ナトリウム-水反応

原子力の安全

原子力安全の要:ナトリウム-水反応試験装置

- 高速増殖炉の夢と挑戦エネルギー資源に乏しい日本では、将来にわたってエネルギーを安定的に確保することが課題となっています。その解決策の一つとして、高速増殖炉は長年期待されてきました。高速増殖炉は、ウラン資源を有効活用できる夢の原子炉として、エネルギー安全保障の切り札として期待されています。しかし、高速増殖炉の実現には、従来の原子炉とは異なる安全対策が必須です。高速増殖炉は、中性子の速度を落とさずに核分裂反応を起こすため、冷却材に水ではなくナトリウムを使用します。ナトリウムは熱伝導率に優れている一方、水と激しく反応する性質があります。そのため、高速増殖炉では、ナトリウムと水が直接接触することがないよう、厳重な設計と運転管理が求められます。ナトリウムと水の反応は、高速増殖炉特有の重要な安全評価項目の一つです。万が一、炉内でナトリウムと水が反応すると、水素が発生し、炉内圧力が上昇する可能性があります。最悪の場合、炉の健全性を損ない、放射性物質が環境中に放出されるリスクも孕んでいます。このため、高速増殖炉の開発では、ナトリウムと水の反応を抑制するための様々な対策が講じられています。例えば、ナトリウムと水との接触を物理的に遮断する二重壁構造の採用や、ナトリウムの漏洩を早期に検知するシステムの導入などが挙げられます。高速増殖炉は、日本のエネルギー問題解決への期待を背負っていますが、その実現には、ナトリウム冷却材の安全性確保が最重要課題です。関係機関は、更なる研究開発と安全評価を通じて、国民の理解と信頼を獲得していく必要があります。