コッククロフト・ワルトン型加速器

その他

加速器の歴史を開いたコッククロフト・ワルトン型加速器

20世紀初頭、物質の根源を探る科学の世界では、原子の構造が徐々に明らかになりつつありました。原子の中心には、プラスの電気を帯びた原子核が存在し、その周りをマイナスの電気を帯びた電子が飛び回っているという描像です。しかし、原子核は非常に小さく、その内部構造やそこに働く力は謎に包まれていました。 この謎を解き明かすためには、原子核を構成する粒子を互いに衝突させ、その反応を観測する必要がありました。しかし、原子核はプラスの電気を帯びているため、互いに反発し合って簡単には近づけません。そこで、原子核同士を衝突させるために開発されたのが粒子加速器です。 粒子加速器は、電場や磁場を使って荷電粒子を加速し、高いエネルギー状態を作り出す装置です。1932年、イギリスの物理学者コッククロフトとワルトンは、世界で初めて原子核反応を人工的に起こすことに成功した加速器を開発しました。これは、高電圧発生装置と直線状の加速管を組み合わせた画期的な装置で、彼らはこの功績により1951年にノーベル物理学賞を受賞しました。コッククロフト・ワルトン型加速器の登場は、原子核物理学という新たな学問分野の幕開けを告げるものでした。