電源開発促進法:日本の電力供給を支えた法律

電源開発促進法:日本の電力供給を支えた法律

電力を見直したい

先生、『電源開発促進法』って法律は、原子力発電とどう関係があるんですか?

電力の研究家

良い質問だね。実は『電源開発促進法』自体は、原子力発電だけに関係する法律ではないんだ。電気を作るための色々な方法について、開発を早く進めるための法律だったんだよ。

電力を見直したい

そうなんですか!じゃあ、原子力発電も、その『色々な方法』の一つだったってことですか?

電力の研究家

その通り!当時は、原子力発電も電気を作る新しい方法として期待されていたから、この法律で開発が促進された側面もあるんだ。ただ、今ではこの法律は廃止されているよ。

電源開発促進法とは。

「電源開発促進法」は、1952年にできた法律で、電気を作るための施設や電気を送るための施設を早く作ることで、電気の量を増やし、日本の産業を大きく発展させることを目的としていました。

この法律には、大きく分けて三つの内容がありました。(1) 電気をどのように開発していくかという基本的な計画を作ること、(2) 電気の開発について話し合う専門家の会議を作ること、(3) 電気の開発を行う会社を作ること、です。この法律のおかげで、長い間、日本の電気の開発は進みました。

しかし、2000年から2001年にかけて、国の役所の仕事の内容を見直すことになり、電気の開発について話し合う専門家の会議はなくなりました。その代わりに、エネルギー全体について考える会議の中に、電気の開発について専門的に話し合う場が作られました。また、電気の開発を行う会社も、国が所有するのではなく、民間企業になりました。そのため、2003年10月に「電源開発促進法」は廃止され、電気の開発に関する基本的な計画を作ることもなくなりました。

そこで、これまで基本的な計画が担っていた役割を引き継ぐため、2004年10月に「電源開発に係る地点の指定について」ということが政府で話し合われ、決定されました。具体的には、電気を作る場所の中で特に重要な場所については、電気を作る会社からの申請に基づいて、経済産業大臣が「重要電源開発地点」と指定することになりました。そして、その場所では、地元の人たちと合意を作ることや、関係する国の役所から許可を得ることをスムーズに行うことになりました。

電力不足解消のための法律制定

電力不足解消のための法律制定

1952年、戦争で荒廃した国土と疲弊した経済を立て直すために、あらゆる産業が活発化しつつありました。しかし、その一方で深刻な電力不足が大きな問題として浮上していました。工場を動かすにも、家庭に電気を届けるにも、十分な電力が足りていなかったのです。この状況を打開し、日本の未来を明るく照らすためには、安定した電力供給が不可欠でした。

そこで制定されたのが電源開発促進法です。この法律は、電力会社だけの努力に任せるのではなく、国が率先して電力開発を推進するという強い意志を示すものでした。具体的には、政府が資金調達や電力会社への援助を行うことで、水力発電所や火力発電所の建設を積極的に後押ししました。

電源開発促進法の制定は、単に法律ができたという事実以上に、国民全体で電力問題に取り組むという共通認識を生み出したという点で大きな意義がありました。そして、この法律を礎として、日本は電力不足を克服し、高度経済成長の時代へと力強く歩みを進めていくことになります。

時代背景 電力問題への取り組み 結果
1952年、戦後復興期
深刻な電力不足
電源開発促進法制定

  • 国が電力開発を推進
  • 政府による資金調達・電力会社への援助
  • 水力・火力発電所建設の推進
電力不足の克服
高度経済成長へ貢献

電源開発促進法の三本柱

電源開発促進法の三本柱

– 電源開発促進法の三本柱電源開発促進法は、文字通り日本の電源開発を促進するために制定された法律であり、その内容は大きく三つの柱で構成されていました。第一の柱は、長期的な視点に立った電源開発基本計画の策定です。これは、将来の経済成長や社会構造の変化を見据え、いつ、どのくらいの電力が必要になるのかを予測し、それに基づいて必要な発電所を計画的に建設していくための、いわば羅針盤の役割を担うものでした。第二の柱として、専門家による審議機関として電源開発調整審議会が設置されました。この審議会は、学識経験者や関係省庁の代表者によって構成され、電源開発に関する重要な事項について審議し、専門的な見地から意見を述べる役割を担っていました。例えば、新しい発電所の建設場所や出力規模、さらには環境への影響など、多岐にわたる観点から審議が行われました。そして第三の柱は、電源開発事業を担うための特殊会社として電源開発株式会社が設立されたことです。政府が出資するこの会社は、大規模な発電所の建設や運営を担い、日本の電力供給を支える重要な役割を果たすことになりました。このように、電源開発促進法は、計画の策定、専門家による審議、そして事業の実施という三つの柱からなる総合的な法律として、日本の電力供給の安定化に大きく貢献しました。

電源開発促進法の三本柱 内容
長期的な視点に立った電源開発基本計画の策定 将来の電力需要を予測し、必要な発電所の計画的な建設を図るための羅針盤
専門家による審議機関として電源開発調整審議会の設置 学識経験者等で構成され、電源開発に関する重要事項を審議し、専門的な見地から意見を述べる
電源開発事業を担うための特殊会社として電源開発株式会社の設立 政府が出資する会社で、大規模な発電所の建設や運営を担い、日本の電力供給を支える

長期にわたる貢献

長期にわたる貢献

電源開発促進法は、制定から50年近くにわたり、日本の電力供給の安定に大きく貢献してきました。
高度経済成長期には、増加の一途をたどる電力需要に対応するため、水力発電所の建設や火力発電所の増設が進められました。そして、石油に依存したエネルギー供給体制を見直し、資源の乏しい日本にとって重要な選択肢となる電源として、原子力発電の開発も積極的に推進されました。
この法律に基づき、電力会社は長期的な視野に立った電源開発計画を策定し、大規模な発電所の建設や送電網の整備を行いました。その結果、世界的に見ても高いレベルの電力供給安定性を実現し、日本の産業の発展を支えてきました。また、家庭への安定した電力供給は、人々の生活水準の向上にも大きく貢献しました。
電源開発促進法は、日本の高度経済成長を陰ながら支え、人々の暮らしを豊かにしてきた重要な法律と言えるでしょう。

時代 電力需要 電源開発促進法に基づく取り組み 結果
高度経済成長期 増加 – 水力発電所の建設
– 火力発電所の増設
– 原子力発電の開発推進
– 電力供給の安定
– 産業の発展
– 生活水準の向上

時代の変化と法律の廃止

時代の変化と法律の廃止

21世紀を迎えると、エネルギーを取り巻く状況は大きく様変わりしました。電力会社以外の事業者も発電事業に参入できる電力自由化や、二酸化炭素排出量削減が求められる地球温暖化問題など、従来の法律や制度では対応が難しい課題が次々と浮上してきたのです。

こうした時代の変化に対応するため、2003年、電源開発促進法は廃止されました。この法律は、戦後の深刻な電力不足を解消するために制定されたものでしたが、電力供給が安定した時代にはそぐわなくなっていました。

電源開発促進法の廃止に伴い、電源開発調整審議会もその役割を終えました。この審議会は、電源開発に関する重要事項を審議し、政府に答申する役割を担っていましたが、電力自由化によってその必要性が薄れたのです。

さらに、電源開発促進法に基づき設立された特殊会社である電源開発株式会社は、完全民営化へと舵を切りました。

また、政府が長期的なエネルギー政策の指針としていた電源開発基本計画も廃止。電力自由化によって、民間企業が主体的に発電事業を行う時代へと移り変わり、政府が詳細な計画を策定する必要性が薄れたためです。

変化 内容 理由
電源開発促進法 廃止 電力供給の安定化
電源開発調整審議会 役割終焉 電力自由化による必要性低下
電源開発株式会社 完全民営化
電源開発基本計画 廃止 電力自由化による民間企業主体化

新しい枠組み

新しい枠組み

1999年に電源開発促進法が廃止され、それに伴い、電力会社が自由に発電所の建設場所を選定できるようになりました。しかし、これは同時に、電力会社が地域住民との合意形成や環境への配慮をより一層求められるようになったことを意味します。
2004年には、こうした状況を踏まえ、政府は「電源開発に係る地点の指定について」を閣議了解しました。この閣議了解では、将来にわたって電力の安定供給を確保するために特に重要な電源開発地点を指定し、関係機関が連携して円滑な開発を図ることを明確にしています。
具体的には、電力会社は、発電所の建設にあたり、地域住民に対して、建設の必要性や安全性について丁寧に説明し、理解と協力を得るための努力がこれまで以上に求められるようになりました。また、環境への影響についても、最新の技術を導入するなどして、可能な限り低減する努力が求められます。
このように、電源開発は、電力会社だけの問題ではなく、政府、地域住民、電力会社が一体となって取り組むべき課題となっています。

年代 出来事 詳細
1999年 電源開発促進法廃止 電力会社が発電所の建設場所を自由に選定できるようになる。
地域住民との合意形成や環境への配慮がより重要になる。
2004年 電源開発に係る地点の指定について(閣議了解) 電力の安定供給確保のため重要な電源開発地点を指定。
関係機関による円滑な開発の推進。