排出量取引:地球温暖化対策の切り札となるか?
電力を見直したい
先生、「排出量取引」って何か教えてください。何か、環境汚染を減らすための仕組みみたいなんですけど、よく分かりません。
電力の研究家
そうだね。「排出量取引」は、簡単に言うと、工場などが排出できる汚染物質の量を決めて、それを企業間で売ったり買ったりできる仕組みのことだよ。例えば、A工場は努力して汚染物質を減らせた、B工場は減らせなかったとする。A工場は、減らせた分をB工場に売ることができるんだ。
電力を見直したい
へえー。じゃあ、B工場はA工場から買うことで、汚染物質を減らさなくても良くなるんですか?
電力の研究家
そうとも言い切れないよ。排出できる量は全体で決まっているから、B工場はどこかからその権利を買わないといけないんだ。買うのにもお金がかかるし、企業努力で減らした方が安く済む場合もある。だから、企業はなるべく汚染物質を減らそうと努力するようになるんだよ。
排出量取引とは。
『排出量取引』っていうのは、国とか会社ごとに、環境を汚す物の量の上限を決めておく仕組みのことだよ。もし、ある国や会社が上限よりも少なく済んだら、その分を、上限を超えちゃった国や会社に売ったりできるんだ。
この仕組みは、アメリカで昔、空気中の汚染物質を減らすために使われて、効果があったんだって。それで、地球温暖化対策の国際的なルールでも、この仕組みが取り入れられたんだ。
このルールでは、2008年から本格的に取引が始まったんだけど、ヨーロッパでは、もっと前から、国同士で取引する仕組みを作っていたんだ。
排出量取引は、先進国が経済的な負担を少なくしながら、環境を良くするために役立つ方法だと考えられているんだ。でも、一方で、この仕組みを使うと、本当は自分たちで努力しないといけない国が、楽をしてしまう可能性もあるって指摘されているよ。
たとえば、ロシアは上限がゆるく設定されているから、排出量取引に頼りすぎると、他の先進国は自分たちで排出量を減らす努力がおろそかになってしまうかもしれないんだ。
だから、国際的なルールでは、排出量取引はあくまでも目標達成のための補助的な方法であって、使いすぎないようにって決められているんだよ。
排出量取引とは
– 排出量取引とは
排出量取引とは、企業などが協力して環境保全に取り組むための仕組みの一つです。国は、まず温室効果ガスなど、環境に影響を与える物質の排出量を全体として減らす目標を立てます。そして、それぞれの企業に対して、排出を許される上限量を割り当てます。これが「排出枠」と呼ばれるものです。
企業は、この排出枠を超えて排出してしまうと、罰金を支払ったり、不足分を他の企業から購入したりしなければなりません。逆に、技術革新や省エネルギー活動などによって、排出量を減らすことができた企業は、その分を他の企業に売却することができます。
このように、排出量取引は、企業にとって経済的なインセンティブを生み出すことで、自主的な排出削減努力を促すことを目的としています。排出量の少ない企業は、排出枠を売ることで利益を得ることができ、排出量の多い企業は、排出枠を購入することで、排出削減のための時間的な猶予を得ることができます。
排出量取引は、環境保全と経済活動を両立させるための有効な手段の一つとして、世界各国で導入が進められています。
項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 企業が協力して環境保全に取り組むための仕組み |
仕組み | – 国が排出量目標を設定し、企業ごとに排出枠を割り当てる – 企業は排出枠を超過した場合、罰金または排出枠の購入が必要 – 排出量を削減できた企業は、余剰分を売却可能 |
目的 | 経済的なインセンティブにより、企業の自主的な排出削減を促す |
メリット | – 排出量の少ない企業は利益を得られる – 排出量の多い企業は排出削減のための時間を確保できる |
現状 | 環境保全と経済活動を両立させる手段として、世界各国で導入が進んでいる |
排出量取引のメリット
– 排出量取引のメリット排出量取引は、企業に対して経済的な誘因を用いることで、より効率的に温室効果ガスの排出削減を目指す仕組みです。それぞれの企業に排出枠が割り当てられ、企業は他の企業とこの排出枠を売買することができます。排出量取引の最大の利点は、企業が経済的な利益を追求しながら、自主的に排出削減に取り組むことを促せる点にあります。排出削減目標を達成するために多額の費用がかかる企業は、他の企業から排出枠を購入することで、目標を達成しつつコストを抑えることができます。一方、比較的容易に排出削減を進められる企業は、削減した分を他の企業に売却することで利益を得ることができ、更なる排出削減の取り組みを促進する効果も期待できます。また、排出量取引は、技術革新を促進する効果も期待されています。従来よりも少ない排出量で製品を製造できる技術や、再生可能エネルギーなどのクリーンなエネルギーを活用する技術を開発した企業は、その技術によって削減できた排出枠を他の企業に売却することで、更なる利益を得ることができます。このように、排出量取引は、企業が技術開発に投資するインセンティブを高め、低炭素社会の実現を後押しすると期待されています。
メリット | 説明 |
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経済的な誘因による排出削減促進 | 企業は排出枠を売買することで、経済的な利益を追求しながら排出削減に取り組むことができます。 |
コスト効率の高い排出削減 | 排出削減が困難な企業は排出枠を購入することで、コストを抑えつつ目標を達成できます。 |
技術革新の促進 | 排出削減技術を開発した企業は、削減した排出枠を売却することで利益を得ることができ、技術開発を促進します。 |
排出量取引の歴史
排出量取引は、1990年代にアメリカで初めて導入されました。その目的は、石炭火力発電所などから排出される硫黄酸化物を削減し、酸性雨の被害を軽減することでした。この制度では、企業はそれぞれ排出できる硫黄酸化物の量の上限が定められ、上限を超えて排出したい場合は、排出量が少ない企業から排出枠を購入する必要がありました。
この制度は大きな成功を収め、アメリカでは硫黄酸化物の排出量が大幅に減少しました。従来の規制のように、すべての企業に一律に排出削減を義務付けるのではなく、企業が経済的な合理性に基づいて、排出削減に取り組むか、排出枠を購入するかを選択できることが、この成功の要因の一つと考えられています。
この成功を受けて、排出量取引は、地球温暖化対策としても注目されるようになりました。1997年に採択された京都議定書でも、排出量取引が盛り込まれ、世界各国で二酸化炭素などの温室効果ガスの排出削減のために導入されるようになりました。
項目 | 内容 |
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制度の起源 | 1990年代にアメリカで導入 |
当初の目的 | 石炭火力発電所などからの硫黄酸化物排出削減による酸性雨被害の軽減 |
制度の仕組み | 企業ごとに排出上限を設定し、超過分は排出枠の購入で対応 |
成果 | アメリカの硫黄酸化物排出量大幅削減 |
成功要因 | 企業が経済的合理性に基づき、排出削減か排出枠購入を選択できる柔軟性 |
地球温暖化対策への応用 | 京都議定書(1997年)に排出量取引が盛り込まれ、温室効果ガス削減へ活用 |
京都議定書における排出量取引
地球温暖化対策の国際的な枠組みである京都議定書では、日本を含む先進国に対して、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を削減する目標が定められました。この目標を達成するため、各国は国内での排出削減対策に加えて、より柔軟な方法で目標達成を促進するための仕組みとして、京都メカニズムと呼ばれる3つの柔軟性措置を採用しました。
その中の1つである排出量取引は、排出削減目標を達成しやすい国が、目標達成が難しい国に対して、排出削減量を売買することを可能にする制度です。
具体的には、排出削減目標を上回る成果を上げた国は、その超過分をクレジットとして他の国に売却することができます。逆に、排出削減が目標に達しない国は、クレジットを購入することで、不足分を補うことができます。
京都議定書に基づく排出量取引は、2008年から開始され、ヨーロッパ諸国を中心に多くの国が参加し、地球温暖化対策に貢献しました。
項目 | 内容 |
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枠組み | 京都議定書 |
目的 | 地球温暖化対策(二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量削減) |
対象 | 日本を含む先進国 |
柔軟性措置 | 京都メカニズム(排出量取引を含む3つの措置) |
排出量取引概要 | 排出削減目標を達成しやすい国が、目標達成が難しい国に対して、排出削減量を売買する制度 |
排出量取引詳細 | 目標達成国は超過分のクレジットを販売、未達成国は不足分のクレジットを購入 |
実施期間 | 2008年〜 |
参加国 | ヨーロッパ諸国を中心に多くの国 |
排出量取引の課題
地球温暖化への対策として注目を集める排出量取引ですが、いくつかの課題も抱えています。
まず、企業が排出する温室効果ガスの量を正確に測り、その計算方法を定めることが容易ではありません。さらに、企業が報告した排出量が正しいかどうかを確認する仕組みも複雑になりがちです。
また、排出枠の取引価格は、経済状況や政策の変化などによって大きく変動する可能性があります。この価格変動は、企業にとって大きなリスクとなり、排出削減への投資をためらう要因ともなりかねません。
さらに、排出量取引だけに頼りすぎることで、企業はコストの安い排出削減方法に偏り、真に効果的な技術革新がおろそかになる懸念もあります。
これらの課題を克服し、排出量取引を有効な温暖化対策とするためには、制度設計や運用方法の改善が必要です。排出量の算定・検証方法の透明性や簡素化、価格変動リスクの抑制、技術革新を促す仕組み作りなど、多角的な視点からの検討が求められます。
課題 | 詳細 |
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排出量の測定・算定 | 温室効果ガスの排出量の正確な測定や、算定方法の決定が容易ではない。 |
排出量報告の検証 | 企業が報告した排出量の真偽を確認する仕組みが複雑になりがち。 |
排出枠取引価格の変動 | 経済状況や政策の変化によって価格が大きく変動する可能性があり、企業にとってリスクとなる。 |
技術革新の停滞 | コストの安い排出削減方法に偏り、真に効果的な技術革新がおろそかになる懸念。 |