医療

放射線について

体内を透視するCT検査

- CT検査とはCT検査とは、「コンピュータ断層撮影」の略称で、体の内部を詳しく調べるための医療画像診断装置の一つです。レントゲン検査と同じようにX線を使用しますが、CT検査では、体の周囲をぐるりと回転する装置からあらゆる方向にX線を照射します。そして、体の各部位を透過する際に変化するX線の量をコンピュータで処理することで、体の断面画像を得ることができます。CT検査で得られる画像は、従来のレントゲン写真よりも鮮明で、臓器や骨などの状態を立体的に把握することができます。そのため、通常のレントゲン検査では発見が難しいがんや腫瘍、血管の病気、骨折などの診断に非常に役立ちます。検査時間は撮影する部位や範囲によって異なりますが、おおむね数分から数十分程度です。検査中は、医師や診療放射線技師の指示に従って、息止めなどの協力が必要となる場合があります。検査に伴う痛みはほとんどありません。CT検査は、病気の早期発見や正確な診断に大きく貢献する、現代医療において欠かせない検査と言えるでしょう。
放射線について

見えないものを見せる技術:造影剤

私たちは、体の内部を透かして見たい時に、レントゲン撮影を行います。レントゲン撮影は、骨のような硬い組織を鮮明に写し出すことができます。しかし、胃や腸などの消化管や血管、胆嚢、尿管といった臓器は、レントゲンだけでははっきりと見ることができません。これらの臓器は、レントゲンが通過してしまうため、画像に写りにくいのです。 そこで登場するのが「造影剤」です。造影剤は、体内に投与することで、特定の臓器や組織をレントゲン画像上で白く浮かび上がらせることができる薬剤です。 造影剤には、飲むタイプ、注射するタイプ、肛門から注入するタイプなど、様々な種類があります。検査の内容や目的によって、適切な方法で投与されます。 例えば、バリウムという造影剤を飲むことで、食道、胃、十二指腸のレントゲン画像を鮮明に映し出すことができます。これにより、消化管の異常な形状や動き、腫瘍や潰瘍などの病変を見つけることができます。 造影剤を用いることで、レントゲンで見えなかった臓器や組織を詳細に観察することが可能になり、病気の早期発見や正確な診断に役立ちます。
原子力施設

医療の未来を照らす医療用原子炉

- 医療用原子炉とは医療用原子炉は、その名の通り医療分野において活用される原子炉です。しかし、発電を目的とした一般的な原子炉とは異なり、医療用原子炉は放射線を治療に利用するという全く異なる役割を担っています。特に、癌治療の分野において革新的な治療法として注目を集めています。従来の放射線治療では、体外から放射線を照射するため、正常な細胞にもダメージを与えてしまう可能性がありました。一方、医療用原子炉で生成される放射線は、特定の癌細胞を狙い撃ちにすることが可能です。これは、放射性同位元素と呼ばれる特殊な物質を患部に送り込み、内部から放射線を照射することで実現します。医療用原子炉で生成される放射性同位元素は、様々な種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。そのため、癌の種類や進行度合い、患者の状態に合わせて、最適な放射性同位元素を選択することができます。医療用原子炉は、癌治療において大きな期待が寄せられていますが、まだ発展途上の技術でもあります。今後、更なる研究開発が進み、より安全で効果的な治療法が確立されることが期待されています。
その他

成人T細胞白血病:知られざる脅威

- 成人T細胞白血病とは 成人T細胞白血病は、成人T細胞白血病ウイルス(ATLV)というウイルスが原因で発症する血液のがんです。 私たちの体内には、外部から侵入してきた細菌やウイルスから体を守る「免疫」というシステムが備わっています。 この免疫システムにおいて、リンパ球は重要な役割を担っています。 ATLVはこのリンパ球のうち、T細胞と呼ばれる細胞に感染します。 すると、T細胞はウイルスの影響でがん化し、異常に増殖を始めます。 その結果、血液のがんである白血病を発症してしまうのです。 ATLVは、感染した人の血液や体液を介して、他の人に感染する可能性があります。 主な感染経路としては、母親から子どもへの母子感染、性交渉による感染、血液製剤の使用などが挙げられます。 ただし、ATLVは日常生活で容易に感染するような、強い感染力を持ったウイルスではありません。 さらに、感染したとしても、発症に至る人はごくわずかであることが知られています。
放射線について

進化する放射線治療:リニアックナイフとは

- リニアックナイフの概要リニアックナイフは、放射線をピンポイントで照射することで、脳腫瘍などの病変を治療する最新の放射線治療装置です。従来の放射線治療では、正常な細胞にもダメージが及ぶ可能性がありましたが、リニアックナイフは周囲の組織への影響を最小限に抑えながら、病変だけに集中して高い線量の放射線を照射することができます。リニアックナイフは、ガンマナイフと呼ばれる同様の治療装置と比較されることがあります。どちらも頭部に集中的に放射線を照射する点では共通していますが、使用する放射線の種類が異なります。ガンマナイフはコバルト60という放射性同位元素から発生するガンマ線を照射するのに対し、リニアックナイフは「リニアック」と呼ばれる装置で生成されたX線を使用します。リニアックで生成されたX線は、ガンマ線よりもエネルギー強度を細かく調整できるため、患部の形状や大きさに合わせて最適な照射を行うことができます。また、リニアックナイフは照射する放射線の線量率が高いため、治療時間を短縮できるという利点もあります。従来の外科手術と比べて、リニアックナイフによる治療は、頭蓋を開く必要がなく、身体への負担が少ないという大きなメリットがあります。そのため、高齢者や体力的に手術が難しい患者さんにとっても、有効な治療選択肢の一つとなっています。
その他

血管造影:身体の道筋を映し出す技術

- 血管造影とは血管造影は、体内の血管をレントゲンで鮮明に映し出す検査方法です。私たちの体には、まるで道路網のように血管が張り巡らされており、血液を介して酸素や栄養を全身に届けたり、老廃物を運び去ったりしています。この血管の状態を詳しく調べるために、血管造影が行われます。検査ではまず、腕や足の付け根などにある動脈に細い管を入れます。そして、この管を通して「造影剤」と呼ばれる特殊な薬を血管に注入します。造影剤はX線を通しにくい性質を持っているため、レントゲン撮影を行うことで、造影剤が流れている血管が白く浮かび上がり、血管の走行や太さ、形などをはっきりと確認することができます。血管造影によって、動脈硬化や血管の狭窄、閉塞、瘤など、様々な血管の病気を発見することができます。さらに、血管造影は診断だけでなく、治療にも役立てることができます。例えば、血管が狭くなっている部分に風船のようなものを入れて広げたり、ステントと呼ばれる金属製の網を入れて血管を拡張したりする治療は、血管造影を行いながら行われます。血管造影は、私たちの体の重要な輸送路である血管の状態を正確に把握するために欠かせない検査と言えるでしょう。
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夢の治療薬?モノクローナル抗体の基礎知識

- モノクローナル抗体とは私たちの体には、細菌やウイルスなどの外敵が侵入してくると、それらを攻撃して排除する免疫システムが備わっています。この免疫システムにおいて重要な役割を担うのが抗体と呼ばれるタンパク質です。抗体は、体内に入ってきた外敵を異物として認識し、攻撃する働きを持ちます。 私たちの体の中では、様々な種類の抗体が作られており、それぞれが特定の外敵を狙って攻撃します。風邪を引いた時に作られる抗体と、インフルエンザウイルスに感染した時に作られる抗体は異なるということです。 この中で、モノクローナル抗体は、全く同じ構造と性質を持った抗体です。私たちの体内で作られる通常の抗体は、様々な種類の細胞から作られるため、少しずつ性質が異なります。しかし、モノクローナル抗体は、人工的に作られた単一の抗体産生細胞のみから作られるため、まるで工場で大量生産された製品のように、均一で高純度の抗体を得ることができます。これは、特定の外敵だけを的確に攻撃できる抗体として、医療分野で注目されています。