性質を利用して、地下の断層の位置や形状、深さなどを明らかにすることができます。これらの調査結果を総合的に解析することで、活断層の位置や形状、活動履歴などが明らかになり、将来の地震発生の可能性を評価することができます。
調査手法 | 内容 | 調査でわかること |
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文献調査 | 過去の地震の記録や断層活動に関する文献を調査する。古文書や古地図、過去の調査報告書などを活用する。 | 過去の地震の発生時期、規模、被害状況、既知の活断層の位置や性状。 |
地形調査 | 航空写真や現地調査を通して、地形を詳しく調べる。断層崖、地溝、断層変位地形などを識別する。 | 活断層の存在、位置、活動性。 |
地質調査 | 地層や岩石の分布、変形、年代を調べる。断層によって生じた地層のずれや曲がりなどを分析する。 | 断層の活動時期、規模、変位量。 |
地球物理学的調査 | 人工地震波を用いて地下構造を探査する。地震波の伝播速度や反射などを分析する。 | 地下の断層の位置、形状、深さ。 |
原子力安全規制と活断層
原子力発電所は、ひとたび事故が起きれば広範囲に甚大な被害をもたらす可能性があるため、その安全確保は最優先事項です。特に、地震大国である日本では、原子力発電所の建設や運転にあたって活断層の存在を厳密に評価することが不可欠です。
原子力安全委員会が2008年6月に策定した「活断層等に関する安全審査の手引き」は、原子力発電所の安全性を評価する上で重要な指針となっています。この手引きでは、原子力発電所の建設予定地周辺の地質や地質構造を詳細に調査し、活断層の存在や活動性を評価する方法が具体的に示されています。
具体的には、空中写真や地表踏査による地形判読、ボーリング調査やトレンチ調査による地下構造の確認、断層面の性状や変位量の測定などが実施されます。これらの調査結果に基づき、活断層の長さや活動履歴を推定し、将来発生する可能性のある地震の規模や発生確率を評価します。そして、想定される地震の揺れに対して原子炉や関連施設が安全性を確保できることを確認した上で、建設の可否が判断されます。
このように、原子力発電所の建設にあたっては、活断層に関する詳細な調査と厳格な評価が実施されており、その安全性の確保に万全を期しているのです。
項目 | 内容 |
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原子力発電所の安全性確保 | 最優先事項であり、特に地震大国である日本では活断層の存在を厳密に評価することが不可欠 |
活断層等に関する安全審査の手引き(2008年6月策定) | 原子力発電所の安全性を評価する上で重要な指針 原子力発電所の建設予定地周辺の地質や地質構造を詳細に調査し、活断層の存在や活動性を評価する方法を具体的に示す |
調査方法 | 空中写真や地表踏査による地形判読 ボーリング調査やトレンチ調査による地下構造の確認 断層面の性状や変位量の測定など |
評価内容 | 調査結果に基づき、活断層の長さや活動履歴を推定 将来発生する可能性のある地震の規模や発生確率を評価 想定される地震の揺れに対して原子炉や関連施設が安全性を確保できることを確認 |
規制体制の変化と今後の展望
2011年3月の福島第一原子力発電所の事故は、日本の原子力安全規制体制を根本から見直す転機となりました。この事故を教訓に、従来の体制は大きく変化し、より厳格な安全基準が求められるようになりました。その中核を担うのが、新たに設立された原子力規制委員会です。原子力規制委員会は、独立性と専門性を兼ね備えた組織として、原子力施設の安全審査や規制、さらには安全研究などを総合的に担っています。
原子力発電所の安全性確保において、特に重要な要素の一つに活断層の評価があります。原子力発電所は、地震による影響を最小限に抑えるため、活断層から十分に離れた場所に建設する必要があります。原子力規制委員会は、最新の科学的知見や技術に基づいた、より厳格な審査指針や手引きを策定し、活断層の評価を行っています。具体的には、地質調査や掘削調査などの結果を詳細に分析し、活断層の存在や活動性を評価します。そして、その評価結果に基づいて、原子力発電所の耐震設計に反映させています。
今後も、原子力規制委員会による活断層に関する審査指針や手引きは、絶えず進歩する科学技術を踏まえ、継続的に見直されていくと考えられます。原子力発電の安全性確保には、活断層に対する深い理解と、その評価技術の絶え間ない向上が求められており、関係機関のたゆまぬ努力が続けられています。
項目 | 内容 |
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背景 | 福島第一原子力発電所の事故を教訓に、より厳格な安全基準が求められるようになった。 |
新体制 | 独立性と専門性を兼ね備えた原子力規制委員会が設立。 |
原子力規制委員会の役割 | 原子力施設の安全審査、規制、安全研究などを総合的に担当。 |
安全性確保の重要要素 | 活断層の評価(原子力発電所は活断層から十分に離れた場所に建設する必要がある) |
原子力規制委員会の取り組み | 最新の科学的知見や技術に基づいた厳格な審査指針や手引きを策定し、活断層の評価を実施。
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今後の展望 | 審査指針や手引きは、最新の科学技術を踏まえ、継続的に見直し。 |