原子炉の隠れた働き者: 熱外中性子
原子力発電所の心臓部ともいえる原子炉の中では、ウランなどが核分裂反応を起こし、莫大なエネルギーが生まれています。この核分裂反応を維持し、制御しているのが中性子と呼ばれる小さな粒子です。中性子は様々なエネルギー状態を持つものが存在しますが、その中でも「熱外中性子」は少し変わった特徴を持っています。熱外中性子は、原子炉内で物質の温度とほぼ同じエネルギーを持つ熱中性子よりも、ほんの少しだけエネルギーが高い中性子のことを指します。
原子炉内で生まれた中性子は、周りの物質と衝突を繰り返しながらエネルギーを失い、熱中性子へと変化していきます。熱中性子はウランなどの核燃料に吸収されやすく、再び核分裂反応を引き起こす役割を担っています。一方、熱外中性子は熱中性子よりもエネルギーが高いため、ウランなどの核燃料に吸収されにくく、原子炉内を動き回る性質があります。
この熱外中性子の特徴を利用したのが、高速増殖炉と呼ばれるタイプの原子炉です。高速増殖炉では、熱外中性子を積極的に利用することで、核燃料をより効率的に利用し、核廃棄物の発生量を抑制することができます。このように、熱外中性子は原子力発電の将来を担う重要な役割を担っているのです。