即発中性子

原子力の安全

原子炉の安全とドルの関係

- 原子炉の反応度とドル原子炉の運転において、炉心内でどれくらい核分裂連鎖反応が進みやすいかは非常に重要です。この進みやすさを表す指標の一つが「反応度」です。反応度は、原子炉内で核分裂によって生じる中性子の数を基準にして考えます。中性子は核分裂を引き起こすと同時に、次の核分裂を起こす中性子を生み出す役割も担っています。このため、中性子の数が多くなれば核分裂は活発になり、少なくなれば核分裂は抑制されます。反応度は、この中性子の増減の度合いを示す指標であり、プラスの値をとれば核分裂が促進され、マイナスの値をとれば抑制されることを意味します。この反応度を表す単位の一つが「ドル」です。ドルは、記号「$」で示されます。一見すると通貨単位のように思えますが、原子力工学における重要な概念であり、1ドルは原子炉を臨界状態から即発臨界状態にするのに必要な反応度の大きさを表します。 「臨界状態」とは、核分裂が一定の割合で継続している状態を指し、原子炉の運転はこの状態を維持することが重要です。「即発臨界状態」とは、中性子発生量の増加が非常に速く、制御不能になる可能性のある危険な状態です。ドルという単位を用いることで、原子炉の運転員は反応度の変化をより直感的に把握し、安全な運転を行うことができます。原子炉の設計や運転においては、常に適切な反応度を維持し、安全性を確保することが求められます。
原子力の安全

原子炉制御の鍵:遅発中性子

原子力発電所では、ウランなどの重い原子核が中性子を吸収して二つ以上の原子核に分裂する現象を利用して莫大なエネルギーを生み出しています。この現象を核分裂と呼びます。核分裂が起こると同時に、熱や光とともに中性子が飛び出してきます。この中性子のうち、核分裂とほぼ同時に放出されるものを即発中性子と呼びます。一方、核分裂によって生じた不安定な原子核(核分裂生成物)の一部がベータ崩壊する過程で放出される中性子もあります。これを遅発中性子と呼びます。即発中性子は核分裂発生とほぼ同時に放出されるのに対し、遅発中性子は核分裂生成物の種類や状態によって放出されるまでの時間にばらつきがあり、数秒から数分の時間を経てから放出されます。 遅発中性子は、即発中性子に比べて数が少ないものの、原子炉の運転制御において重要な役割を担っています。これは、遅発中性子の生成が核分裂生成物の崩壊に依存し、その発生頻度が原子炉内の出力変化に追従するという特性を持つためです。原子炉の出力制御は、この遅発中性子の生成頻度を調整することによって行われています。このように、原子炉の安定運転には、即発中性子と遅発中性子の両方が重要な役割を果たしています。
原子力の安全

原子炉の心臓:即発臨界を理解する

原子力発電の仕組みを理解するためには、核分裂と連鎖反応という現象を理解することが非常に重要です。 まず、核分裂について説明します。ウランのように原子核が重い原子に中性子がぶつかると、その衝撃で原子核は分裂します。この時、莫大なエネルギーと同時に新たな中性子が飛び出してきます。これが核分裂と呼ばれる現象です。 次に、連鎖反応について説明します。核分裂によって新たに生み出された中性子は、周りのウラン原子核に次々とぶつかっていく可能性があります。そして、ぶつかったウラン原子核もまた核分裂を起こし、さらに中性子を放出します。このようにして、次から次へと核分裂が連続して起こる反応のことを連鎖反応と呼びます。 原子力発電所にある原子炉は、この連鎖反応を人工的に制御し、発生する莫大なエネルギーを熱として取り出す装置なのです。