三重水素

核燃料

トリチウム回収技術:原子力発電の未来のために

原子力発電は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素をほとんど排出しない、環境に優しい発電方法として期待されています。しかし、その安全性をより高めるためには、運転を終えた後の燃料、いわゆる使用済み燃料を適切に処理することが非常に重要となります。 使用済み燃料には、エネルギーを生み出す核燃料物質であるウランやプルトニウムだけでなく、トリチウムと呼ばれる物質も含まれています。トリチウムは水素の一種で、自然界にもわずかに存在していますが、原子力発電所では人工的に作られます。 トリチウムは水に溶けやすく、水蒸気となって空気中に広がりやすい性質を持っています。そのため、もしも環境中に放出されてしまうと、雨水に溶け込んだり、土壌に吸着したりして、私たちの生活圏である水や農作物に取り込まれてしまう可能性があります。 トリチウムは人体に直接的な影響を与えることはほとんどないとされていますが、長期間にわたって体内に取り込まれ続けると健康への影響も懸念されます。将来にわたって安心して原子力発電の利用を続けるためには、環境中への放出を可能な限り抑えることが重要です。 そのため、使用済み燃料からトリチウムを効率的に分離し、回収する技術の開発が急務となっています。この技術開発によって、環境への影響を最小限に抑え、原子力発電の安全性をより高めることが期待されています。
核燃料

トリチウム:核融合の燃料

- トリチウムとは水素は私達の身の回りにありふれた元素ですが、その仲間であるトリチウムは、原子核の中に陽子1個と中性子2個を持つ特別な水素です。私達が普段目にする水素は原子核に陽子を1つだけ持ちますが、トリチウムは中性子を2つも余分に持っているため、その分だけ重くなります。そのため、トリチウムは三重水素とも呼ばれます。通常の元素記号では水素はHと表しますが、トリチウムは3HあるいはTと表記されます。このトリチウムは、放射線を出す性質を持つ放射性同位体として知られています。自然界では、トリチウムは宇宙から飛来する宇宙線と大気中の窒素や酸素が反応することでごく微量ですが生まれています。また、原子力発電所では原子炉の中でウランが核分裂する際に人工的にトリチウムが生成されます。原子力発電所では、使用済み燃料の再処理を行う際に、このトリチウムが環境中に放出されることがあります。
核燃料

トリチウム:核融合の未来を担う元素

- トリチウムとは?水素は、私たちの身の回りにもっとも多く存在する元素の一つです。水素の仲間であるトリチウムも、自然界にごくわずかに存在しています。では、このトリチウムとは一体どんな物質なのでしょうか。トリチウムは、水素の一種ですが、普通の水素とは原子核の構造が異なります。原子は、中心にある原子核と、その周りを回る電子からできています。さらに原子核は、陽子と中性子で構成されています。 水素の原子核は、陽子1つだけでできています。一方、トリチウムは、陽子1つに加えて、中性子を2つも含んでいます。このため、トリチウムは「三重水素」とも呼ばれます。トリチウムは、自然界では、宇宙線と大気の反応によってごく微量ですが生まれています。 また、原子力発電所などでは、原子炉の中でリチウムという元素に中性子をぶつけることで人工的に作られています。トリチウムは、弱いベータ線を出す放射性物質として知られていますが、その放射能は非常に弱く、紙一枚で遮ることができる程度です。また、トリチウムは水と容易に結合する性質があるため、環境中に放出された場合には、水蒸気として拡散したり、雨水に溶け込んだりして薄まります。
原子力施設

未来のエネルギー: 核融合炉

- 核融合炉とは核融合炉は、太陽の内部で起きている核融合反応を人工的に再現し、エネルギーを取り出すことを目指した装置です。核融合反応とは、軽い原子核同士が衝突して融合し、より重い原子核になる際に膨大なエネルギーを放出する現象です。太陽はこの核融合エネルギーによって輝いています。核融合炉では、燃料として重水素と三重水素という水素の仲間である物質が使われます。これらの物質は地球上に豊富に存在し、特に重水素は海水から取り出すことが可能です。そのため、核融合炉は、資源の制約が少なく、事実上無尽蔵のエネルギー源として期待されています。核融合反応を起こすためには、一億度という超高温でプラズマ状態にした燃料を、強力な磁場によって閉じ込める必要があるため、技術的に非常に困難です。しかし、世界各国で研究開発が進められており、実用化に向けて着実に前進しています。核融合炉が実現すれば、エネルギー問題の解決に大きく貢献することが期待されています。
原子力発電の基礎知識

エネルギー源としての核融合

- 核融合とは原子の中には、陽子や中性子といった小さな粒子が存在しています。そして、この陽子や中性子が複数集まって原子核を構成しています。 核融合とは、この原子核同士がくっついて、より大きな原子核に変わる反応のことを指します。私たちの暮らす地球から遠く離れた太陽。この太陽が莫大なエネルギーを出し続けられるのも、実はこの核融合のおかげなのです。太陽の中心部では、膨大な圧力と熱によって水素の原子核同士が激しく衝突し、くっつき合ってヘリウムの原子核へと変化しています。この時、くっついた原子核の重さよりも、反応後の原子核の重さのほうがほんの少しだけ軽くなります。 実はこのわずかな質量の差が莫大なエネルギーに変換されることで、太陽は明るく輝き、熱を放ち続けているのです。核融合は、太陽のような恒星だけでなく、未来のエネルギー源としても期待されています。地上で核融合を実現するため、水素よりもさらに軽い原子である重水素や三重水素を用いた研究開発が進められています。核融合反応は、ウランを使う原子力発電とは異なり、高レベル放射性廃棄物がほとんど発生しないという大きな利点があります。また、資源である重水素は海水からほぼ無尽蔵に得ることができ、安全性も高いことから、核融合は人類のエネルギー問題を解決する切り札として期待されています。
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核融合炉の心臓部: ブランケットの役割

核融合発電を実現するためには、太陽の中心部で起きている核融合反応を人工的に再現する必要があります。そのために、高温高圧のプラズマを閉じ込める装置が必要となりますが、この装置の周りを覆っている重要な構成要素が「ブランケット」と呼ばれるものです。ブランケットは、核融合反応から生じる莫大なエネルギーを受け止めて熱に変換し、発電に利用するために無くてはならない存在です。 ブランケットの中には、リチウムという物質が組み込まれています。リチウムは、核融合反応によって発生する中性子を吸収してトリチウムという物質に変化します。トリチウムは、重水素と反応することで核融合反応を引き起こす燃料となります。つまり、ブランケットは核融合反応で消費されるトリチウムを燃料として供給する役割も担っているのです。 このように、ブランケットは核融合発電において、エネルギーの取り出しと燃料の生産という二つの重要な役割を担っています。そのため、ブランケットの設計や材料開発は、核融合発電の実現に向けて重要な課題となっています。
原子力発電の基礎知識

エネルギーの未来を切り開くD-T反応

核融合は、軽い原子核同士が融合し、より重い原子核になる際に莫大なエネルギーを放出する反応です。この反応は、太陽のエネルギー源としても知られており、地球上で実現できれば、人類にとって夢のエネルギー源となりえます。 核融合には、いくつかの種類が存在しますが、実際に利用可能なものは限られています。その中でも、特に注目されているのがD-T反応とD-D反応です。 Dは重水素、Tは三重水素を表しており、どちらも水素の仲間である同位体です。 D-T反応は、重水素と三重水素を燃料とする反応です。この反応は、比較的低い温度で反応が進むため、核融合反応を起こしやすいという利点があります。 一方、D-D反応は、重水素のみを燃料とする反応です。D-T反応に比べて、より高い温度が必要となりますが、燃料となる重水素は海水中に豊富に存在するため、資源の枯渇を心配する必要がありません。 このように、D-T反応とD-D反応はそれぞれに特徴があり、将来のエネルギー問題解決への期待が高まっています。
原子力発電の基礎知識

エネルギー源としての核融合:D-T反応

- 核融合エネルギーの原理核融合とは、軽い原子核同士が非常に高い温度と圧力の下で融合し、より重い原子核へと変化する反応です。この時、物質の一部が莫大なエネルギーに変換され、外部に放出されます。このエネルギーを核融合エネルギーと呼びます。私たちの地球に光と熱を届けてくれる太陽も、中心部で起こる核融合反応によって膨大なエネルギーを生み出しています。太陽では、水素の原子核である陽子同士が融合し、ヘリウムの原子核へと変化する核融合反応が起きています。核融合反応には、反応を起こすために非常に高い温度と圧力が必要となります。太陽の中心部は約1500万度、2500億気圧という極限環境ですが、地上でこれと同等の環境を作り出すことは困難です。そこで、地上で核融合反応を起こすためには、太陽よりもさらに高温の環境が必要となります。現在、世界中で核融合エネルギーの実現に向けた研究開発が進められており、将来のエネルギー問題解決の切り札として期待されています。核融合エネルギーは、燃料となる物質が海水中に豊富に存在することや、二酸化炭素を排出しないことから、環境に優しいエネルギー源と言えます。また、原子力発電のように高レベル放射性廃棄物が発生することもありません。核融合エネルギーの実用化には、まだ多くの課題が残されていますが、世界中の研究者の努力によって、着実に実現へと近づいています。近い将来、核融合発電が私たちの社会に普及し、クリーンで安全なエネルギーがもたらされることが期待されます。
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核融合発電の実現に向けた挑戦:ローソン条件とは

世界中でエネルギー需要が高まる中、未来のエネルギー源として期待されているのが核融合エネルギーです。核融合とは、太陽が光や熱を生み出す原理と同じように、軽い原子核同士を融合させて膨大なエネルギーを取り出す技術です。核融合反応では、従来の原子力発電のように重いウラン原子核を分裂させる核分裂反応と比べて、はるかに大きなエネルギーを取り出すことができます。また、核融合反応では、高レベル放射性廃棄物がほとんど発生しないため、環境への負荷が小さいという利点もあります。 しかし、太陽の中心部で起きている核融合反応を地上で再現するには、非常に高度な技術が必要です。太陽の中心部は、1億度を超える超高温と、地球の大気圧の2500億倍という超高圧の状態にあります。このような極限状態を地上で人工的に作り出すことは容易ではありません。 地上で核融合反応を持続的に起こすためには、原子核同士が高速で衝突し続ける状態を維持する必要があります。そのためには、超高温でプラズマ状態になった燃料を、強力な磁場によって閉じ込める必要があります。現在、国際協力によって、フランスに国際熱核融合実験炉(ITER)が建設中です。ITERは、核融合エネルギーの実用化に向けて、核融合反応の制御と持続的なエネルギー発生の実証を目指しています。