ポンプ

原子力の安全

原子力発電の心臓を守る、キャンドローターポンプ

- キャンドローターポンプとはキャンドローターポンプは、その名の通り、缶詰のような独特な形状をしたポンプです。一般的なポンプは、モーターで軸を回転させ、その回転をポンプ部に伝えることで液体を送り出します。しかし、キャンドローターポンプは、モーターの回転子とポンプの回転部分を一体化し、直接作動液の中に沈めて使用します。一般的なポンプでは、回転を伝えるために軸とポンプ部の間に隙間が必要ですが、キャンドローターポンプにはその隙間がありません。そのため、液漏れのリスクが非常に低く、放射性物質を含む液体を扱う原子力発電所などで広く採用されています。また、軸を介さずに回転を伝えるため、振動や騒音が少なく、静粛性が高いことも特徴です。さらに、シンプルな構造であるため、小型化・軽量化が可能で、設置場所の自由度が高い点もメリットとして挙げられます。一方で、回転部分を作動液に浸す構造上、粘性の高い液体には適さないという側面もあります。このように、キャンドローターポンプは、原子力発電所をはじめ、高い信頼性と安全性が求められる現場で活躍する、特殊なポンプと言えます。
原子力施設

進化した原子炉の心臓部:内蔵型再循環ポンプ

原子力発電は、多くのエネルギーを生み出し安定して電気を供給できるという点で、私たちの社会にとって重要な役割を担っています。その一方で、発電所は高い安全性が求められており、より安全にそして効率的に電気を生み出すための技術革新が日々進められています。 その革新的な技術の一つに、改良型沸騰水型原子炉(ABWR)に採用された内蔵型再循環ポンプがあります。従来の沸騰水型原子炉では、原子炉の外に設置された再循環ポンプを使って炉心の冷却水を循環させていました。しかし、この方法では、配管やバルブなど原子炉の外にある機器が増えるため、故障のリスクが高まる可能性がありました。 そこで開発されたのが、内蔵型再循環ポンプです。このポンプは原子炉圧力容器の中に設置されるため、原子炉の外にある機器を減らすことができます。その結果、配管の破損などによる冷却水漏れのリスクを抑え、原子炉の安全性を更に向上させることが可能となりました。 また、内蔵型再循環ポンプは、従来の外部ポンプに比べて小型軽量であるため、建設コストの削減にも貢献します。 このように、原子力発電は安全性と効率性を更に高めるための技術開発が進められています。内蔵型再循環ポンプはその一例であり、原子力発電の信頼性を高める上で重要な役割を担っています。
原子力発電の基礎知識

原子力発電のコーストダウン運転とは?

- コーストダウン運転の概要原子力発電所では、炉心内で核燃料が徐々に燃焼していくため、運転期間の後半になると、設計当初の出力で運転を続けることが難しくなります。このような場合に、徐々に原子炉の出力を低下させていく運転方法を「コーストダウン運転」と呼びます。 コーストダウン運転は、燃料の消費が進んだ車を、燃料切れになるまで走り続けるのではなく、速度を徐々に落として燃費良く走行距離を伸ばすことに似ています。この運転方法を採用する主な目的は2つあります。まず、核燃料をより効率的に利用するためです。 出力を一定に保つよりも、徐々に低下させていく方が、同じ量の燃料からより多くのエネルギーを取り出すことができます。もう一つの目的は、発電所の定期検査時期を調整するためです。 原子力発電所では、一定期間ごとに運転を停止して設備の点検や補修などを行う定期検査が義務付けられています。 コーストダウン運転を行うことで、燃料の残量を調整し、次の定期検査の時期に合わせて運転を終了することが可能となります。このように、コーストダウン運転は、燃料の有効活用と発電所の効率的な運用に大きく貢献する運転方法と言えるでしょう。
原子力施設

原子力発電の心臓部:一次冷却材ポンプ

原子力発電所では、原子炉の中で起こる核分裂反応を利用して膨大な熱エネルギーを生み出しています。この熱エネルギーを効率的に電力に変換するために、原子炉内では水が重要な役割を担っています。 原子炉の中心部には、核分裂反応を起こす燃料体と呼ばれるものが収納されています。燃料体内で発生した熱は、「一次冷却材」と呼ばれる水が吸収します。一次冷却材は原子炉の中を循環しながら燃料体から熱を奪い、自身の温度を上昇させます。 高温になった一次冷却材は原子炉の外にある蒸気発生器へと送られます。蒸気発生器は、一次冷却材と二次冷却材と呼ばれる水との間で熱交換を行う装置です。一次冷却材は蒸気発生器内で二次冷却材に熱を渡し、自らは温度を下げて再び原子炉へと戻っていきます。 一方、熱を受け取った二次冷却材は蒸気へと変化します。この高温高圧の蒸気がタービンと呼ばれる羽根車を勢いよく回転させることで、電力が生み出されるのです。 このように、原子力発電所では水が熱の運び役として重要な役割を担っており、原子炉内を循環することで熱エネルギーを効率的に電力に変換することを可能にしています。