環境影響を事前に評価!環境影響アセスメント指令とは
電力を見直したい
先生、「環境影響アセスメント指令」って、何だか難しそうな名前ですよね。一体どんなものなんですか?
電力の研究家
そうだね。「環境影響アセスメント指令」は、簡単に言うと、大きな工場とか発電所を作る前に、環境にどんな影響があるかを事前にきちんと調べて、その影響を減らすように計画しなさい!というルールなんだ。 EUで作られて、日本でも似たような法律があるんだよ。
電力を見直したい
なるほど。事前に環境への影響を調べるんですね。それで、原子力発電の場合は、どんな影響を調べるんですか?
電力の研究家
原子力発電の場合は、放射線による影響や、温排水による周辺の海への影響などが特に詳しく調べられるんだ。他にも、工事による自然破壊や、発電所から出る廃棄物の処理についても検討する必要があるんだよ。
環境影響アセスメント指令とは。
「環境影響アセスメント指令」は、原子力発電に関する言葉の一つです。これは、ヨーロッパ委員会が定めた環境に関する大切なルールの一つで、正式には「特定の公共事業及び民間事業の環境影響アセスメントに関する指令」(85/337/EEC)とその改正版(97/11/EC)のことを指します。
このルールは、「問題が起きてから対策するのではなく、あらかじめ対策をしておくことが大切だ」というヨーロッパの環境政策の基本的な考え方に基づいています。具体的には、事業を行う前に、その事業が環境にどのような影響を与えるのかをきちんと調べて評価する手続きを定めています。
改正された環境影響アセスメント指令では、それぞれの国が「統合的汚染防止管理指令」という別のルールと環境影響アセスメント指令の両方の要求事項を満たすために、一つの手続きを設けることを認めています。
ちなみに、ヨーロッパの「指令」というのは、加盟国に対して、決められた期限までにその内容に沿った国内の法律やルールを作るように求めるものです。ただし、これは最低限の要求なので、それぞれの国の事情に合わせて、より厳しい法律やルールを作ることも可能です。
環境影響アセスメント指令の概要
– 環境影響アセスメント指令の概要環境影響アセスメント指令は、ヨーロッパ委員会が環境保全のために定めた重要な指令の一つです。この指令は、大規模な開発事業が環境に与える影響を、事業者が事前に評価し、その結果を公表することを義務付けています。 これは、環境問題を未然に防ぎ、持続可能な開発を推進するために重要な役割を果たしています。この指令は、1985年に制定された指令(85/337/EEC)を皮切りに、その後も改正(97/11/EC)が重ねられ、より実効性の高いものへと進化してきました。対象となる事業は、道路や鉄道などのインフラストラクチャー整備、発電所や工場の建設、大規模な住宅開発など多岐にわたります。事業者は、環境影響アセスメントの手続きの中で、大気、水質、土壌、生物多様性など、様々な環境要素への影響を調査・予測し、その結果を報告書にまとめます。 そして、その報告書は公に開示され、地域住民や環境保護団体などから意見を聴取する機会が設けられます。 このように、環境影響アセスメント指令は、事業者、行政機関、地域住民などの関係者が、事業の環境影響について情報を共有し、意見交換を行うための枠組みを提供しています。そして、その過程を通じて、より環境負荷の少ない事業計画へと改善を促すことを目的としています。
項目 | 内容 |
---|---|
指令の目的 | 大規模開発事業による環境影響を事前に評価し、環境問題を予防、持続可能な開発を推進 |
制定年 | 1985年 (初版: 85/337/EEC) |
改正 | あり (例: 97/11/EC) |
対象事業 | 道路、鉄道等のインフラ整備、発電所、工場建設、大規模住宅開発など |
事業者の義務 | 大気、水質、土壌、生物多様性等への影響調査・予測、報告書作成・公開、意見聴取 |
関係者 | 事業者、行政機関、地域住民、環境保護団体 |
未然防止の重要性を強調
この指令は、環境問題に取り組む上で非常に重要な原則を打ち出しています。それは、問題が発生してから対応するのではなく、事前にその影響を予測し、回避することです。これは、EUが環境政策において掲げる基本方針であり、環境への負荷を最小限に抑え、持続可能な社会を築くための重要な鍵となります。
具体的には、事業を計画する段階から環境への影響を分析し、明らかにすることが求められます。環境影響評価と呼ばれるこのプロセスを通じて、事業の実施によってどのような影響が環境に及ぶのかを事前に把握することで、環境への負荷を軽減するための対策を立てることが可能となります。
例えば、工場を建設する場合、排出される排水の量や大気への影響などを事前に予測し、適切な処理施設を導入したり、排出量を削減するための技術を採用したりすることで、環境への負荷を最小限に抑えることができます。このように、事前に環境への影響を考慮することで、環境保全と経済活動を両立させる道が開けていきます。
指令の内容と改正点
事業者が大規模な開発事業などを実施する際には、その事業が環境にどのような影響を与えるかを事前に評価し、環境への負荷をできる限り低減することが求められています。これを「環境影響評価」と呼び、その具体的な手続きや評価項目などは、「環境影響アセスメント指令」によって定められています。
この指令は、時代の変化や新たな知見を踏まえ、定期的に見直しや改正が行われています。今回の改正では、これまで対象となっていなかった比較的小規模な事業についても、環境影響評価の対象に含めることになりました。これは、開発が環境に与える影響をより厳格にチェックし、環境保全を強化することを目的としています。
また、環境影響評価の手続きについても、簡素化や明確化が図られました。具体的には、評価項目や手続きの一部を簡略化することで、事業者の負担軽減を図るとともに、評価プロセスを分かりやすくすることで、地域住民の皆様や関係機関がより参加しやすくなるように配慮されています。
さらに、他の環境関連の指令との整合性も強化されました。これにより、複数の指令に基づいて別々に手続きを行う必要がなくなり、事業者にとってより効率的な手続きが可能となります。
これらの改正点により、環境影響評価の制度がより実効性のあるものとなり、環境と開発の調和を目指した持続可能な社会の実現に貢献することが期待されています。
改正点 | 内容 | 目的 |
---|---|---|
対象事業の拡大 | 比較的小規模な事業も環境影響評価の対象に含める | 環境への影響をより厳格にチェックし、環境保全を強化 |
手続きの簡素化・明確化 | 評価項目や手続きの一部を簡略化 | 事業者の負担軽減、地域住民等の参加促進 |
他の環境関連指令との整合性強化 | 複数指令に基づく別々の手続きを不要化 | 事業者にとってより効率的な手続き |
IPPC指令との統合
– IPPC指令との統合
環境影響評価(EIA)指令は、開発計画が環境に与える影響を事前に評価し、環境保全を図るための重要な枠組みです。近年、環境問題の多様化・複雑化に伴い、EIA指令は改正が進められています。
その改正点の一つとして、統合的汚染防止管理指令(IPPC指令)との連携強化が挙げられます。IPPC指令は、大気、水、土壌などの環境媒体への汚染を総合的に防止・削減するため、特定の産業施設に対し、包括的な環境管理計画の策定を求めるものです。
改正EIA指令では、加盟国がIPPC指令の要求事項とEIA指令の要求事項を統合し、事業者にとってより効率的な手続きとすることを認めています。具体的には、EIAの手続きの中でIPPC指令に基づく許認可も同時に取得できるようにするなど、事業者の負担軽減を図りつつ、環境保全効果の高い制度運用を目指しています。
この統合により、事業者はそれぞれの指令に個別に対応するのではなく、環境影響全体を包括的に捉えた計画策定と環境管理が可能となります。これは、環境行政の効率化だけでなく、事業者による環境配慮の促進にも繋がるものと期待されています。
項目 | 内容 |
---|---|
背景 | 環境問題の多様化・複雑化に伴い、EIA指令の改正が進められている。 |
改正点 | 統合的汚染防止管理指令(IPPC指令)との連携強化 |
IPPC指令とは | 大気、水、土壌への汚染を総合的に防止・削減するため、特定の産業施設に対し、包括的な環境管理計画の策定を求める指令。 |
統合によるメリット | – 加盟国はIPPC指令の要求事項とEIA指令の要求事項を統合し、事業者にとってより効率的な手続きとすることが可能 – 事業者は環境影響全体を包括的に捉えた計画策定と環境管理が可能 |
統合による効果 | – 環境行政の効率化 – 事業者による環境配慮の促進 |
加盟国における実施
EUは加盟国に対して、指令の目標達成に必要な国内法や規則を定めるよう義務付けています。これは加盟国がEUの指令内容を国内で実施することを意味します。例えば、環境影響評価に関するEU指令がある場合、加盟国はその指令に基づいて自国の環境影響評価制度を整備する必要があります。ただし、EUの環境影響評価指令で定められている内容は、あくまで最低限の基準です。加盟国は、自国の環境状況や社会状況などを考慮して、EU指令よりも厳しい基準を設定することができます。
実際に、多くの加盟国では、EU指令で求められている以上の環境影響評価を実施しています。例えば、EU指令では評価対象となっていない小規模な開発事業についても、環境影響評価を義務付けている加盟国もあります。また、EU指令よりも詳細な環境影響評価の手順を定めている加盟国や、環境影響評価の結果をより厳格に審査する制度を設けている加盟国もあります。このように、加盟国はEU指令を参考にしながらも、自国の状況に合わせて独自の環境影響評価制度を構築しています。
項目 | 内容 |
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EU指令の役割 | 加盟国における国内法や規則の制定義務付け(最低限の基準設定) |
加盟国の裁量 | EU指令以上の厳しい基準設定が可能(自国の環境・社会状況を考慮) |
加盟国独自の取り組み例 | ・EU指令対象外の小規模開発事業への環境影響評価義務付け ・EU指令よりも詳細な環境影響評価手順の規定 ・環境影響評価結果に対する厳格な審査制度の設置 |