ADS開発を牽引する欧州のXADS計画
エネルギー資源の乏しい我が国において、原子力発電は欠かすことのできない発電方法の一つです。しかし、従来の原子力発電は、安全性や高レベル放射性廃棄物の処理などが課題として挙げられてきました。これらの課題を解決し、より安全でクリーンなエネルギー源として期待されているのが、「加速器駆動システム(ADS)」を用いた次世代原子力発電です。
従来の原子炉では、ウランやプルトニウムなどの核分裂しやすい物質を炉心に配置し、連鎖的に核分裂反応を起こすことで熱エネルギーを生み出しています。一方、ADSは加速器を用いて陽子を光速に近い速度まで加速させ、重金属の標的に衝突させることで中性子を発生させます。この中性子を核燃料に照射することで核分裂反応を制御します。
ADSには、従来の原子炉と比べて次のような利点があります。まず、加速器を停止させることで核分裂反応を瞬時に止めることができるため、安全性に優れています。次に、長寿命の放射性廃棄物を短寿命の物質に変換することができるため、環境負荷を低減できます。さらに、ウラン資源を有効活用できるという点も大きなメリットです。
ADSは、次世代の原子力発電の鍵となる技術として、世界中で研究開発が進められています。実用化にはまだ時間がかかるとされていますが、エネルギー問題や環境問題の解決に大きく貢献する可能性を秘めた技術として、今後の発展に期待が寄せられています。