低レベル廃棄物

原子力の安全

原子力発電の課題:放射性廃棄物

- 放射性廃棄物とは原子力発電所をはじめ、医療機関や研究施設など、様々な場所で原子力や放射線は利用されています。原子力は、私たちの生活に欠かせない電気を作り出すなど、多くの恩恵をもたらす一方で、その利用過程において、放射性物質を含む廃棄物が必ず発生します。これを放射性廃棄物と呼びます。放射性廃棄物は、放射能の強さや種類、性質などによって分類され、それぞれに適した方法で管理することが重要です。例えば、使用済み核燃料のように、極めて高い放射能を持ち、長期間にわたって熱と放射線を出し続けるものは、厳重な管理体制のもとで保管する必要があります。一方、病院で使用される注射針やガーゼなど、比較的放射能レベルが低いものは、保管期間後に一般の廃棄物と同様に処理することができます。放射性廃棄物は、私たちの生活を支える上で発生するものであり、その適切な管理は、原子力利用における最も重要な課題の一つと言えるでしょう。そのため、国や電力会社は、安全かつ確実に放射性廃棄物を処分するための技術開発や施設整備に取り組んでいます。将来世代に負担を残さないためにも、放射性廃棄物の問題は、私たち一人ひとりが真剣に向き合い、理解を深めていく必要があると言えるでしょう。
核燃料

「返還廃棄物」:原子力発電の課題

- 返還廃棄物とは原子力発電所で使われた燃料(使用済み燃料)は、再処理という工程を経て、まだ使える資源と放射線を出す廃棄物に分けることができます。日本で出る使用済み燃料は、再処理をイギリスとフランスに頼んでいますが、その際にどうしても放射線を出す廃棄物が出てしまいます。このうちの一部は、日本が責任を持って引き取ることになっており、これを「返還廃棄物」と呼びます。返還廃棄物は、ガラスと混ぜて固めるなど、厳重な処理を施した上で、人が住んでいない地下深くに保管する計画が進められています。これは、放射線が十分に弱まるまでの長い期間、安全を確保するためです。返還廃棄物の保管は、原子力発電の恩恵を受けた私たちが、将来世代に対して責任を果たすために、避けて通れない重要な課題といえます。
原子力の安全

原子力発電と低レベル廃棄物

- 低レベル廃棄物とは原子力発電所では、日々の運転や設備の点検、そして最終的な解体作業など、様々な工程で廃棄物が発生します。これらの廃棄物の中には、放射線を出すものがあり、放射性廃棄物と呼ばれます。放射性廃棄物は、その放射能の強さによって、大きく高レベル放射性廃棄物と低レベル放射性廃棄物の二つに分類されます。高レベル放射性廃棄物は、主に使用済み核燃料を再処理する過程で生じる廃液などが該当します。非常に高い放射能レベルを持つため、人の健康や環境への影響を考慮し、厳重な管理と処分が必要となります。一方、低レベル放射性廃棄物は、高レベル放射性廃棄物以外のものを指し、原子力発電所の運転や保守、施設の解体作業などで発生します。具体的には、作業員の被爆を防ぐために着用した作業服や手袋、放射性物質を除去するために使用したフィルター、施設内の配管の一部などが挙げられます。これらの廃棄物は、放射能レベルが比較的低いため、適切な処理を施すことで、環境への影響を抑制できます。低レベル放射性廃棄物は、その性状や放射能レベルに応じて、さらに細かく分類され、それぞれに適した処理方法が選択されます。例えば、放射能レベルの低いものは、圧縮や焼却などによって減容化し、保管しやすいように処理されます。また、放射能レベルの高いものは、コンクリートなどを使って固め、ドラム缶などに封入した後、厳重に管理された施設で保管されます。
原子力の安全

原子力発電の安全を守る:セメントガラス固化技術

- セメントガラス固化とは原子力発電所からは、運転や施設の解体などによって、放射能レベルの低い放射性廃棄物が発生します。この低レベル放射性廃棄物を安全に処理・処分するために、様々な技術が開発されていますが、その中でも注目されている技術の一つがセメントガラス固化です。セメントガラス固化は、その名の通り、セメントを主材料としたガラス状の物質である「セメントガラス」を用いて、放射性廃棄物を固める技術です。セメントガラスは、セメントに加えて、ケイ酸ナトリウムやリン酸ケイ素などを配合し、特殊な処理を施すことで生成されます。セメントガラスは、非常に硬く、長い年月を経ても劣化しにくいという特徴があります。また、酸やアルカリなどの化学物質に対しても強い抵抗性を示し、水にもほとんど溶けません。さらに、セメントガラスは、放射性物質をその構造の中に閉じ込めておく能力が高く、外部への漏洩を防ぐ効果も期待できます。このように、セメントガラス固化は、放射性廃棄物を長期的に安定した状態で固化することができるため、環境への負荷が小さく、将来世代に負担を残さない安全な処分方法として期待されています。