電子対生成:エネルギーから物質への変換
エネルギーと物質は、切っても切り離せない関係にあります。特に原子力の分野においては、その相互作用が顕著に現れます。その中でも、電子対生成は、まるでSF小説の世界のような現象と言えるでしょう。
原子番号の高い原子核の近傍で、高いエネルギーを持った光子、すなわちガンマ線が物質と衝突すると、驚くべきことが起こります。エネルギーが物質へと転換し、電子とその反粒子である陽電子が、文字通り何もない空間から対になって生成されるのです。
この現象を理解するには、アインシュタインが提唱した特殊相対性理論とエネルギーと質量の等価性を表す有名な式 -E=mc²- が欠かせません。高いエネルギーを持つガンマ線は、そのエネルギーを質量に変換し、電子と陽電子を作り出すための材料とするのです。
電子対生成は、宇宙線が大気中の原子と衝突する際など、自然界でも観測されますが、原子力発電や医療分野でも利用されています。例えば、陽電子断層撮影法(PET)は、この現象を利用して体内の様子を画像化する技術です。
このように、電子対生成は、エネルギーと物質の相互作用が織りなす、摩訶不思議で奥深い現象の一つと言えるでしょう。