体内動態モデル

放射線について

放射線防護の基礎:ICRP代謝モデルとは?

- ICRP代謝モデルの概要ICRP代謝モデルは、人体に取り込まれた放射性物質の動きを時間経過とともに数値化し、体内での挙動を把握するための重要なツールです。 放射性物質が体内に入ると、血液や体液によって運ばれながら、様々な臓器や組織に吸収され、蓄積されたり、体外に排出されたりします。 この複雑な過程を、数学的なモデルを用いて表現したものがICRP代謝モデルです。具体的には、体内の各臓器や組織を compartments と呼ばれる区画に分け、放射性物質が各区画間をどのように移動していくかを、微分方程式を用いて記述します。 この際、放射性物質の化学形態や、摂取経路(呼吸、経口、経皮など)によって、体内動態が異なることを考慮し、それぞれのケースに合わせたモデルが構築されています。ICRP代謝モデルは、放射線防護の分野において、被ばくによるリスク評価を行う上で欠かせないものです。 例えば、原子力施設で働く作業員や、医療現場で放射線を使用する医療従事者、あるいは一般公衆が、万が一放射性物質を体内に取り込んでしまった場合に、臓器や組織がどれだけの放射線を受けるかを推定する際に、ICRP代謝モデルが用いられます。 これにより、被ばくによる健康影響のリスクを評価し、適切な防護対策を講じることが可能となります。