不安定核種

その他

未知の世界を探る: 重イオンの力

- 重イオンとは 物質を構成する最小単位である原子は、中心にある原子核と、その周りを回る電子から成り立っています。原子核は正の電荷を持つ陽子と電荷を持たない中性子で構成され、通常は同数の電子が周囲に存在することで電気的に中性を保っています。 しかし、様々な要因で原子から電子が飛び出したり、逆に取り込まれたりすることがあります。 電子を失ったり、獲得したりして電気を帯びた状態になった原子をイオンと呼びます。 イオンには、水素イオンやヘリウムイオンのように軽いものから、ウランイオンなど非常に重いものまで、様々な種類が存在します。その中でも、炭素原子よりも重い元素のイオンを「重イオン」と総称します。炭素原子は自然界に広く存在する比較的小さな原子であるため、それよりも重いイオンは、質量が大きく、エネルギーが高いという特徴を持ちます。 重イオンは、物質に照射されると、物質の表面だけでなく、内部にまで深く侵入することができます。この性質を利用して、重イオンは、がん治療などの医療分野や、新材料の開発といった工業分野など、様々な分野で応用されています。例えば、がん細胞に重イオンビームを照射することで、正常な細胞への影響を抑えつつ、がん細胞のみを破壊する治療法などが研究されています。