原子力プラントの安全を守る監視システム
電力を見直したい
先生、プラント監視システムって、結局どんなものなんですか?難しくてよくわからないです。
電力の研究家
そうだね。原子力発電所にある、たくさんの計器や装置から情報を受け取って、発電所全体の状態を監視するシステムのことだよ。
電力を見直したい
ふだん私達が目にするような監視カメラとは違うんですか?
電力の研究家
そうだね、監視カメラの映像を見るようなものとは違うよ。もっとたくさんの情報、例えば温度や圧力、水位といった、発電所が安全に動いているかどうかわかる数値を、コンピューターで監視しているんだ。異常があれば、すぐにわかるようになっているんだよ。
プラント監視システムとは。
原子力発電所の中にある、発電量や温度、圧力、水の量といった大切な情報を監視する装置のことを「プラント監視システム」または「運転員支援システム」といいます。この装置のおかげで、発電所の状態を常に把握し、何か異常があればすぐに発見することができます。コンピューターの進化によって、このシステムはさらに高性能なものになりました。高速実験炉「常陽」では、「MEDUSA」というシステムが使われています。これは、機械の異常を早期に発見し、適切な時期に修理を行うために、遠くから自動的に監視を続けるシステムです。さらに、「Co-MEDUSA」という、定期的な点検などを簡単に行うためのシステムも開発され、実際に使用されています。
プラント監視システムとは
原子力発電所は、常に安全に稼働することが求められます。その安全を陰ながら支えている重要なシステムの一つに、プラント監視システムがあります。このシステムは、発電所の心臓部である原子炉や、蒸気発生器、タービンなど、様々な機器の状態を常に監視しています。
具体的には、発電所の出力はもちろんのこと、原子炉内の温度や圧力、冷却水の流量や水位、放射線量など、様々なパラメータを計測し、その値が正常範囲内にあるかどうかを常にチェックしています。これらの情報は、中央制御室にある監視盤に分かりやすく表示され、運転員はそれを見ながら、発電所の状態をリアルタイムで把握することができます。
プラント監視システムは、いわば発電所の健康状態を見守る医師のような役割を担っています。もし、どこかの機器に異常な兆候が見られた場合、例えば温度が急上昇したり、圧力が異常に低下したりした場合には、プラント監視システムはすかさず警報を発して、運転員に知らせます。そして、運転員が適切な対応を取れるように、過去のデータやトラブルシューティングの手順などを画面に表示して支援します。このように、プラント監視システムは、原子力発電所の安全運転を24時間体制で支える、縁の下の力持ちといえるでしょう。
プラント監視システムの役割 | 監視対象 | 異常時の動作 |
---|---|---|
原子力発電所の安全運転を24時間体制で支える縁の下の力持ち | 原子炉、蒸気発生器、タービンなどの ・出力 ・温度、圧力 ・冷却水の流量や水位 ・放射線量 など |
・異常な兆候があれば警報を発して運転員に知らせる ・過去のデータやトラブルシューティングの手順などを画面に表示して運転員を支援する |
計算機による進化
原子力発電所のような巨大なプラントでは、常に膨大な数の機器が稼動しており、その状態を監視することは安全確保のために不可欠です。かつては、作業員が目視で計器を確認したり、記録を取ったりしていました。しかし、この方法では膨大な時間と労力がかかり、ヒューマンエラーの可能性も避けられませんでした。
そこに登場したのが計算機です。計算機の進化は、プラントの監視システムに革命をもたらしました。 今では、プラントのあらゆる場所に設置されたセンサーから集められたデータは、リアルタイムで計算機システムに送信され、処理されるようになりました。これにより、人間では到底処理しきれない量のデータを、高速かつ正確に分析することが可能になりました。
また、計算機は複雑な計算やシミュレーションにも優れています。過去の運転データや設計情報などを基に、異常が発生しそうな箇所を予測したり、最適な運転条件を割り出したりすることも可能です。さらに、異常を検知した場合には、警報を発したり、自動的に安全装置を作動させたりすることで、事故の発生を未然に防ぐ役割も担っています。このように、計算機の進化は、原子力発電所の安全性と信頼性を飛躍的に向上させる原動力となっています。
時代 | 監視方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
計算機導入前 | 作業員による目視 | – | – 膨大な時間と労力が必要 – ヒューマンエラーの可能性 |
計算機導入後 | センサーと計算機システムによる監視 | – 大量のデータを高速・正確に処理 – 異常箇所の予測 – 最適な運転条件の算出 – 異常時の警報発生、安全装置の自動作動 |
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高速実験炉「常陽」の例
茨城県大洗町にある高速実験炉「常陽」は、より安全で効率的な原子炉の開発を目指して、様々な研究や実験が行われている施設です。この「常陽」では、プラント設備の異常を早期に発見し、適切なタイミングで修理や部品交換を行うことが非常に重要になります。そこで開発されたのが、MEDUSAと呼ばれるプラント監視システムです。
MEDUSAは、「常陽」の心臓部である原子炉や冷却システムなど、様々な場所に設置されたセンサーからデータを集約します。そして、集めたデータを自動的に分析することで、普段とは異なる運転状況や異常の兆候をいち早く捉えることができます。さらに、MEDUSAを補助するシステムとして、Co-MEDUSAも開発されました。Co-MEDUSAは、月に一度行われる定期点検などの際に、より詳細なデータの収集と分析を行います。MEDUSAだけでは見つけるのが難しいような軽微な異常も見逃さないようにすることで、「常陽」の安全運転を二重三重に支えています。これらのシステムの導入により、「常陽」はより安全性を高めながら、将来の原子力技術開発に貢献し続けています。
システム名 | 概要 | 目的 |
---|---|---|
MEDUSA | 常陽の各所に設置されたセンサーからデータを集約し、自動分析するプラント監視システム。 | 運転状況の異常や兆候の早期発見。 |
Co-MEDUSA | MEDUSAを補助するシステム。定期点検時などに詳細なデータ収集・分析を行う。 | MEDUSAでは検知困難な軽微な異常も見逃さないことで、より高い安全運転を支える。 |
将来への展望
– 将来への展望原子力発電所の心臓部とも言えるプラント監視システムは、コンピューター技術の進化と共に、今後ますます高度化していくことが予想されます。まるで人間の脳のように学習し、自ら判断を下せる人工知能を搭載することで、プラントから送られてくる膨大なデータの中から、これまで以上に正確かつ迅速に異常を見つけ出すことが可能になるでしょう。例えば、原子炉の温度や圧力、あるいは機器の振動など、様々なデータを人工知能が常時監視し、異常な兆候をいち早く察知することで、事故を未然に防ぐことが期待できます。さらに、仮想現実や拡張現実といった最新技術と組み合わせることで、運転員の能力向上も期待できます。仮想現実空間上に、原子炉内部の様子や配管の配置などを忠実に再現することで、運転員は実際にプラント内を歩いているかのような臨場感を得ながら、設備の状況をリアルタイムで把握することができます。また、拡張現実技術を用いることで、運転員の視界に、機器の動作状況や点検箇所などを重ねて表示することも可能になります。これらの技術により、運転員の状況把握能力と異常時対応能力を格段に向上させることが期待できます。このように、プラント監視システムは進化を続け、原子力発電所の安全を守る上で、これからも重要な役割を担っていくことは間違いありません。
技術 | 説明 | 期待される効果 |
---|---|---|
人工知能 (AI) | プラントの膨大なデータを常時監視し、異常な兆候をいち早く察知する。 | 事故の未然防止 |
仮想現実 (VR) | 原子炉内部の様子や配管の配置などを仮想空間上に再現し、運転員に臨場感のある体験を提供する。 | 運転員の状況把握能力向上 |
拡張現実 (AR) | 運転員の視界に、機器の動作状況や点検箇所などを重ねて表示する。 | 運転員の状況把握能力と異常時対応能力向上 |