製鉄に欠かせない資源:粘結炭
電力を見直したい
先生、「粘結炭」って、どんな石炭のことですか?鉄を作るのに使うって書いてあるけど、よくわかりません。
電力の研究家
良い質問だね!「粘結炭」は、熱を加えると溶けてくっつく性質がある石炭のことなんだ。粘土を想像してみて。あれも熱するとくっついて固まるだろう?その性質を利用して、鉄鉱石を溶かすためのコークスを作るのに使われるんだ。
電力を見直したい
なるほど。熱で溶けてくっつく性質があるから、鉄を作るのに役立つんですね。でも、石炭なら何でも良いわけじゃないんですよね?
電力の研究家
その通り!実は、石炭には色々な種類があって、溶けてくっつくものと、そうでないものがあるんだ。「粘結炭」は、その中でも溶けてくっつく性質が強い石炭のことで、質の高い鉄を作るのに欠かせない材料なんだよ。
粘結炭とは。
「粘結炭」は、原子力発電の分野で使われる言葉ではなく、炭素を70〜75%含む石炭の一種です。この石炭は、熱を加えて密閉すると溶けて固まり、コークスになります。特に質の良いものは、鉄を作る際に利用されます。420℃程度の熱を加えることで、溶けて固まる「粘結炭」と、そうでない「非粘結炭」に分けられます。一般的に、溶けて固まる石炭は「粘結炭」または「原料炭」と呼ばれ、溶けて固まらない石炭は「非粘結炭」または「一般炭」と呼ばれています。粘結炭は、地球上に埋蔵されている石炭全体の約2割を占めており、コークスを作るためには欠かせない資源です。近年では、粘結性が低い石炭でもコークスを作れるように、新しい炉の開発が進められています。石炭が溶けて固まるかどうかの性質は、コークスを作るだけでなく、石炭からガスを作る技術など、様々な技術開発に大きな影響を与える重要な要素です。
粘結炭とは
– 粘結炭とは石炭と聞いて、黒く硬い燃料を思い浮かべる人は多いでしょう。しかし、石炭は一種類ではなく、その性質は含まれる炭素の量によって大きく異なります。粘結炭は、石炭の中でも特に重要な役割を担う種類の一つです。石炭は、炭素の含有量が少ないものから順に、褐炭、瀝青炭、無煙炭と分類されます。粘結炭は、このうち瀝青炭に属し、およそ70〜75%の炭素を含んでいます。粘結炭最大の特徴は、加熱するとまるでチョコレートのようにドロドロに溶け、冷えると再び固まる性質を持つことです。この性質を利用して作られるのが、製鉄の過程で欠かせない「コークス」です。粘結炭を加熱すると、溶けて塊となった後、さらに温度を上げることで余分な成分が取り除かれ、多孔質で強度の高いコークスへと変化します。 製鉄の現場では、このコークスが高炉に投入され、鉄鉱石を溶かすための燃料や還元剤として活躍しているのです。このように、粘結炭は単なる燃料ではなく、製鉄という重要な産業を支える、なくてはならない資源と言えるでしょう。
種類 | 炭素含有量 | 特徴 | 用途 |
---|---|---|---|
粘結炭(瀝青炭) | 約70〜75% | 加熱すると溶けて固まり、多孔質で強度の高いコークスになる | 製鉄における燃料や還元剤 |
粘結炭と非粘結炭の違い
石炭は、大きく分けて粘結炭と非粘結炭の二つの種類に分けられます。この二つの違いは、加熱したときの性質にあります。
粘結炭は、加熱すると一度溶けてどろどろの状態になります。その後、冷えて固まると塊になります。この性質を粘結性といい、粘結性を持つ石炭を粘結炭と呼びます。一方、非粘結炭は、加熱しても溶けずに、そのままの形で燃えていきます。
この性質の違いによって、石炭の用途は大きく変わってきます。鉄を作る際に必要なコークスという燃料は、溶けて固まる性質を持つ粘結炭だけから作られます。溶けて塊になることで、コークス炉内で通気性を確保しながら燃焼を続けることができ、鉄の還元に必要な高い熱を得ることができるからです。一方、非粘結炭は、主に燃料として火力発電などに利用されます。
このように、石炭は種類によって性質が異なり、その性質に応じて様々な用途に利用されています。
種類 | 加熱時の性質 | 用途例 | 特徴・理由 |
---|---|---|---|
粘結炭 | 加熱すると溶けてどろどろになり、冷えると固まる | コークス(製鉄用燃料) | 溶けて固まることでコークス炉内で通気性を確保できるため、鉄の還元に必要な高温を得られる。 |
非粘結炭 | 加熱しても溶けずに燃える | 火力発電の燃料 |
粘結炭の希少性
鉄鋼生産に欠かせないコークスの原料となる粘結炭。しかし、この粘結炭は、石炭全体と比較して埋蔵量が少なく、世界的に見ても限られた地域でしか産出されない貴重な資源です。石炭全体の埋蔵量のうち、粘結炭が占める割合はわずか2割程度と言われています。
この希少性から、粘結炭の安定供給は、鉄鋼業界にとって長年の課題となっています。鉄鋼生産は、自動車、船舶、橋梁、建築物など、様々な産業の基盤を支える重要な役割を担っています。もし、粘結炭の供給が滞ってしまうと、鉄鋼生産が滞り、ひいては世界経済全体に大きな影響を与える可能性も否定できません。
粘結炭の安定供給を確保するためには、産出国との長期的な関係構築や、代替となる資源の開発など、様々な取り組みが必要不可欠です。世界各国が協力し、持続可能な社会の実現に向けて、資源の有効活用に取り組んでいくことが重要と言えるでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
資源名 | 粘結炭 (石炭の一種) |
用途 | 鉄鋼生産に不可欠なコークスの原料 |
埋蔵量 | 希少 (石炭全体の約2割) |
産出地 | 世界的に限られた地域 |
安定供給の課題 | 鉄鋼業界の長年の課題 |
供給不足の影響 | 鉄鋼生産の滞り、世界経済への影響 |
解決策 | 産出国との長期的な関係構築、代替資源の開発など |
粘結炭の用途
– 粘結炭の用途製鉄プロセスにおける重要な役割粘結炭は、その名の通り加熱すると溶融して塊状になる性質を持つ石炭です。この性質を利用して作られるコークスは、製鉄プロセスにおいて欠かせない役割を担っています。鉄は自然界では鉄鉱石として存在し、そのままでは利用することができません。そこで、鉄鉱石から鉄を取り出すプロセスが必要となります。このプロセスを製鉄と呼び、製鉄には高炉と呼ばれる巨大な炉が使用されます。高炉の中では、鉄鉱石、コークス、石灰石などを混ぜ合わせたものを高温で熱することで鉄が取り出されます。コークスは、高炉内で還元剤として機能します。還元剤とは、他の物質に電子を与えることで、その物質を酸化した状態から還元された状態に変える働きを持つ物質です。鉄鉱石は酸化鉄という形で鉄を含んでいますが、コークスから発生する一酸化炭素がこの酸化鉄から酸素を奪い取ることで、鉄を取り出すことができます。コークスは燃焼時に高い熱量を発生するため、高炉内を高温に保つ役割も担っています。また、コークスは強度が高いため、高炉内で積み重ねても潰れにくく、鉄鉱石や石灰石との間を空気やガスが通る隙間を作り出すことができます。このように、粘結炭から作られるコークスは、製鉄プロセスにおいて還元剤、熱源、隙間充填剤という複数の重要な役割を果たしているのです。
用途 | 役割 |
---|---|
還元剤 | コークスから発生する一酸化炭素が鉄鉱石中の酸素を奪い取り、鉄を取り出す。 |
熱源 | 燃焼時に高い熱量を発生させ、高炉内を高温に保つ。 |
隙間充填剤 | 強度が高いため、高炉内で積み重ねても潰れにくく、鉄鉱石や石灰石との間を空気やガスが通る隙間を作り出す。 |
技術革新と将来展望
– 技術革新と将来展望鉄鋼材料は私たちの生活に欠かせないものであり、その鉄鋼材料を生み出す製鉄プロセスにおいて、コークスは重要な役割を担っています。しかし、良質なコークスの原料となる粘結炭は、年々その希少性が高まり価格が高騰しています。この課題を克服するため、近年では、これまでコークス製造に適さないとされてきた弱粘結炭を用いた、新たなコークス製造技術の開発が進められています。
具体的には、弱粘結炭に特定の処理を施したり、他の炭素材料と混合したりすることで、コークスと同等の強度や反応性を持ち合わせた新しいコークスを製造する技術が研究されています。この技術が確立されれば、これまで利用できなかった資源を活用できるようになり、安定したコークス供給の実現に繋がると期待されています。
さらに、地球温暖化対策の観点から、製鉄プロセスにおける二酸化炭素排出量削減は喫緊の課題となっています。この課題に対しては、コークス自体を代替する、全く新しい還元材の研究開発も進められています。例えば、水素還元製鉄と呼ばれる技術では、コークスの代わりに水素を用いることで、二酸化炭素排出量を大幅に削減することが可能となります。
このように、製鉄業界では、資源の有効活用と地球環境への負荷低減の両立に向けて、技術革新が進んでいます。これらの技術革新は、製鉄業界の未来を大きく左右する可能性を秘めており、今後の動向に注目が集まっています。
課題 | 技術革新 | 期待される効果 |
---|---|---|
良質なコークスの原料となる粘結炭の希少性と価格高騰 | これまでコークス製造に適さないとされてきた弱粘結炭を用いた、新たなコークス製造技術の開発 | これまで利用できなかった資源を活用できるようになり、安定したコークス供給の実現 |
製鉄プロセスにおける二酸化炭素排出量削減 | コークス自体を代替する、全く新しい還元材の研究開発(例: 水素還元製鉄) | 二酸化炭素排出量の大幅な削減 |