化学除染

原子力の安全

原子力発電所の縁の下の力持ち:化学除染とは?

原子力発電所では、運転中に避けられないのが放射能汚染です。これは、ウラン燃料が核分裂する際に発生する放射性物質が、原子炉はもちろんのこと、冷却水の通り道である配管などの機器の表面にも付着してしまう現象です。 放射能汚染は、発電所の運転を停止して点検や修理を行う際に、作業員の放射線被ばくの原因となるため、その管理は安全確保の観点から非常に重要です。また、放射能汚染の蓄積は、機器の材料劣化を促進する可能性があり、発電所の長期的な安定運転を維持するためにも適切な対策が必要です。 その対策として有効な手段の一つが化学除染です。化学除染とは、薬液を用いて機器に付着した放射性物質、すなわち放射能汚染を洗浄し、除去する技術です。この技術により、作業員の被ばくリスクを低減できるだけでなく、廃棄物量を削減できるなど、多くの利点があります。さらに、化学除染は、原子炉の運転効率向上にも貢献します。放射能汚染を除去することで、熱伝導率が向上し、より効率的に発電を行うことが可能となるためです。このように、化学除染は、原子力発電所の安全性向上、環境負荷低減、そして安定運転に大きく貢献する重要な技術と言えるでしょう。
原子力施設

HOP法:原子力発電所の解体に向けた除染技術

- HOP法とは原子力発電所を安全に解体し、その土地を将来の世代に引き継ぐためには、発電所の運転によって生じた放射性物質を適切に除去する「除染」が欠かせません。長年稼働した原子炉の配管や機器の表面には、放射性物質を含む酸化物が付着してしまいます。これを効率的に除去するために開発された化学除染法の一つが、HOP法(ヒドラジン-シュウ酸-過マンガン酸カリウム法)です。HOP法は、三つの薬品を組み合わせて酸化物を溶解・剥離します。まず、ヒドラジンという薬品が酸化物を還元し、溶解しやすい状態に変えます。次に、シュウ酸が鉄などの金属イオンと結合し、安定な錯体を形成することで、金属の腐食を抑えながら酸化物を溶解していきます。最後に、過マンガン酸カリウムが残ったヒドラジンと反応し、処理液を中和することで除染工程が完了します。HOP法は、従来の除染方法と比べて、除染効果が高く、金属への影響が少ないという利点があります。そのため、原子炉の配管や機器など、複雑な形状をした対象物に対しても有効な除染方法として期待されています。しかし、処理時に二次廃棄物が発生するため、その処理方法が課題として残されています。今後、より環境負荷の少ない除染技術の開発が求められています。