
エネルギー変化を伴う散乱:コンプトン効果
- X線とγ線
X線とγ線は、電磁波と呼ばれる波の中で、波長が特に短く、振動数が非常に高いという特徴を持っています。電磁波は、波長が短いほど、持つエネルギーが高い性質があります。そのため、X線とγ線は、物質を透過する能力や、物質に変化をもたらす力が強いという特徴を持っています。
この高いエネルギーを持つX線とγ線は、医療現場や工業分野など、様々な分野で活用されています。
医療現場では、X線撮影など、体の内部の状態を画像として確認する画像診断に広く利用されています。これは、X線が骨などの硬い組織を透過しにくい性質を利用し、体の内部構造を影絵のように映し出すことができるためです。また、γ線は、その強いエネルギーを利用して、がん細胞を死滅させる放射線治療にも利用されています。
工業分野では、材料の内部の欠陥を検査する非破壊検査に、X線やγ線が利用されています。X線やγ線を材料に照射し、その透過の様子を調べることで、内部に隠れた亀裂や空洞などの欠陥を、材料を壊すことなく見つけることができます。
このように、X線とγ線は、医療や工業など、様々な分野で欠かせない役割を担っています。これらの放射線は、物質と相互作用することで様々な現象を引き起こしますが、その一つに、光が電子と衝突することでエネルギーと運動方向を変えるコンプトン効果と呼ばれる現象があります。