放射線被ばくがもたらす不妊のリスク

放射線被ばくがもたらす不妊のリスク

不妊とは

– 不妊とは不妊とは、夫婦が避妊をせずに定期的な性交渉を行っているにも関わらず、一定期間妊娠に至らない状態を指します。 一般的には、一年間妊娠しない場合に不妊と診断されます。これは、子供が欲しくてもなかなか授かることができず、身体的、精神的、そして経済的な負担を抱える夫婦にとって、非常に辛い問題です。不妊の原因は、女性側、男性側、または両方に存在する可能性があり、その要因は実に様々です。 女性側では、排卵障害、卵管の閉塞や癒着、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮頸管の異常などが挙げられます。 排卵障害は、ホルモンバランスの乱れやストレス、過度なダイエットなどが原因で起こることがあります。 また、卵管の閉塞や癒着は、クラミジア感染症などの性感染症や、以前の腹部手術による癒着などが原因で起こることがあります。 子宮内膜症は、子宮内膜に似た組織が子宮以外の場所で増殖する病気で、激しい月経痛や性交痛、不妊の原因となります。一方、男性側では、精子の数や運動率の低下、精子の形異常などが挙げられます。 これらの原因としては、ホルモンバランスの乱れ、精索静脈瘤、感染症、先天的な異常などが考えられます。不妊治療は、その原因や夫婦の状況によって異なり、タイミング法、人工授精、体外受精など、様々な方法があります。 近年では、医療技術の進歩により、不妊治療の選択肢は広がってきています。 しかし、治療には肉体的、経済的な負担も大きく、精神的なストレスも伴います。 そのため、不妊に悩む夫婦は、医師やカウンセラーとよく相談し、自分たちに合った治療法を見つけていくことが大切です。

放射線と生殖機能への影響

私たち人間を含む、生物の細胞には、遺伝情報であるDNAが存在します。このDNAは、放射線を浴びることで傷ついてしまうことがあります。傷ついたDNAは、細胞の働きに様々な影響を及ぼし、場合によっては細胞を死に至らしめることもあります。
生殖機能に関わる臓器、具体的には精子や卵子を作る組織も、放射線の影響を受けやすいことが分かっています。高い線量の放射線を浴びると、これらの組織で細胞分裂が妨げられ、精子や卵子がうまく作られなくなることがあります。その結果、妊娠しにくくなる、つまり不妊の原因となる可能性があります。
特に、お腹の中にいる赤ちゃんや、成長過程にある子供は、放射線の影響を受けやすい点は注意が必要です。大人と比べて細胞分裂が活発なため、DNAが傷つくリスクが高まります。その結果、将来、大人になってから生殖機能に問題が生じる可能性も考えられます。

しきい値線量と不妊のリスク

人の体には、子孫を残すための大切な器官である生殖腺があります。卵巣や精巣といった器官がこれにあたり、これらの器官が放射線を浴びると、将来的に妊娠しにくくなる、あるいは全く妊娠できなくなるリスクがあります。そして、妊娠に影響が出る可能性が出てくる線量の値のことを、しきい値線量と呼びます。

このしきい値線量は、一律に決まっているわけではなく、人によって異なってきます。一般的に、年齢を重ねるとともに、しきい値線量は高くなる傾向にあります。つまり、若年層の方が、しきい値線量は低く、少量の放射線でも影響を受けやすいと言えます。また、一度に大量の放射線を浴びる急性被ばくの場合、低い線量でも不妊のリスクが高まるとされています。

放射線は目に見えず、また、被ばくした直後に影響が出るとは限りません。将来、子供が欲しいと考えるのであれば、なおさら放射線の影響について正しく理解し、日頃から被ばくを避ける努力をすることが大切です。

急性被ばくによる不妊

一度に大量の放射線を浴びることを急性被ばくといいますが、この急性被ばくによって引き起こされる不妊の状態は、浴びた放射線の量によって大きく異なり、一時的なものから永続的なものまで様々です。

研究によると、約４グレイまでの急性被ばくでは、一時的に生殖機能が低下し、子どもを授かりにくくなる可能性があります。しかし、多くの場合、この状態は一時的なものであり、時間経過とともに回復し、再び子どもを授かることができるようになることが分かっています。

一方で、3グレイから10グレイという、より大量の放射線を浴びてしまった場合には注意が必要です。このような場合、放射線の量が多くなるほど、卵子や精子が作られる機能が損なわれ、その結果、永続的な不妊症を引き起こす可能性が高くなってしまいます。 つまり、二度と子どもを授かることができなくなる可能性が高くなるのです。

年齢による感受性の違い

放射線被曝によって生じる健康への影響の一つに、生殖機能の低下、つまり不妊のリスクがあります。そして、この不妊のリスクは、年齢によって異なることが分かっています。

一般的に、若い女性ほど放射線への感受性が高く、不妊のリスクも高くなる傾向にあります。これは、女性の体内では、生まれた時から将来赤ちゃんを授かるために必要な卵子の数が決まっており、年齢を重ねるごとにその数は減っていくためです。

若い女性の卵巣には、まだたくさんの卵子が存在しています。放射線は細胞を傷つける性質があり、卵子も例外なく損傷を受けます。そのため、多くの卵子を持つ若い女性は、放射線の影響を受けやすく、不妊のリスクが高くなると考えられています。

一方、すでに閉経を迎えた女性の場合、卵巣機能が低下し、新たに卵子が作られることはありません。そのため、放射線による卵子への影響は少なく、不妊のリスクは低いと考えられています。

ただし、これはあくまでも一般的な傾向であり、個人差がある点は留意が必要です。年齢に関わらず、放射線被曝は可能な限り避けることが大切です。