ヒドラジン

原子力の安全

原子力発電におけるヒドラジン

- ヒドラジンとはヒドラジンは、化学式N₂H₄で表される、無色透明で特有のツンとした臭いを持つ液体です。常温では空気中の水分と反応して白く煙る性質があり、水やアルコールなどの液体によく溶け込みます。 ヒドラジンは強い還元作用を持つことが大きな特徴です。還元作用とは、物質が電子を受け取る化学反応のことです。この性質を利用して、ヒドラジンは様々な分野で活用されています。 例えば、ボイラー水中の酸素を除去するために使用されます。ボイラーは高温高圧の水蒸気を発生させる装置ですが、内部に酸素が残っていると腐食の原因となります。そこで、還元作用を持つヒドラジンを添加することで、酸素を水へと変化させ、腐食を防止しています。 また、ロケットの燃料としても重要な役割を担っています。ヒドラジンは酸化剤と反応して高温のガスを発生するため、その推進力でロケットを打ち上げます。 その他にも、医薬品や農薬の製造など、幅広い分野で使用されています。 ヒドラジンの融点は1.4℃、沸点は113.5℃と、比較的低い温度で液体から気体へと変化します。密度は25℃で1.0 g/cm³であり、水とほぼ同じです。
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原子力発電の減肉現象とは

- 減肉現象の概要原子力発電所の中心的な設備である原子炉。その原子炉で発生させた熱を利用して蒸気を作り出す重要な装置が蒸気発生器です。この蒸気発生器には、熱の受け渡しを行うために多数の伝熱管が設置されています。減肉現象とは、この伝熱管の肉厚が薄くなってしまう現象を指します。伝熱管は、高温高圧の水や蒸気が流れる厳しい環境下に置かれているため、経年劣化は避けられません。しかし、減肉現象は通常の経年劣化とは異なり、腐食や摩耗などによって想定以上の速度で肉厚が減少していく点が特徴です。減肉現象が進行すると、伝熱管の強度が低下し、最悪の場合には破損に至る可能性があります。もし伝熱管が破損すると、放射性物質を含む水が蒸気発生器外部に漏えいする可能性も出てきます。このような事態を避けるため、減肉現象は原子力発電所の安全性に影響を与える可能性があると考えられています。そのため、原子力発電所では、減肉現象の発生を抑制するための対策や、早期発見のための検査技術の開発など、様々な取り組みが行われています。