世界の原子力研究を牽引するNERIとは

世界の原子力研究を牽引するNERIとは

NERIの概要

– NERIの概要NERI（原子力エネルギー研究イニシアチブ）は、アメリカ合衆国エネルギー省（DOE）によって1999年度に開始された原子力研究プログラムです。21世紀において、エネルギー問題や環境問題の解決において指導的な役割を担い、原子力分野で世界における競争力を確保することを目指しています。
具体的には、アメリカ国内の大学や研究所、産業界における原子力科学技術の活性化を目的としています。
NERIは、革新的な原子炉の設計や燃料サイクル技術、原子力の安全性向上、廃棄物管理など、幅広い研究開発を支援しており、その成果は将来の原子力技術の発展に大きく貢献することが期待されています。
特に、安全性と経済性に優れた次世代原子炉の開発や、使用済み核燃料の再処理技術の開発などは、原子力の持続的な利用に向けて重要な課題として位置づけられています。
NERIは、これらの課題解決に向けて、産学官連携による研究開発を推進し、世界をリードする原子力技術の創出を目指しています。

NERIの重点研究分野

未来のエネルギー源として期待される原子力の平和利用において、技術開発は欠かせない要素です。NERI（原子力研究開発機構）は、将来の原子力利用を支え、より安全で持続可能な社会の実現に貢献するため、革新的な技術開発に力を注いでいます。

NERIの重点研究分野の一つに、革新的原子炉の開発があります。従来の原子炉の設計を見直し、安全性と経済性を飛躍的に向上させることで、原子力に対する信頼性の向上を目指しています。具体的には、自然の法則に基づいて原子炉の暴走を抑制する受動的安全システムの導入や、より効率的に熱を取り出すことができる炉型の開発などが進められています。

また、先進燃料技術の開発も重要な研究分野です。ウラン資源の有効利用と放射性廃棄物の低減を両立するため、従来の燃料よりも効率的に核分裂反応を起こすことができる燃料の開発に取り組んでいます。さらに、使用済み燃料を再処理し、燃料として再び利用する核燃料サイクル技術の確立にも貢献しています。

さらに、環境負荷の低減もNERIの重要な使命です。原子力発電に伴って発生する放射性廃棄物を適切に処理・処分するための技術開発は、将来の世代に美しい地球環境を引き継ぐために不可欠です。放射性物質の量を減らすための分離技術や、長期にわたって安全に保管するための処分方法など、様々な研究開発が進められています。

これらの技術開発を支えるのが、原子力基礎科学の研究です。原子核や放射線の性質、物質と放射線の相互作用など、原子力の基礎となる物理現象を解明することで、より安全で効率的な原子力利用の道が開かれます。NERIは、世界トップレベルの研究施設を擁し、原子力基礎科学の分野においても世界をリードする研究成果を上げています。

第４世代計画と国際連携

アメリカ合衆国エネルギー省（DOE）は、原子力エネルギー研究構想（NERI）の一環として、2030年頃の実用化を目標とした「第４世代計画」を提唱しました。これは、原子力発電の将来的な持続可能性、安全性と信頼性の向上、そして高い経済性の実現を目指す、意欲的な計画です。
この計画は、従来の原子力発電技術の延長線上にはない、革新的な技術開発を必要とするものでした。具体的には、より安全で効率的な原子炉の設計、核廃棄物の発生量削減とリスク低減、核拡散抵抗性の向上など、多岐にわたる研究開発目標が設定されました。

しかし、これらの目標を達成するためには、アメリカ一国だけで取り組むには限界がありました。そこで、この計画を国際的な枠組みで推進するために、2001年度には国際NERI（I-NERI）計画が開始されました。これは、アメリカをはじめとする原子力先進国が協力し、第４世代原子力システムの実現に向けた研究開発を共同で推進することを目的としています。I-NERIへの参加を通じて、各国は技術や知見を共有し、効率的かつ効果的に研究開発を進めることが可能となりました。

国際NERI（I-NERI）の枠組み

– 国際NERI（I-NERI）の枠組み国際NERI（I-NERI）は、原子力エネルギー分野の研究開発を国際協力によって推進するための枠組みです。この枠組みの特徴は、参加国が原則として同等の資金を拠出するという点にあります。これは、特定の国に資金的な負担が偏ることなく、対等な立場で研究開発を進めることを目的としています。I-NERIでは、具体的な研究課題の選定は、参加各国から選出された原子力エネルギー分野の専門家によって構成される合同専門委員会が責任を持って行います。委員会は、世界の原子力エネルギー利用の動向や技術的な課題を分析し、国際協力によって最も効果的に取り組むべき研究テーマを選定します。この合同専門委員会による選定プロセスを通じて、世界の英知を結集し、より効率的かつ効果的に研究開発を推進することを目指しています。I-NERIのような国際協力の枠組みは、原子力エネルギー分野の技術革新を加速させるだけでなく、参加国間の相互理解や信頼関係の構築にも貢献します。これは、原子力エネルギーの平和利用と持続可能な発展を促進する上で極めて重要な要素と言えるでしょう。

NERIの成果と今後の展望

NERI(原子力エネルギー研究所)は、設立以来、原子力エネルギーの平和利用と発展を目指し、たゆまぬ努力を続けてきました。その結果、数多くの画期的な技術を生み出し、世界の原子力研究開発を先導する役割を担ってきました。

NERIの輝かしい成果は、次世代原子炉の開発において特に顕著です。従来の原子炉よりも安全性と効率性を格段に向上させた革新的な設計により、エネルギー問題の解決に大きく貢献しています。さらに、使用済み核燃料の再処理技術においても世界をリードしており、資源の有効活用と環境負荷の低減に大きく貢献しています。

NERIは、その卓越した技術力と専門知識を活かし、国際的な共同研究プロジェクトにも積極的に参加しています。世界中の研究機関や企業と連携し、原子力の安全利用に関する知見を共有することで、より安全で持続可能な社会の実現を目指しています。

今後も、NERIは、世界が直面するエネルギー問題、環境問題、安全保障問題の解決に向けて、重要な役割を果たしていくことが期待されます。特に、気候変動問題の解決に貢献できる原子力エネルギーの潜在力を最大限に引き出すべく、革新的な技術開発と国際協力をさらに推進していく構えです。