医療被ばく

放射線について

意外と知られていない?10日規則とその背景

- 10日規則とは?妊娠の可能性がある女性のお腹にエックス線検査を行う際、医師や放射線技師は胎児への被ばくを最小限に抑えることを常に考えています。このような状況で、かつては「10日規則」と呼ばれる規則が用いられていました。この規則は、女性の月経開始日から10日以内であれば、お腹へのエックス線検査を行っても胎児への影響はほとんどないという考えに基づいていました。この時期は、まだ妊娠が成立していない、あるいは妊娠していたとしても胎児の細胞分裂が非常に初期段階であるため、放射線の影響を受けにくいと考えられていたのです。しかし、近年の研究や技術の進歩によって、放射線に対する考え方は変化しました。微量の放射線でも、胎児に影響を与える可能性がゼロではないという認識が広まり、国際放射線防護委員会(ICRP)は2007年に10日規則の廃止を勧告しました。現在では、10日規則に代わって、「妊娠している可能性がある場合は、必ず医師や放射線技師に伝える」ことが重要視されています。医療従事者は、患者さんの状況を詳しく把握した上で、検査の必要性とリスク、そして代替となる検査方法などを検討し、患者さんと一緒に最善の方法を決定します。
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ダウン症と放射線の関係は?

ダウン症は、人間の細胞の中に通常は2本ずつある染色体のうち、21番目の染色体が1本多く存在するために起こる先天性の疾患です。正式な名称はダウン症候群といいます。 人間の体は、両親から受け継いだ染色体によって設計図が描かれているようなものです。染色体は、精子と卵子が作られる際に起こる減数分裂という過程を経て、それぞれ23本ずつに分かれていきます。しかし、この減数分裂の際に何らかのエラーが起きると、21番目の染色体が正しく分配されず、卵子あるいは精子に余分に1本含まれてしまうことがあります。そして、この染色体異常を持つ卵子や精子から子供が生まれると、ダウン症が発症するのです。 21番目の染色体は、他の染色体と比べて生命活動に直接関わる遺伝子が少ないため、ダウン症は他の染色体異常と比べて、妊娠中に亡くなったり、生まれてすぐに亡くなったりする確率は低いです。そのため、染色体異常の中では発生頻度が高い疾患の一つとなっています。 ダウン症には、知的発達の遅れ、生まれつきの心臓病、低身長、太りやすい体質、特徴的な顔立ちなどが見られることがありますが、その程度は人によって大きく異なります。
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臓器への影響を測る:臓器線量

- 臓器線量とは私たちの体は、心臓や肺、胃など、それぞれ異なる役割を持つ様々な臓器によって成り立っています。放射線を使った医療や、その他の場面における被曝において、それぞれの臓器がどれだけ放射線を吸収したかを表す量が臓器線量です。放射線は目に見えず、また、体を通過する際にエネルギーを与えていく性質があります。このエネルギーの受け方は臓器によって異なり、同じ量の放射線を浴びたとしても、影響を受けやすい臓器とそうでない臓器が存在します。例えば、骨髄は細胞分裂が活発なため放射線の影響を受けやすく、逆に、神経細胞のように分裂しにくい細胞は影響を受けにくいとされています。そのため、体全体が浴びた放射線の量だけでなく、臓器ごとに吸収した線量を評価することが重要臓器線量の評価は健康管理の上で非常に重要
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医療と放射線:医療被ばくについて

医療の現場では、放射線は診断や治療など、様々な用途で利用されています。レントゲン撮影は、骨の状態を把握するために用いられる、私たちにとって最も身近な放射線利用の一つと言えるでしょう。レントゲン撮影では、X線と呼ばれる放射線が身体を透過する際に、骨などの組織によって吸収率が異なることを利用して画像化を行います。 近年では、X線を用いた検査として、コンピューター断層撮影、いわゆるCT検査も広く普及しています。CT検査では、身体の周囲を回転する装置からX線を照射し、得られたデータをコンピューターで処理することで、身体の断面画像を詳細に得ることができます。これにより、臓器や血管などの状態をより正確に把握することが可能となり、病気の早期発見や診断の精度向上に大きく貢献しています。 放射線は、診断だけでなく、がん治療などの治療においても重要な役割を担っています。放射線治療では、がん細胞に放射線を照射することで、細胞のDNAを損傷し、増殖を抑制したり、死滅させたりします。放射線治療は、手術、抗がん剤治療と並ぶ、がん治療の三大療法の一つとして確立されており、多くの患者に福音をもたらしています。このように、放射線は医療において欠かせない技術として、人々の健康と生命を守るために役立てられています。
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がん治療における一時刺入線源

- 小線源治療とは小線源治療は、がん細胞を放射線で死滅させる治療法の一つです。手術や体外照射といった放射線治療とは異なり、放射線を出す小さな線源を、がん組織内部やごく近くに直接配置する点が特徴です。体外照射では、体の外側に設置した装置から放射線を照射するため、どうしても正常な組織にも影響が及んでしまいます。一方、小線源治療では放射線の届く範囲が限られるため、周囲の正常な組織への影響を最小限に抑えられます。ピンポイントでがん細胞を狙い撃ちできるため、高い治療効果が期待できます。治療期間はがんの種類や進行度合いによって異なりますが、体外照射に比べて短い期間で治療を終えられる場合が多いです。入院期間も短縮される傾向にあり、患者さんの負担軽減につながります。小線源治療は、前立腺がん、子宮頸がんなど、様々な種類のがんの治療に用いられています。近年では、技術の進歩により、さらに適用範囲が広がっています。