
現代医療を支えるイリジウム線源
- イリジウム線源とはイリジウム線源は、イリジウム192という物質から発生する放射線を利用した線状の放射線源です。イリジウム192は、原子炉で人工的に作られる放射性同位元素で、時間の経過とともに放射線を放出しながら別の安定した元素へと変化していく性質を持っています。この放射線を出す性質を利用して、医療分野ではがん治療に、工業分野では非破壊検査などに広く活用されています。-# がん治療におけるイリジウム線源イリジウム線源から放出される放射線は、ガンマ線と呼ばれる高いエネルギーを持った電磁波です。このガンマ線は、物質を透過する力が強く、体の深部にあるがん細胞にまで到達して、その細胞の遺伝子を破壊し、増殖を抑える効果があります。イリジウム線源を使ったがん治療は、放射線治療の一つとして「密封小線源治療」と呼ばれており、線源を体内に挿入する「腔内照射」や体外から照射する「組織内照射」などの方法があります。-# 工業分野におけるイリジウム線源工業分野では、イリジウム線源は非破壊検査に用いられます。これは、対象物を壊すことなく内部の状態を検査する方法です。イリジウム線源から出るガンマ線を対象物に照射し、その透過の様子をフィルムや検出器で捉えることで、内部の亀裂や欠陥などの有無を調べることができます。このように、イリジウム線源は医療分野から工業分野まで幅広く利用されており、私たちの生活の様々な場面で役立っています。