原子力発電におけるシビアアクシデントとは?
電力を見直したい
『シビアアクシデント』って、原子力発電で時々聞く言葉だけど、具体的にどんな事故なの?
電力の研究家
良い質問だね。「シビアアクシデント」は、原子力発電所で起きる事故の中で、最も深刻なものを指す言葉なんだ。簡単に言うと、原子炉の冷却や制御がうまくいかなくなって、炉心の一部が溶けてしまうような、極めて深刻な事故のことを言うんだよ。
電力を見直したい
そんなに大変な事故のことなんだ!過去に実際に起きたことはあるの?
電力の研究家
残念ながら、過去に二度起きているんだ。アメリカのスリーマイル島と、旧ソ連のチェルノブイルで起きた事故が「シビアアクシデント」に当たるんだよ。これらの事故は世界中に衝撃を与え、原子力発電の安全性を改めて考える大きなきっかけになったんだ。
シビアアクシデントとは。
『シビアアクシデント』は、原子力発電所で起こる事故の中でも特に深刻なものを指す言葉です。これは、あらかじめ想定されていた安全設計の範囲をはるかに超える事態であり、通常の手段では原子炉の冷却や運転制御ができなくなる状態を指します。その結果、原子炉の中心部である炉心が大きく損傷してしまう事態に繋がります。原子炉事故の場合は『炉心損傷事故』とも呼ばれます。シビアアクシデントの重大さは、損傷の大きさや原子炉格納容器の損傷程度によって異なります。アメリカのThree Mile Island事故や旧ソビエト連邦(現在のウクライナ)の Chernobyl事故は、シビアアクシデントに相当します。このような深刻な事態に発展することを防ぐ対策や、万が一、そうなってしまった場合でも影響を最小限に抑える対策を『アクシデントマネージメント』と呼びます。
シビアアクシデントの定義
– シビアアクシデントの定義原子力発電所は、安全を最優先に設計・運転されています。しかし、万が一に備え、設計段階で想定されている事象をはるかに超える深刻な事故、すなわち「シビアアクシデント」についても検討が重ねられています。シビアアクシデントとは、原子炉の安全確保のために通常講じられている対策をもってしても、炉心の冷却や核分裂反応の制御が不可能となる事態を指します。これは、地震や津波といった外部事象や、機器の故障、人的ミスなど、様々な要因が重なり発生する可能性があります。シビアアクシデント発生時には、炉心内の燃料が高温となり、炉心融解に至る可能性があります。炉心融解とは、燃料が溶け落ちる現象であり、放射性物質を含む大量の蒸気やガスが発生するなど、深刻な事態を引き起こす可能性があります。原子力発電所において、シビアアクシデントは発生頻度は極めて低いものの、最も深刻なリスクとして認識されています。そのため、シビアアクシデントの発生防止対策はもちろんのこと、万が一発生した場合でも、その影響を最小限に抑えるための対策も講じられています。
項目 | 説明 |
---|---|
シビアアクシデントの定義 | 設計段階で想定されている事象をはるかに超える深刻な事故。炉心の冷却や核分裂反応の制御が不可能となる事態。 |
発生要因 | 地震、津波等の外部事象、機器の故障、人的ミスなど |
シビアアクシデント発生時の事象 | 炉心内の燃料が高温となり、炉心融解に至る可能性。放射性物質を含む大量の蒸気やガスが発生。 |
原子力発電所におけるリスク | 発生頻度は極めて低いが、最も深刻なリスクとして認識。 |
対策 | 発生防止対策、影響を最小限に抑えるための対策を実施。 |
シビアアクシデントの深刻さと事例
原子力発電所における事故の中でも、「シビアアクシデント」は、炉心損傷が発生し、多量の放射性物質が環境中に放出される可能性を伴う、最も深刻な事故です。この深刻さは、炉心の損傷の程度、そして放射性物質を閉じ込めるための重要な設備である原子炉格納容器が、どの程度その機能を維持できているかによって評価されます。
過去には、世界中で二つの原子力発電所事故が、このシビアアクシデントに該当する事例として挙げられます。一つは、1979年にアメリカ合衆国で発生したスリーマイル島原子力発電所事故です。この事故では、炉心溶融が発生しましたが、格納容器が健全性を維持したため、環境への放射性物質の放出は比較的抑えられました。しかし、この事故は、原子力発電の安全神話に疑問を投げかける大きな出来事となりました。
もう一つは、1986年に旧ソビエト連邦(現ウクライナ)で発生したチェルノブイル原子力発電所事故です。この事故では、炉心溶融に加えて、格納容器の機能も失われたため、大量の放射性物質が環境中に放出されました。その結果、広範囲にわたる環境汚染と、多くの人々の健康被害が生じました。チェルノブイル原子力発電所事故は、原子力発電の潜在的な危険性を世界に知らしめ、その安全性に対する信頼を大きく揺るがすこととなりました。
事故名称 | 発生国 | 発生年 | 炉心損傷 | 格納容器の健全性 | 放射性物質の放出 | 影響 |
---|---|---|---|---|---|---|
スリーマイル島原子力発電所事故 | アメリカ合衆国 | 1979年 | 発生 | 維持 | 比較的少量 | 原子力発電の安全神話に疑問 |
チェルノブイル原子力発電所事故 | 旧ソビエト連邦 (現ウクライナ) |
1986年 | 発生 | 喪失 | 大量 | 広範囲の環境汚染、多数の健康被害 原子力発電の安全性に対する信頼を大きく揺るがす |
シビアアクシデントへの対策:アクシデントマネージメント
原子力発電所は、私たちの生活に欠かせない電気を供給してくれる一方で、ひとたび事故が起きれば深刻な被害をもたらす可能性も孕んでいます。特に、炉心損傷など、重大な影響を及ぼす可能性のある事故を「シビアアクシデント」と呼びます。 シビアアクシデントは、その発生確率を極力低く抑えるように設計されていますが、万が一に備え、多重防護の考え方に基づいた対策がとられています。
シビアアクシデントへの対策は、大きく分けて二つの段階に分けられます。まず第一に、事故の発生自体を未然に防ぐための「予防対策」です。これは、原子炉施設の設計や運転、保守点検などを厳格に行うことで、事故発生の可能性を最小限に抑え込むことを目指します。具体的には、地震や津波などへの対策、機器の多重化や独立性の確保、運転員の訓練などが挙げられます。
しかし、万が一、事故が発生してしまった場合に備えて、その影響を最小限に食い止めるための「緩和対策」も重要です。原子炉格納容器の強度を高める、炉心を冷却するための設備を充実させる、放射性物質の放出を抑制するシステムを整備するなど、様々な対策を講じることで、周辺環境への影響を最小限に抑えることを目指します。
このように、「予防対策」と「緩和対策」の両輪を組み合わせた総合的な対策を「アクシデントマネージメント」と呼び、原子力発電所の安全性を確保する上で欠かせない要素となっています。
分類 | 目的 | 具体的な対策例 |
---|---|---|
予防対策 | 事故の発生を未然に防ぐ | – 地震や津波などへの対策 – 機器の多重化や独立性の確保 – 運転員の訓練 |
緩和対策 | 事故発生時の影響を最小限に食い止める | – 原子炉格納容器の強度を高める – 炉心を冷却するための設備を充実させる – 放射性物質の放出を抑制するシステムを整備する |