がん

放射線について

がん治療の進化:トモセラピーとは

がんは、現代社会において私たち人類が直面する深刻な病気の一つであり、その治療法の開発と進歩は日進月歩で続いています。数あるがん治療法の中で、放射線治療は手術や薬物療法と並んで、がん治療の三本柱として重要な役割を担っています。 放射線治療は、高エネルギーの放射線をがん病巣に照射することで、がん細胞の遺伝子を破壊し、その増殖能力を奪う治療法です。放射線は正常な細胞にも影響を与える可能性がありますが、がん細胞は正常な細胞に比べて放射線に対する感受性が高いため、正常な細胞への影響を抑えつつ、がん細胞を効果的に攻撃することができます。 放射線治療の大きな利点の一つに、身体への負担が少ないことが挙げられます。外科手術のように身体を切開する必要がなく、治療に伴う痛みや出血もほとんどありません。また、多くの場合、入院の必要がなく、外来通院で治療を受けることができるため、患者さんは日常生活を送りながら治療を継続することができます。これは、患者さんの肉体的、精神的な負担を軽減し、生活の質を維持する上で非常に重要な要素となります。
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確率的影響: 放射線被曝のリスク

- 確率的影響とは 確率的影響とは、放射線を浴びることによって起こる可能性のある健康への悪影響のことです。 放射線を浴びることを被曝といいますが、被曝したからといって必ず健康に影響が出るわけではありません。影響が出る確率は、浴びた放射線の量に比例します。 放射線による健康影響には、ある一定量以上の被曝量でなければ影響が現れない「しきい値」があるものと、しきい値がなく、わずかな量でも影響が出る可能性があるものがあります。 確率的影響は、後者に分類されます。 つまり、どんなにわずかな量の放射線であっても、確率的影響が出る可能性はゼロではありません。しかし、被曝量が少なければ、影響が出る確率も低くなるという特徴があります。 確率的影響の代表的なものとしては、がんや遺伝性の病気などが挙げられます。
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多発性骨髄腫:沈黙の病魔を知る

- 多発性骨髄腫とは多発性骨髄腫は、血液のがんの一種で、骨髄という血液細胞を作り出す組織で発生します。通常、私たちの体では、細菌やウイルスなどの異物から体を守るために、様々な種類の血液細胞が作られています。その中でも、形質細胞と呼ばれる白血球は、体内に侵入してきた異物を攻撃する抗体というたんぱく質を作り出す役割を担っています。健康な状態では、形質細胞は骨髄内で正常にコントロールされながら働いていますが、多発性骨髄腫を発症すると、この形質細胞ががん化し、骨髄内で無秩序に増殖し始めます。がん化した形質細胞は、骨を溶かす物質を放出するため、骨がもろくなって骨折しやすくなったり、血液中のカルシウム濃度が高くなり、様々な症状を引き起こすことがあります。また、がん化した形質細胞が増殖することで、正常な血液細胞が作られにくくなり、貧血や免疫力の低下といった症状も現れます。多発性骨髄腫は、比較的まれな病気ですが、高齢者に多く見られ、その原因は完全には解明されていません。
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原子力発電と晩発障害:将来に影を落とすリスク

- 放射線被ばくによる晩発障害とは原子力発電は、私たちの暮らしに欠かせない電気を供給してくれる一方で、放射線被ばくという危険な側面も持ち合わせています。放射線は目に見えず、臭いもしないため、被ばくしたことに気づかない場合もあります。放射線被ばくによる健康への影響は、被ばくした量や時間、身体の部位によって様々ですが、特に注意が必要なのが「晩発障害」と呼ばれるものです。晩発障害とは、放射線を浴びてから症状が現れるまでに長い年月を要する障害のことを指します。放射線は細胞の遺伝子を傷つける性質があり、その傷ついた細胞が長い年月をかけてがん細胞へと変化することで、白血病や固形がんといった病気を発症するリスクが高まります。晩発障害は、被ばくしてから数年後、あるいは数十年後に発症することもあり、将来にわたり健康に影を落とす可能性を秘めているのです。具体的には、骨髄に影響が及べば白血病、甲状腺に影響が及べば甲状腺がん、肺に影響が及べば肺がんなど、身体の様々な部位でがんが発生するリスクが高まります。また、白内障や不妊症といった病気のリスクも高まるとされています。晩発障害のリスクを低減するためには、放射線からの防護が何よりも重要です。原子力発電所では、放射線被ばくを最小限に抑えるための様々な対策が講じられています。私たち一人ひとりが放射線被ばくについて正しく理解し、安全に対する意識を高めていくことが大切です。
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成人T細胞白血病:知られざる脅威

- 成人T細胞白血病とは 成人T細胞白血病は、成人T細胞白血病ウイルス(ATLV)というウイルスが原因で発症する血液のがんです。 私たちの体内には、外部から侵入してきた細菌やウイルスから体を守る「免疫」というシステムが備わっています。 この免疫システムにおいて、リンパ球は重要な役割を担っています。 ATLVはこのリンパ球のうち、T細胞と呼ばれる細胞に感染します。 すると、T細胞はウイルスの影響でがん化し、異常に増殖を始めます。 その結果、血液のがんである白血病を発症してしまうのです。 ATLVは、感染した人の血液や体液を介して、他の人に感染する可能性があります。 主な感染経路としては、母親から子どもへの母子感染、性交渉による感染、血液製剤の使用などが挙げられます。 ただし、ATLVは日常生活で容易に感染するような、強い感染力を持ったウイルスではありません。 さらに、感染したとしても、発症に至る人はごくわずかであることが知られています。
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沈黙の影:肺がんを知る

- 肺がんとは肺がんは、私たちの呼吸を司る大切な器官である肺にできる悪性腫瘍です。肺は、体中に酸素を取り込み、不要な二酸化炭素を排出する役割を担っており、生命維持に欠かせない臓器です。この肺にがんが発生すると、呼吸のたびに酸素を取り込むという肺本来の機能が損なわれ、息苦しさや咳などの症状が現れます。肺がんは、肺の細胞が何らかの原因でがん化することによって発生します。がん細胞は、正常な細胞とは異なり、無秩序に増殖を続け、周囲の正常な組織を破壊しながら成長していきます。さらに、進行すると、血液やリンパ液の流れに乗って、他の臓器に転移することもあります。転移が起こると、がんはさらに広がり、治療が困難になる可能性があります。肺がんは、日本人の死亡原因の上位に位置する深刻な病気です。早期発見、早期治療が重要であり、定期的な健康診断などを通じて、早期発見に努めることが大切です。
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バーキットリンパ腫:謎多き血液がん

バーキットリンパ腫は、1958年にアフリカで初めて確認された悪性リンパ腫の一種です。リンパ腫とは、リンパ球と呼ばれる血液のがん細胞が、リンパ節や脾臓、骨髄などで異常に増殖する病気です。バーキットリンパ腫は、その中でも特に小児に多く見られ、顎の骨に腫瘍ができるという特徴があります。顎の骨以外にも、消化管や卵巣、中枢神経などに腫瘍が発生することもあります。 この病気は、アフリカ、特にサハラ砂漠以南の地域で多く見られます。これらの地域はマラリアが流行しており、マラリアへの感染がバーキットリンパ腫の発症リスクを高めると考えられています。マラリアによって免疫力が低下することが、発症の一因とされています。 バーキットリンパ腫は、非常に進行が速いがんであり、早期の発見と治療開始が極めて重要です。治療法としては、抗がん剤による化学療法が中心となります。 抗がん剤を適切に使用することで、完治も可能な病気です。 しかし、治療開始が遅れてしまうと、がんが全身に広がり、治癒が困難になるケースもあります。そのため、アフリカなどの流行地域では、早期発見と迅速な治療体制の構築が課題となっています。
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原子力と悪性新生物:知っておくべきこと

- 悪性新生物とは私たちの体は、実に60兆個ともいわれる小さな細胞が集まってできています。 それぞれの細胞は、分裂と死を繰り返しながら、私たちの体をつくり、生命を維持するために働いています。 しかし、この細胞の働きが正常に行われなくなった状態が、病気の原因となることがあります。その代表的な例が悪性新生物、つまり「がん」と呼ばれる病気です。がん細胞は、無秩序に増殖を続けるという特徴を持っています。 正常な細胞であれば、隣り合う細胞同士が互いに影響し合いながら、必要な時に必要なだけ分裂を行います。 しかし、がん細胞は、この正常な細胞のルールに従わず、際限なく増え続けるため、周囲の組織を破壊し、臓器の働きを低下させてしまいます。さらに恐ろしいことに、がん細胞は、血液やリンパ液の流れに乗り、体の他の場所に移動し、そこで再び増殖を始めることがあります。これを「転移」と呼びます。 転移が起こると、治療がより困難になる場合が多く、命にかかわることもあります。このように、悪性新生物は私たちの体にとって非常に危険な病気です。 しかし、早期に発見し、適切な治療を行えば、治癒できる可能性も高まります。 ですから、体の異変に気づいたら、ためらわずに医療機関を受診することが大切です。
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あまり知られていない癌、肉腫とは

- 肉腫の定義私たちの身体は、様々な組織で構成されています。筋肉や骨のように身体を動かしたり支えたりするもの、脂肪のようにエネルギーを蓄えたり体温を保ったりするもの、神経のように情報を伝達するものなど、それぞれが重要な役割を担っています。これらの組織を繋ぎ合わせ、保護しているのが結合組織です。肉腫は、この結合組織に発生する悪性腫瘍です。つまり、筋肉、骨、脂肪、神経などを支えたり、保護したりする組織から発生するがんのことを指します。発生する部位は全身に及び、骨盤内や手足の奥深くなど、体の奥深い場所にできることもあります。肉腫は、がんの中でも比較的まれな病気です。しかし、子どもから大人まで、あらゆる年齢層で発症する可能性があります。そのため、早期発見・早期治療が非常に重要となります。