ステファン・ボルツマンの法則

原子力発電の基礎知識

原子力発電と放射伝熱

- エネルギー移動の仕組み 原子力発電は、ウラン燃料の核分裂反応で発生する莫大な熱エネルギーを電力の形に変換することで、私たちが日々使っている電気を作っています。この熱エネルギーを効率よく電力に変換するためには、熱を発生源から他の場所へ移動させる必要があり、その移動手段として「伝導」「対流」「放射」と呼ばれる三つの基本的な形態が存在します。 「伝導」は、物質内部を熱が移動していく現象を指します。物質を構成する原子や分子が振動し、隣接する原子や分子にその振動エネルギーを伝えていくことで熱が伝わります。例えば、鍋を加熱すると、熱源に接する鍋底から徐々に鍋全体に熱が伝わっていくのは伝導によるものです。 「対流」は、液体や気体の流れによって熱が運ばれる現象です。温まった液体や気体は密度が小さくなり上昇し、冷たい液体や気体は下降するため、循環することで熱が効率的に運ばれます。例えば、お風呂を沸かす際、お湯が対流することで浴槽全体が温まります。 「放射」は、電磁波を介して熱が伝わる現象であり、伝導や対流とは異なり、物質を介さずに真空中でも熱を伝えることができます。太陽の光が地球に届き私たちを暖めるのは放射の典型的な例です。原子力発電所では、この三つの熱の移動メカニズムを巧みに利用することで、原子炉で発生した熱を効率よく電力に変換しています。
原子力発電の基礎知識

完全黒体と放射エネルギー

私たちの身の回りにある物体は、光や熱といった電磁波を常に放射しています。しかし、その放射の仕方は物体によって様々です。例えば、太陽の光を浴びた時、黒い服は熱くなりやすく、白い服は比較的温度が上がりにくいと感じたことはありませんか?これは、物体が持つ色や材質によって、電磁波の吸収率や反射率が異なるからです。 このような現象を理論的に扱うために、物理学では「完全黒体」という概念を用います。完全黒体とは、外部から入射してくるあらゆる波長の電磁波を、一切反射することなく完全に吸収する、仮想的な物体のことです。完全黒体は、現実には存在しませんが、理論的なモデルとして非常に重要です。 完全黒体は、電磁波を完全に吸収するだけでなく、その温度に応じた電磁波を放射します。この放射される電磁波のスペクトルは、物体の種類や形状には一切依存せず、温度のみに依存します。つまり、完全黒体の放射スペクトルを調べることで、その物体の温度を正確に知ることができるのです。このことから、完全黒体は温度を測る標準としても利用されています。