イリジウム192

放射線について

前立腺がん治療の革新:シード線源療法

- シード線源とはシード線源とは、前立腺がんの放射線治療で用いられる、米粒よりも小さな放射線源のことを指します。その名の通り、治療に必要な放射線を出す小さな「種」を患部に埋め込む治療法に用いられます。シード線源は、直径わずか0.8mm、長さ4.5mmという非常に小さく、体内に入れても違和感が少ないのが特徴です。材質はチタンでできており、その中に放射性ヨウ素(I-125)が封入されています。チタン製のカプセルは体内に入れた後も壊れたり溶けたりすることはなく、安全に体外に排出されます。シード線源から放出される放射線は、周囲の正常な組織への影響を最小限に抑えながら、がん細胞に集中的に照射されます。これにより、がん細胞を死滅させ、前立腺がんの治療効果を高めることが期待できます。
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がん治療における後充填法:医療従事者を守る技術

- 後充填法とはがんの放射線治療の一種に、放射線を出す小さな線源を体内の患部に直接送り込んで治療を行う方法があります。この治療法は、体の外側から放射線を照射する方法と比べて、周囲の正常な組織への影響を抑えつつ、集中的にがん細胞を攻撃できるという利点があります。 後充填法は、このような放射線治療において、線源を体内に送り込むための画期的な方法です。従来の方法では、あらかじめ線源を挿入した状態で治療を行っていましたが、後充填法では、まずアプリケータと呼ばれる細い管だけを体内の患部に設置します。そして、線源は治療の直前にこのアプリケータを通して挿入し、治療が終われば速やかに取り出すのです。 この方法の最大のメリットは、医療従事者の放射線被ばくを大幅に減らせる点にあります。従来の方法では、線源の挿入から抜去まで医療従事者が線源の近くに留まり、作業を行う必要がありました。しかし、後充填法では、線源の挿入と抜去は治療の直前と直後に行われ、その間医療従事者は線源から離れた安全な場所にいられます。また、アプリケータの位置が適切かどうかを事前に確認できるため、より安全で正確な治療が行えます。
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現代医療を支えるイリジウム線源

- イリジウム線源とはイリジウム線源は、イリジウム192という物質から発生する放射線を利用した線状の放射線源です。イリジウム192は、原子炉で人工的に作られる放射性同位元素で、時間の経過とともに放射線を放出しながら別の安定した元素へと変化していく性質を持っています。この放射線を出す性質を利用して、医療分野ではがん治療に、工業分野では非破壊検査などに広く活用されています。-# がん治療におけるイリジウム線源イリジウム線源から放出される放射線は、ガンマ線と呼ばれる高いエネルギーを持った電磁波です。このガンマ線は、物質を透過する力が強く、体の深部にあるがん細胞にまで到達して、その細胞の遺伝子を破壊し、増殖を抑える効果があります。イリジウム線源を使ったがん治療は、放射線治療の一つとして「密封小線源治療」と呼ばれており、線源を体内に挿入する「腔内照射」や体外から照射する「組織内照射」などの方法があります。-# 工業分野におけるイリジウム線源工業分野では、イリジウム線源は非破壊検査に用いられます。これは、対象物を壊すことなく内部の状態を検査する方法です。イリジウム線源から出るガンマ線を対象物に照射し、その透過の様子をフィルムや検出器で捉えることで、内部の亀裂や欠陥などの有無を調べることができます。このように、イリジウム線源は医療分野から工業分野まで幅広く利用されており、私たちの生活の様々な場面で役立っています。